アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

脱獄計画

2013-07-29 21:20:06 | 
『脱獄計画』 アドルフォ・ビオイ=カサーレス   ☆☆☆☆☆  短編集『パウリーナの思い出に』を読んでもっとビオイ=カサーレスを読みたくなり、長編『脱獄計画』を再読。これは昔『モレルの発明』の次に読んで、何だかヘンな小説だなあと思っただけで大して面白いとも思わず、そのまま本棚に眠っていたのだが、今回あらためて読んでみると非常に面白かった。しかしこれは前回良さが分からなかった自分がアホだともあんま . . . 本文を読む

プレデター2

2013-07-27 22:23:20 | 映画
『プレデター2』 スティーブン・ホプキンス監督   ☆☆★  次は『プレデター2』。なんでプレデターばかり観ているかというと、ブルーレイのトリロジーBOXを買ってしまったからである。ぬはは。  さて、ジャングルが舞台だった一作目と対照的に、今度は大都会ロサンジェルスが舞台。しかもスラムというか、麻薬ギャング達が抗争を繰り返す荒廃した危険地帯が舞台で、ひときわヴァイオレントかつダーティな雰囲気。 . . . 本文を読む

七人の使者・神を見た犬

2013-07-25 21:54:11 | 
『七人の使者・神を見た犬』 プッツァーティ   ☆☆☆★  最近はなかなか手に入りにくくなったプッツァーティ、岩波で短篇集が出たので購入した。この人が書く小説は不条理寓話とでもいうか、発想はカフカあたりに近いのだが、アイデアをそのまま図式化したようなストーリーがいかにも「寓話」っぽく、それ以上の深みが今ひとつ感じられないところが物足りない。長編『タタール人の砂漠』もそうだが、求めているもの、待ち . . . 本文を読む

プレデター

2013-07-23 23:53:22 | 映画
『プレデター』 ジョン・マクティアナン監督   ☆☆☆  久しぶりに観たが、これぐらい古い映画もブルーレイだときれいな映像で見れるんだなあ。この映画は大部分ジャングルが舞台なので、映像のクリアさが分かりやすい。最近の映画と同等まではいかないまでも、かなりクリアな映像だった。  アタマ空っぽにして見れるSFアクション映画だが、今まで色々と続編ができていることからも分かる通り、なかなかの人気シリー . . . 本文を読む

天使エスメラルダ: 9つの物語

2013-07-21 21:40:49 | 
『天使エスメラルダ: 9つの物語』 ドン・デリーロ   ☆☆☆☆  ドン・デリーロの短編集。初めて読む作家さんだったが、非常に重厚かつ複合的かつ黙示録的な小説世界を構築する作家だ。めっちゃシリアスである。オフビートなところなど全然ない。小説の密度が濃く、文体とそれがもたらす世界観がものすごく稠密。この短編集から受ける印象だけで言わせてもらうと、この作家が描く世界はどこかに聖性を持っているけれども . . . 本文を読む

Yesshows

2013-07-19 22:57:56 | 音楽
『Yesshows』 Yes   ☆☆☆☆  イエスのライヴ音源決定版はもちろん『Yessongs』だが、その他色々出ているライヴ盤の中でセカンド・ベストはどれかというと、やはりこれだろう。時期としては『トーマト』後で、アルバムが出た時すでにジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンは脱退した後だった。  後に色々と乱発されたライヴ・アルバムでは、テクはあってもすっかり気の抜けたビールみたいな . . . 本文を読む

パウリーナの思い出に

2013-07-16 20:45:00 | 
『パウリーナの思い出に』 アドルフォ・ビオイ=カサーレス   ☆☆☆☆★  これまで邦訳が出ていなかったのが不思議なビオイ=カサーレスの短編集。この人はボルヘスと縁が深く、共著もあるし、有名な長編『モレルの発明』をボルヘスが「完璧な小説」と絶賛したりしている。ラテンアメリカ文学のアンソロジーでは常連で、「パウリーナの思い出に」と「大空の陰謀」はすでに読んだことがあった。  この人は非常に巧緻な . . . 本文を読む

オーメン

2013-07-14 14:21:48 | 映画
『オーメン』 リチャード・ドナー監督   ☆☆☆★  ブルーレイで観賞。TVで何度か観た気がするが、ちゃんと最初から最後まで観たのは多分今回初めてだ。最初ローマで始まってロンドンに舞台が移るが、ブルーレイで観たこともあって映像がきれいで、ヨーロッパの風格がある風景や建物は予想以上に魅力的だった。もともと昔のホラー映画、つまりスプラッターやショッカーではない恐怖映画に漂う不安の情緒みたいなものは大 . . . 本文を読む

助手

2013-07-11 21:10:07 | 
『助手』 ローベルト・ヴァルザー   ☆☆☆★  面白いんだか面白くないんだかよく分からない『タンナー兄弟姉妹』が妙に気になり、もう一冊読んでみようと思って『助手』を入手した。これはタイトル通りある事業家の助手が主人公だが、事業家は広告時計とか射撃自動販売機とかいう奇妙な装置を製品化しようとする。と聞いてヴィアンやカフカっぽい感じなのだろうかと思ったら、そういう雰囲気はほぼまったくなかった。また . . . 本文を読む

聖痕

2013-07-09 21:32:35 | 
『聖痕』 筒井康隆   ☆☆☆★  筒井康隆の新刊ということでさっそく入手した。性器を切り取られた美貌の男性という題材、「頽廃的なまでの小説的技巧の粋を尽くして」という帯の惹句などから、著者ならでは実験精神が全開となった挑戦的な作品かと期待したが、てすさびのエンタメとまではいかないまでも、著者にしてはきれいに腹七分目ぐらいにまとめた部類の小説だった。もともと筒井康隆には、芸術的な才能や高い知性、 . . . 本文を読む