アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

チーム・バチスタの栄光

2006-04-29 23:54:31 | 
『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊   ☆☆☆  『このミステリーがすごい!』大賞を取った新人作家のデビュー作らしい。はっきり帯に書いてあるにもかかわらず、そうとは知らずに読んで「なんか新人作家のデビュー作みたいな小説だな」と思ったら本当にそうだった。  世間の評価は絶賛に近いようだ。確かにデビュー作にしては良い出来だと思うが、私はそこまでいいとは思わなかった。先日読んだ『破裂』に続いて医療ミ . . . 本文を読む

ブルークリスマス

2006-04-27 22:08:41 | 映画
『ブルークリスマス』 岡本喜八   ☆☆☆☆☆  『ブルークリスマス』という、竹下景子主演の暗いSF映画があるというのは昔から知っていたが、観る機会がなかった。DVDで発売されたことでもあるし、何か気になるので観てみようと思い購入した。  観てびっくり、傑作である。間違いない。確かにどことなくB級感があるが、それはショボいからではなく、重厚な社会派ドラマ的アプローチとUFO、宇宙人という題材が . . . 本文を読む

イデーの鏡

2006-04-25 21:01:07 | 
『イデーの鏡』 ミシェル・トゥルニエ   ☆☆☆☆  ミシェル・トゥルニエの『海辺のフィアンセたち』という散文・エッセー集が大好きで、この『イデーの鏡』もエッセー集ということで期待して購入した。本書は「男と女」「愛情と友情」「笑いと涙」のように対立するカテゴリーを並べて語る短いエッセーが60篇足らず収録されている。それぞれのエッセーは3~4ページ程度で、あっと言う間に読み終えることができる。 . . . 本文を読む

BEST 1997-2001

2006-04-23 21:07:46 | 音楽
『BEST 1997-2001』 小野リサ   ☆☆☆☆☆  最近、よく小野リサを聴いている。ボサノバは私にとってリーチが短い音楽だと前に書いたが、小野リサは完全に例外である。いつ聴いても、どこで聴いても、どんな気分の時に聴いてもいい。もちろん、アストラッド・ジルベルトやジョビンより小野リサの方が好きだ。  小野リサのアルバムは大別すると正統ボサノバものと企画物、つまりシャンソンやスタンダード . . . 本文を読む

破裂

2006-04-21 22:20:44 | 
『破裂』 久坂部羊   ☆☆☆★  『白い巨搭』が好きなので、似たようなものを期待して買った。まあまあ面白かった。重厚な医療ミステリである。作者も医者らしいので医療の内実を描いてあるあたり、門外漢の私などはなかなかリアリティを感じる。「痛恨の症例」といって、医者なら誰でもある(らしい)治療ミス(もしくは未熟な治療)をヒアリングして回るところから話が始まるが、この「痛恨の症例」がどれも非常に怖い。 . . . 本文を読む

カーテン―7部構成の小説論

2006-04-19 19:27:53 | 
『カーテン―7部構成の小説論』 ミラン・クンデラ   ☆☆☆☆☆  ミラン・クンデラは大好きな作家で、翻訳されているものはすべて読んでいる。本書は小説でなく評論集だが、Amazonで発見してあわてて入手、むさぼるように読了した。  クンデラの評論というと他に『小説の精神』『裏切られた遺言』があるが、もともとこの人の小説は「小説的思考」のせめぎあう場であり、ストーリーの中でエッセーや考察がどんど . . . 本文を読む

LIVE

2006-04-17 19:00:05 | 音楽
『LIVE』 オフコース   ☆☆☆★  オフコースのライブ。『Three And Two』ツアーの音源がメインになっていて、初期のアコースティック時代とロックっぽくなった後期、両方のテイストが入り混じっている。過渡期のライブである。『思いのままに』『愛を止めないで』『SAVE THE LOVE』『さよなら』などは完全に後期オフコースの音で、『雨の降る日に』『老人のつぶやき』『さわやかな朝を迎え . . . 本文を読む

月と六ペンス

2006-04-15 15:15:46 | 
『月と六ペンス』 サマセット・モーム   ☆☆☆☆☆  私は昔からこの小説が好きで、何度も再読している。モームという作家は大衆小説的だというような批判をされる人だが、この小説はその読みやすさ、ストーリーテラーの資質が文学的なテーマとうまいこと溶け合った傑作だと思う。  ストリクランドという画家の物語である。モームの分身である若手作家の視点で話は進んでいく。ストリクランドは40過ぎまで株式仲買人 . . . 本文を読む

黒船

2006-04-13 20:11:45 | 音楽
『黒船』 サディスティック・ミカ・バンド   ☆☆☆☆☆  恥ずかしながらこれまで聴いたことのなかったサディスティック・ミカ・バンドの『黒船』を、ようやく聴いてみた。加藤和彦や高橋幸宏というメンツから、なんとなくはっぴいえんどみたいなサウンドを予想していたのだが、予想は完全に裏切られた。これはまぎれもないロック、それもギターロックである。ほえー、と思わず一人呟く。カッコイイのである。何がって、高 . . . 本文を読む

蝉しぐれ

2006-04-11 23:24:49 | 
『蝉しぐれ』 藤沢周平   ☆☆☆☆☆  『橋ものがたり』に続いて藤沢周平。『橋ものがたり』は今ひとつだったが、この『蝉しぐれ』の評判があまりに良いのでまた買ってしまった。  文四郎という侍の少年時代から青年時代の物語である。基本的に少年剣士の成長物語、なのだが、その枠組みの中に切ない恋あり、友情あり、剣の試合あり、陰謀あり、チャンバラあり、刺客あり、と何でもある。それぞれのエピソードが丁寧に . . . 本文を読む