『自転車泥棒』 ヴィットリオ・デ・シーカ監督 ☆☆☆☆
日本で買って来たDVD。『自転車泥棒』とはなかなか印象的なタイトルで、昔何かで見かけてずっと気になっていたのだが今まで観たことがなく、ようやく観れてすっきりした。ネオリアリスモだの、俳優はみんな素人だのと聞いてどんな実験的な映画かとちょっと億劫だったのだが、実際観てみるとみんな普通に演技している普通の映画だった。難しい映画が苦手な人も . . . 本文を読む
『火の粉』 雫井脩介 ☆☆☆★
再読。雫井脩介のミステリはこれと『犯人に告ぐ』『虚貌』ぐらいしか読んだことがないが、その中では『火の粉』が一番出来がいいと思う。一気読み必至のページターナーである。ある殺人事件の容疑者を裁判官が無罪にする。そしてその事件を最後に退官する。しばらくして、退職した裁判官の家の隣にその男が引っ越してくる。偶然だろうか。男はもちろん元裁判官に感謝していて、善意の隣人 . . . 本文を読む
『短篇集』 柴田元幸・編 ☆☆☆★
日本で買ってきた本。柴田元幸編集のアンソロジーで、収録作品は以下の通り。
クラフト・エヴィング商會 誰もが何か隠しごとを持っている、私と私の猿以外は
戌井昭人 植木鉢
栗田有起 「ぱこ」
石川美南 物語集
Comes in a Box 朝の記憶
小池昌代 箱
円城塔 祖母の記憶
柴崎友香 海沿いの道
小川洋子 『物理の館物語』
しょっぱなにクラフト . . . 本文を読む
『大空港』 ジョージ・シートン監督 ☆☆☆☆
日本で買ってきたDVD。あんまり期待していなかったが、面白かった。娯楽映画の傑作と言っていいんじゃないか。古き良きハリウッド映画の匂いがする。ゴージャスな映画音楽、どっしりと男らしい男優たち、臆面もなく美貌をひけらかす女優たち。最近の刺激の強い、テンポが速いアクションものを求める人には向かないだろうが、昔のハリウッド映画のゴージャス感を愛する人 . . . 本文を読む
『怒りの葡萄(上・下)』 スタインベック ☆☆☆☆☆
スタインベックの代表作であり、アメリカ文学の偉大な金字塔『怒りの葡萄』。私はこの小説が子供の頃から大好きで、もう何度読んだか分からないが読むたびに新鮮な感動を覚える。これこそ深い文学性とワクワクする娯楽性を兼ね備えた最上の芸術作品であり、「読まずに死ねるか」リストの筆頭作品だ。要するに私のオールタイム・ベストの一作なのである。
ジョ . . . 本文を読む
『1977 Live at Sugino Kodo』 Prism ☆☆☆☆☆
これは日本のフュージョン・バンド、プリズムが1977年に杉野講堂で行ったデビュー・ライヴの音源である。たっぷり14曲収録されていて、アラン・ホールズワースのカヴァーや2ndアルバム収録曲の原型も含まれている。
はっきり言って、このライヴはいい。時代の古さなど微塵も感じさせない、名演と言っていいと思う。プリズム . . . 本文を読む
『ウエスタン・ランド』 ウィリアム・バロウズ ☆☆☆☆
バロウズ80年代三部作の三つ目『ウエスタン・ランド』を再読。
今回は「西方の地」即ち西方浄土ということで、文字通り死者の国がテーマになっている。とはいっても死者の国で何らかのストーリーが展開すると思ったら大間違いで、前二作『シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト』『デッド・ロード』には一応あったストーリーらしきものももはや存在しない . . . 本文を読む
『愛人刑事』 つかこうへい ☆☆
本棚の整理をしていたら出てきたので再読。つかこうへいは本来劇作家・演出家なので一概には言えないが、少なくとも小説家つかこうへいの全盛期は80年代だった。劇団を解散して執筆業に専念していた時期である。そしてその後は急激に失速していく。この『愛人刑事』は89年発表で、ちょうど「今日子」で演劇に復帰した頃だ。やはり小説に興味を失いつつあったのか、あまり出来は良く . . . 本文を読む
『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』 ニキータ・ミハルコフ監督 ☆☆☆☆☆
日本版DVDで再見、最初観た時より更に評価上がる。これは相当な傑作ではなかろうか。原作はチェーホフ。
夏の一日、ある邸宅に集まった人々の人間模様を描く悲喜劇で、時間と場所が限定されているところがとても演劇的。タイトルから連想されるようなシュールさや幻想性はなく、人生の悲哀やアイロニーを扱ったいかにもロシア . . . 本文を読む
『愛しあう』 ジャン=フィリップ・トゥーサン ☆☆☆☆☆
美しい表紙とタイトルに惹かれて購入し、一気読み読了。非常に良かった。これまで読んだトゥーサン本の中で一番気に入ったかも知れない。
トゥーサンといえば読者をはぐらかすようなとぼけた発想とオフビートなユーモアが特徴だが、本作ではちょっとイメージが違う。訳者があとがきで書いている、「夜に響くサックス・ソロのような」という形容が実に言い . . . 本文を読む