『いつか晴れた日に』 アン・リー監督 ☆☆☆☆☆
ブルーレイで初見。評価が高いのは知っていたが、ジェーン・オースティン原作ということでこれまで食指が動かなかった。嫌いというわけじゃないが、ユーモアとペーソスあふれる恋愛ものというジャンルにさほど思い入れがないせいだ。ようやく気が向いて観たわけだが、もっと早く観るべきだったと激しく後悔した。これほどの傑作だとは思っていなかったのである。
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『Fish Out of Water』 Chris Squire ☆☆☆★
イエスのベーシスト、クリス・スクワイアのソロ。1975年発表。クリスはイエス以外にも色んなユニットでアルバムを出しているが、純然たるソロ名義は今のところこれだけだ。全曲自身の作曲、演奏もヴォーカルとベースをすべて自身が担当。サウンドはバンドだけでなくオーケストレーションが入っていて、また10分を越える曲が2曲あり、 . . . 本文を読む
『クリスティーン(上・下)』 スティーヴン・キング ☆☆☆★
キングの『クリスティーン』を再読。『クージョ』と『ペット・セマタリー』に挟まれて1983年に発表された作品。油の乗り切った時期、全盛期に書かれたもので筆力は確かに充実しているけれども、キング作品の中でA級とまではいえない出来だ。
これまで『呪われた町』で吸血鬼、『シャイニング』で幽霊ホテル、『デッド・ゾーン』や『ファイアスタ . . . 本文を読む
『狼は天使の匂い』 ルネ・クレマン監督 ☆☆☆☆
『さらば友よ』『サムライ』のフレンチ・ノワールつながりで『狼は天使の匂い』をDVDで鑑賞。これは以前途中で眠ってしまったため今回再チャレンジである。主演はジャン・ルイ・トランティニャン。トランティニャンはトリコロール三部作の『ルージュ』や『アムール』に出ているとても好きな役者さんで、若い頃の出演作を見たいと思って買ったのがこのDVDだった。 . . . 本文を読む
『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』 ジェフリー・ユージェニデス ☆☆☆☆★
再読。原題はザ・ヴァージン・スーサイズで、ソフィア・コッポラが映画化した。映画の方は大した出来ではなかったが、原作はかなり良い。アメリカの作家で題材もアメリカ的だが、スタイルは明らかにガルシア・マルケスを意識していて、文体や語り口がそっくりだ。しかし単なる物真似ではなく、ちゃんと咀嚼した上でアメリカの地方都市を . . . 本文を読む
『冒険者たち』 ロベール・アンリコ監督 ☆☆☆☆★
『さらぼ友よ』『サムライ』のアラン・ドロンつながりで、『冒険者たち』の日本版DVDを再見。ローラン(リノ・ヴァンチュラ)、マヌー(アラン・ドロン)、レティシア(ジョアンナ・シムカス)という三人の男女が自由に生きようと力いっぱい羽ばたき、やがて現実に傷ついて滅びていく美しくも哀しい映画である。より高く飛ぼうとしたがゆえに翼をもがれ海に墜落し . . . 本文を読む
『サムライ』 ジャン・ピエール・メルヴィル監督 ☆☆☆☆
所有するDVDで久しぶりに再見。このDVDは写真のジャケットのものだが今見ると驚くほど画質が悪く、細部は滲みまくっているが、それでもフランス映画らしい美学が画面から伝わってくる。アラン・ドロンが孤独な殺し屋を演じる、スタイリッシュなフィルム・ノワールである。主人公の殺し屋ジェフは極端に寡黙なキャラで、他の登場人物もセリフが少ない。従 . . . 本文を読む
『スカラムーシュ』 ラファエル・サバチニ ☆☆★
子供の頃『紅はこべ』や『アイヴァンホー』といった小説をワクワクしながら読んだ記憶があるためか、私はこの手の古風な冒険小説に対してどこか甘美なノスタルジーを抱いている。今回この『スカラムーシュ』を手に取ったのも、そういう気持ちからだった。
1921年の小説で、『紅はこべ』と同じくフランス革命が背景となっている。主人公の名前はアンドレ・ルイ . . . 本文を読む
『eXistenZ』 デヴィッド・クローネンバーグ監督 ☆☆☆★
「eXistenZ」と書いて「イグジステンズ」と読む。クローネンバーグの1999年作品をDVDで観たが、やはり変態全開映画だった。まあ『裸のランチ』と同系統だと思ってもらえば良いが、作品トータルとしての出来は『裸のランチ』よりも落ちる。ただし、気持ち悪さとディテールの変態っぷりだけは充分に拮抗している。
新しいゲームの発 . . . 本文を読む
『城塞(上・中・下)』 司馬遼太郎 ☆☆☆☆☆
『関ヶ原』に続き、徳川家康が豊臣家を完全に滅ぼしてしまう過程を描いた『城塞』を読んだ。大変面白かった。しかし家康、ホンマ悪いやっちゃなあ。
やっぱり『関ヶ原』と同じで、人間の器、品格というものを痛感させられる。人としてどう生きるか、生きる姿勢、というものをこれほどまでに考えさせられる小説は稀じゃないか。いや、もしかしてそういう小説を普段私 . . . 本文を読む