『楽園への疾走』 J. G. バラード ☆☆
Amazonで高評価だったので読んだみたが、さっぱり面白くなかった。アホウドリを救え、といってタヒチの島に動物保護区を作ろうとする人々の話である。中心人物は40代女医のバーバラで、この女医は言うことは立派だけど行動はかなりおかしい。語り手はバーバラに憧れる10代の少年ニールで、彼はバーバラの言動に戸惑いつつも結果的に従う、ということを繰り返した . . . 本文を読む
『僕の中の少年』 山下達郎 ☆☆☆☆☆
『52nd Street』に続く「最初に買ったのはこれだった」シリーズ第二弾、『僕の中の少年』。確か最初に買った山下達郎のアルバムはこれだった。なんといっても鮮やかな黄色いジャケットが印象的だったせいだけれども、今でもこれが達郎のアルバムの中で一番美しいジャケットだと思っている。鮮やかで明るく、爽快感に溢れ、しかもその中に甘酸っぱさが混入している。や . . . 本文を読む
『ル・アーヴルの靴みがき』 アキ・カウリスマキ監督 ☆☆☆☆★
カウリスマキの最新作を日本版ブルーレイで観賞。やはりブルーレイで観るカウリスマキは美麗だ。映像がホント美しい。
本作はどうやらカウリスマキ最大のヒットとなったらしく、最高傑作という声も上がっている。ストーリーが一般受けしやすいということもあるだろう。ブラックでアイロニカルな映画も撮るカウリスマキだが、本作のストーリーはこれ . . . 本文を読む
『地図にない町』 フィリップ・K・ディック ☆☆☆★
ものすごく久しぶりに再読したが、実はこれが、私が最初に読んだ記念すべきディック本だった。確か中学生の時である。その頃ブラッドベリなどのファンタジー系にはまっていた私は「あるはずのない駅で列車が止まる。駅前にひろがるのは地図にない町、そこで目にするものは……?」という裏表紙の紹介文を読み、叙情的なSFファンタジーを想像して本書を手に取った . . . 本文を読む
『タイニイ・バブルス』 サザンオールスターズ ☆☆☆☆
私は特に自分がサザンオールスターズのファンとは思わないが、数えてみるとかなりCDを持っている。ある時これに気づいて感心した。なるほど、これが国民的アーティストというものか。
好きなのはサウンドが洗練される以前のごく初期で、『タイニイ・バブルス』『NUDE MAN』あたりを聴くことが多い。最近、最高傑作と言われる『KAMAKURA』 . . . 本文を読む
『風にそよぐ草』 アラン・レネ監督 ☆☆★
ガイイの小説のところで書いた通り、私は最初にこの映画を観て「なんじゃこりゃ!」と唖然となった。アホ映画である。『六つの心』では結構ヘンなところがありつつも美しくまとまっていたのが、この映画ではもうアホが全開になっている。戸惑いつつ原作を読み、原作ではアホなストーリーはそのままに、エクリチュールのマジックでエレガントな遊戯的小説になっていることに感 . . . 本文を読む
『尼僧ヨアンナ』 イヴァシュキェヴィッチ ☆☆☆★
再読。これは昔フランスで実際にあった「悪魔憑き」事件をベースに書かれた小説で、エクスシストの元ネタとも言われているらしい。修道院の尼僧たちが悪魔に憑かれ、その悪魔祓いをするためにある神父が派遣される。その神父は「天使のヨアンナ」と呼ばれる尼僧長ヨアンナを救いたいという思いに、そこにはどうやらヨアンナに対する愛が入り込んでいるようなのだが、 . . . 本文を読む
『大統領の陰謀』 アラン・J・パクラ監督 ☆☆☆☆
日本版DVDで観賞。ご存知、ニクソン大統領を失脚させたウォーターゲート事件の話である。アメリカの歴代大統領の中で辞めさせられたのはニクソンだけという話だが、やはりアメリカにとってニクソンというのは一種のトラウマなのだろう。DVD特典によると、この映画の公開にもかなりの圧力がかかったらしい。また本作はロバート・レッドフォードとダスティン・ホ . . . 本文を読む
『ミザリー』 スティーヴン・キング ☆☆☆☆
久々にキングを再読。これはキングが時々書く、ストーリーに捻りもへったくれもない単純アイデア一発ものであり、同時にその見事な成功例と言っていいと思う。ベストセラー作家が交通事故に遭い、発見者に監禁され、ひたすらいたぶられるというだけの話である。視点は監禁された作家視点のみであり、警察の捜査官と被害者の二つの視点で進んでいく、なんてこともない。被害 . . . 本文を読む
『52nd Street』 Billy Joel ☆☆☆☆
確か私が最初に買ったビリー・ジョエルのアルバムがこれだった。前作『The Stranger』で念願のブレークを果たし、まさに昇り竜の如き勢いで上昇気流に乗っている時のアルバムで、勢いと才気と若々しい自信に満ち溢れている。それは冒頭の「Big Shot」からも明らかで、「大物」に成り上がった男を描いたこの歌詞は、大成功して一躍トップ . . . 本文を読む