『ルーズヴェルト・ゲーム』 池井戸潤 ☆☆☆☆☆
常に鉄板、ハズレなしの池井戸潤『ルーズベルト・ゲーム』が文庫になっているのを書店で発見し購入、イッキ読みした。今回は得意の企業ものと社会人野球を絡めてある。つまり『下町ロケット』や『空飛ぶタイヤ』でお馴染みの企業サバイバル・ゲームと並行して、野球チームの存続の危機、さらに野球の勝負そのものをストーリーに織り込むという変則技で、もちろんそれぞ . . . 本文を読む
『ディア・ハンター』 マイケル・チミノ監督 ☆☆☆☆☆
マイケル・チミノ監督の出世作にして第51回アカデミー賞受賞作品。ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞も獲っている。映画史に残る傑作であると同時に、約3時間の大作である。従って、あまり気軽には観れない。私は今回日本版ブルーレイを購入したのを機に、十数年ぶりに鑑賞した。
題材はベトナム戦争である。アメリカの田舎、ペンシルヴァニアの鉄工場 . . . 本文を読む
『書記バートルビー/漂流船』 メルヴィル ☆☆☆☆☆
文学史においては、かのグレゴール・ザムザやラスコーリニコフのように一個の典型的人物像として広く認知され、単なる小説のキャラクターを越えて特有の形而上学的意味合いを持つに至った名前がある。本書に登場するバートルビーもまた、そんな名前の一つである。まさにこの名前をテーマにした『バートルビーの仲間たち』という本もあり、以前拙いレビューを書いた . . . 本文を読む
『花様年華』 ウォン・カーウァイ監督 ☆☆☆☆
要するに絢爛豪華なメロドラマなのだろうと思って観たら、結構ユニークな方法論を持つ映画だった。個人的にはかなり愉しめた。舞台は1960年代の香港。本作の雰囲気をキーワードで並べてみると、レトロ、アジアン、アダルト、官能的、チャイナドレス、というところだ。映像も実に美しい。
主人公は新聞社勤務のチャウ(トニー・レオン)、ヒロインは商社の社長秘 . . . 本文を読む
『アーサーとジョージ』 ジュリアン・バーンズ ☆☆☆☆★
Amazonの内容紹介に「連続家畜殺しの罪を着せられたジョージの嘆願に応じたアーサーは、ホームズばりの観察力で潔白を直感し、真相究明に乗り出す」とあるので、当然ながら、かのアーサー・コナン・ドイル卿がジョージに着せられた濡れ衣を晴らす話だと思って購入した。が、そういう言い方は間違いではないものの、それほど正確でもない。これは濡れ衣事 . . . 本文を読む
(前回からの続き)
さて、草笛光子はやはり芸妓だが、古風でいじらしい女の役である。まだ若くて、目がちょっと垂れ目気味なのが愛らしい。後の「おかみさん」的な草笛光子のイメージからはちょっと想像が難しいが、私はこの役柄で初めて草笛光子に女の可愛らしさを感じた。はっきり言って、この映画に登場する女たちの中で一番好みだったのはこの草笛光子だ。ちょっと引っ張ると簡単にほどける帯をつけて、「何やこれ?」 . . . 本文を読む
『ぼんち』 市川崑監督 ☆☆☆☆☆
日本版DVDで再見。市川雷蔵主演。市川雷蔵は眠狂四郎シリーズで有名な二枚目俳優だけれども、私は眠狂四郎シリーズを観たことがないせいか顔立ちがよく分からない。で、この映画を観たわけだが、二枚目半的な役柄のせいか取り立ててイケメンという感じはしなかった。確かに整った顔立ちではあるが、昔のわりと育ちがいい日本人男性の顔立ちという印象で、今でいうところのイケメン . . . 本文を読む
『八甲田山死の彷徨』 新田次郎 ☆☆☆☆☆
映画にもなった大変有名な小説だが、初読である。山には特段興味がないのでこれまで読んでいなかったが、なぜもっと早く読まなかったかと後悔するほど面白かった。
子供の頃「天は我らを見放したあ!」という映画のセリフがはやった記憶があり、兵隊さんが雪山で遭難する話ということは知っていた。が、こんな話だったとは知らなかった。軍事作戦での雪山踏破ではなく、 . . . 本文を読む
『フェアウェル・トゥ・キングス』 ラッシュ ☆☆☆☆
ラッシュ五枚目のスタジオ・アルバム。名作『2112』と『神々の戦い』の間である。正直、ラッシュのアルバムの中では初期三枚と並んでもっとも聴かないアルバムの一つだったが、最近久しぶりに聴いたら実に新鮮で、その後頻繁に聴くようになった。
このアルバムでラッシュは初めてシンセサイザーを使った。ペダルシンセを使い、曲の一部でゲディが鍵盤でメ . . . 本文を読む