『山椒大夫』 溝口健二監督 ☆☆☆☆☆
『近松物語』に続き、『山椒太夫』をフランス版のDVDで鑑賞。これもすごかった。
今回は平安時代末期の物語。冒頭に、「これはまだ人間が人間としての自覚に目覚める前の物語である」というテロップが入り、これから始まる物語の神話性を予感させる。近世が舞台の『近松物語』や『西鶴一代女』にもどことなくおとぎ話的雰囲気が漂っていたが、古代の日本が舞台のこの作品 . . . 本文を読む
『音楽ぎらい』 面影ラッキーホール ☆☆★
昭和歌謡、ゴージャスなキャバレー・サウンド、などというフレーズに惹かれて買ってみたら全然予想と違ってた。これのどこがキャバレー・サウンドやねん。
サウンドは基本的にファンク、ロックである。別に昭和でもキャバレーでもなんでもない。硬質なギターのカッティング、軽快なドラム、そこにホーンが乗っかる。ヴォーカルはシャウトあり、ラップ風あり。曲によって . . . 本文を読む
『近松物語』 溝口健二監督 ☆☆☆☆☆
溝口健二の『近松物語』を観たくてたまらなかったが、ボックスセットでしか売っておらず、1万5千円もする。『近松物語』を観たいだけなのに、これじゃちょっと辛い。うーむ、ボックスセットが売れなくなったらバラ売りするつもりだな、この野郎。しょうがないから待つか、と思っていたところへ、フランスのxploitedcinema.comで売ってるという情報が入った。 . . . 本文を読む
『木曜の男』 G.K.チェスタトン ☆☆☆
ブラウン神父で有名なチェスタトンの長編小説を読了。かなり妙な小説である。推理小説とはいえないし、スパイ小説ともいえない(見かけ上そういう要素が見られるにしても)。一種の哲学小説、思想小説といえなくもないが、それにしてはどうもふざけていて、茶目っ気がありすぎる。思想と戯れる小説、形而上学的な遊びをミステリ風の枠組みでやってみた小説、という印象。
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『Unorthodox Behaviour』 Brand X ☆☆☆☆☆
ブランドXのデビュー作。ブランドXというのはジェネシスのフィル・コリンズがドラムを叩いている英国のインスト・バンドで、変態的フレットレス・ベースを操るパーシー・ジョーンズがサウンドの要になっている。他にギターとキーボードがいて四人構成である。昔ライヴ盤を買ったら、半分ぐらいフィル・コリンズじゃない人がドラムを叩いてい . . . 本文を読む
『存在の耐えられない軽さ』 ミラン・クンデラ ☆☆☆☆☆
クンデラの代表作を再読。昔ハードカバーで持っていたがなくしたので文庫を買った。やはり素晴らしい。なかなか新作が出ないが、もう小説は書かないのだろうか? 大好きな作家なので大変寂しい。
本書は映画化されたので知っている人も多いだろうが、映画を観てもこの小説の真価はまったく分からないと言っていい。まあそれはどんな映画化作品にも多少は . . . 本文を読む
『ウッドストック行最終バス』 コリン・デクスター ☆☆
本格推理の傑作という評判を聞いて文庫を購入。二日で読破したが、全然面白いと思えなかった。本格推理は昔かなり読み漁ったものだが、本格推理というジャンルが衰退しているのか、それとも私の感性がもうこの手の小説を受け付けなくなっているのか。昔は面白いと思ったクイーンの『オランダ靴の謎』もちょっと前に再読して、びっくりするぐらいつまらなかった . . . 本文を読む
『吸血鬼ゴケミドロ』 佐藤肇監督 ☆☆☆
うーん、この映画の評価はかなり難しい。というのは、まともに考えると特撮はショボい、人々の行動は不自然、ご都合主義的な展開満載、と低評価にならざるを得ないのだが、逆に突っ込みどころが満載なので、笑いながら観るとそれはそれで楽しめる、ということになってしまうからだ。DVD制作者達もそれを分かっていたらしく、特典でカウチ・コメンタリーというのがついている . . . 本文を読む
『Live Ep-Royksopp's Night Out』 Royksopp ☆☆☆★
ロイクソップのライヴ。EPのわりには9曲も入っててなかなかお得である。これ、日本盤はCCCDみたいだが、米アマゾンで買ったらちゃんとiPodに取り込めた。Japanese Pressingと書いてあるがまったく同じじゃないらしい。
エレトロニカ・ユニットのライヴCDというのは、私の場合普通のバンド . . . 本文を読む
『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』 山中貞雄監督 ☆☆☆☆☆
山中貞雄は天才である。間違いない。この『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』で、現存する彼の作品三つを全部観たことになるが、この三つのフィルムのクオリティは驚異的に高いと言わなければならない。ストーリーテリングのうまさ、映像の美しさ、現代的でシャープな作劇、演出、すべてがほとんどパーフェクトである。こんなすごい監督が日本に、しかも戦前にいたとは . . . 本文を読む