『11/22/63(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆☆☆☆
キングの大長編を読了。これは面白かった。キングはもうダメかと思っていたが、昔の『デッドゾーン』や『ファイアスターター』の頃のキングが戻ってきた感じがする。久々の傑作だ。ホラーとかスリラーというより、ロマンティシズムと甘酸っぱい切なさがコアにあるのも個人的にはうれしい。これぞキングの黄金パターンだ。
とりあえず、タイムスリ . . . 本文を読む
『ガラパゴスの箱舟』 カート・ヴォネガット ☆☆☆
初読。あとがきを立ち読みしたらヴォネガット自身が一番いい出来の小説と言ったと書かれていたので、それならと思って買ったが、イマイチだった。いつものヴォネガット・スタイルで安定感はあるのだが、『スローターハウス5』や『猫のゆりかご』と比べると明らかに落ちる。
これも他のいくつかのヴォネガット作品のように、世界の終末を扱った小説だ。一言で言 . . . 本文を読む
『コーナーストーン』 スティクス ☆☆☆★
スティクス9枚目、一番売れた『パラダイス・シアター』のいっこ前のアルバムである。前作『ピーシズ・オブ・エイト』前々作『グランド・イリュージョン』のプログレ・ハード的作風から一転、一気に垢抜けてポップになった。そして売れた。この路線は次作で最高傑作『パラダイス・シアター』として結実し、スティクスは全盛期を謳歌する。そしてその次の『キルロイ・ワズ・ヒ . . . 本文を読む
『木犀!/日本紀行』 セース・ノーテボーム ☆☆☆☆☆
日本で書店めぐりをした時、『これから話す物語』のノーテボームの本を見つけたのですかさず買ったら、これがもう大当たり。やはりノーテボームは素晴らしい作家だ。他の作品ももっと翻訳して欲しい。
小説「木犀」とエッセイ四つが収録されているが、日本の読者にとってうれしいのは、これらがすべて日本を題材にしているということ。「木犀」はオランダ人 . . . 本文を読む
『バベル』 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 ☆☆☆
『21グラム』のイニャリトゥ監督作品『バベル』をブルーレイで鑑賞。カンヌで監督賞を撮ったフィルムで、菊地凛子や役所広司も出演している。
しかし『21グラム』もそうだったが、この監督の映画は暗い。これも、みんながみんなメッチャ不幸、という映画である。はあ~、と大きなため息をつきたくなる。群像劇なのも『21グラム』と一緒で、今 . . . 本文を読む
『美しい子ども』 松家仁之・編 ☆☆☆
これも日本に帰った時に買ってきた本の一冊。新潮クレスト・ブックス創刊15周年特別企画ということで、クレスト・ブックスで出ている短編集11冊の中から選りすぐりの12編が収録されている。網羅されている作家はジュンパ・ラヒリ、ミランダ・ジュライ、アンソニー・ドーア、アリス・マンロー、ベルンハルト・シュリンクなど。編集の松家仁之氏はクレストブックスの生みの親 . . . 本文を読む
『"Breaskfast In America World" Tour』 Roger Hodgson ☆☆☆☆
10月25日にロジャー・ホジスンのコンサートに行ってきた。ロジャー・ホジスンとは元スーパートランプのソングライター兼ヴォーカリストである。昔日本でもヒットした「ブレックファスト・イン・アメリカ」を歌っている人だ。私は昔からこの人が好きで、今回念願かなってようやくライヴを見ることが . . . 本文を読む
『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』 アンドリュー・カウフマン ☆☆☆☆
10月に休暇で日本に帰国した際、書店めぐりをして大量に本を入手した。これはその中の一冊。
コンパクトな小説であっという間に読める。シュールで軽やかな、不思議な小説だ。カナダの銀行に強盗が入り、そこにいた13人の人々から「もっとも思い入れのあるもの」を奪っていく。ある者は母からもらった腕時計を、ある者は子供の . . . 本文を読む
『フェリーニの道化師』 フェデリコ・フェリーニ ☆☆☆★
日本版ブルーレイで鑑賞。これも傑作と名高い作品のようだが、私としてはまあまあだった。もともとはTV用の半分映画半分ドキュメンタリーという作品で、フェリーニ自身も出てくる。フェリーニのオブセッションであるサーカス、そして道化師を真正面から取り上げたフィルムだ。撮影スタッフも出てくるがどこまで本物なのかよく分からない。コミカルなタッチな . . . 本文を読む
『ゴルフ場殺人事件』 アガサ・クリスティー ☆☆☆★
これはクリスティーのごく初期の小説で、長編としては三作目、ポアロものとしては『スタイルズ荘の怪事件』に続く二作目ということになる。今回初めて読んだが、後期作品に顕著になってくる静謐感はまだなく、展開がにぎやかで、全体にばたばたしている。事件もシンプルながらあっと驚く騙し絵が埋め込まれている、というのではなく、込み入っていて、複雑さで読者 . . . 本文を読む