『1934年』 アルベルト・モラヴィア ☆☆☆☆★
これも古本で入手したモラヴィアの文庫本。読んだ記憶がないので初読だと思うが、もしかしたら10代の頃に読んでいるかも知れない。モラヴィア74歳の作品で『倦怠』『軽蔑』よりだいぶ後となる。晩年の作ということで角が取れてマイルドな、ある種達観した作風かと思いきやさにあらず。きわめてトリッキーかつ作為的なプロットの小説であった。モラヴィアの小説で . . . 本文を読む
『人生万歳!』 ウディ・アレン監督 ☆☆☆☆☆
英語版ブルーレイで再見。前にiTunesで観てすっかり気に入り、セリフが多いし難しいしで日本語字幕付きのブルーレイを買おうと思ったら、日本ではブルーレイが発売されていない。いい映画なので日本でもブルーレイを発売すればいいのに。
主演のラリー・デイヴィッドはもともと人気コメディドラマ『Seinfeld』の脚本家だが、最近じゃHBOの『Cur . . . 本文を読む
『無宿人別帳』 松本清張 ☆☆☆☆☆
『かげろう絵図』が大変面白かったので、松本清張の時代劇をもうひとつ読んでみた。こちらは短篇集である。
タイトル通り、すべて「無宿人」を題材とした短篇。無宿人とは江戸時代に存在したある階層の人々をさす言葉で、要するに社会のすべての構成員が「人別帳」で管理されていた時代にその「人別帳」に載っていない、つまりはなんらかの事情で社会の枠組みから零れ落ちてし . . . 本文を読む
『旅情』 デヴィッド・リーン監督 ☆☆☆★
日本版ブルーレイで再見。主演、キャサリン・ヘプバーン。秘書で生計をたてるアメリカ人の独身女性が一人旅でヴェニスを訪れ、現地で骨董品店を経営する男と恋に落ちるというお話。ヴェニスの観光映画にして大甘のメロドラマと言われても仕方がない映画だけれども、それだけで切って捨てるには惜しい部分もある。普通のメロドラマにはない、ビターな味わいがあるのだ。
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『海に投げこまれた瓶』 コルタサル ☆☆☆☆☆
コルタサル最後の短篇集。なぜか絶版になっているので古本で入手した。晩年の短篇集らしく、コルタサルの超絶技巧をたっぷり堪能できる素晴らしい作品集だ。何が超絶技巧かというと、何はともあれこの文体。アイデアももちろん相変わらず冴えているのだが、もはや融通無碍となったこの文体をもってすればこの世に可ならざるものはなし、ということを思い知らされる。村上 . . . 本文を読む
『海よりもまだ深く』 是枝裕和監督 ☆☆☆☆
日本版のブルーレイを購入して鑑賞。首を長くして待ったこの映画をようやく観ることができた。『歩いても歩いても』のパート2のようなキャストと雰囲気である。主演は阿部寛、母親が樹木希林。阿部寛の姉が小林聡美で、別れた妻が真木よう子。
阿部寛は昔何かの文学賞を受賞して一冊だけ本を出した「なんちゃって小説家」だが、その後まったく売れず、書くことを諦め . . . 本文を読む
『赤毛のレドメイン家』 イーデン・フィルポッツ ☆☆☆☆
再読。本書はかつて江戸川乱歩に激賞され、黄金時代ミステリのベストテン第一位に君臨しお墨付きの「名作」とされていたが、アマゾンのレビューなどを読むとどうやら最近では評価が割れているようだ。「犯人がすぐ分かる」「大したトリックじゃない」などがその理由で、昔は傑作だったのだろうが今となっては古びてしまった、と考える人も多いようである。
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『アンダーグラウンド』 エミール・クストリッツァ監督 ☆☆☆☆
日本版ブルーレイを入手して鑑賞。1995年のパルムドール受賞作である。前々から気になっていたが、三時間という上映時間の長さに恐れをなしてずっと敬遠していた。やっと観ることができたが、色々な意味で予想を裏切る映画だった。今はもはや世界地図に存在しない国、ユーゴスラヴィアに捧げられた叙事詩風ファンタジー映画で、「むかし、あるところ . . . 本文を読む
『シャンボールの階段』 パスカル・キニャール ☆☆☆☆
昨年、キニャールの『シャンボールの階段』と『ヴュルテンベルグのサロン』を古本で購入した。作品が書かれた順番とは逆だがまずは『シャンボールの階段』を読了。どこかヒチコックを思わせるストーリー、という評に惹かれたからだが、まあ、これから読む人はあまり真に受けない方がいい。最後の最後にあるミステリーの真相が明かされるのだが、この小説の大部分 . . . 本文を読む