『そして夢の国へ』 クロスウィンド ☆☆☆☆
80年前後に活動していた日本のフュージョン・バンド、クロスウィンドのサード・アルバムを入手。フュージョンといってもギターメインのインストだからそう分類されているだけで、「異端派プログレッシヴ・ロック」と呼ばれていることから分かるように、実際は技巧的なインストゥルメンタル・ロック・ミュージックと思った方がいい。ギターはジミヘンばりにぐにゃぐにゃし . . . 本文を読む
『鷲は舞い降りた』 ジャック・ヒギンズ ☆☆☆★
冒険小説の傑作といわれる『鷲は舞い降りた』を再読。私は冒険小説というものをあまり読まないが、これは面白い。
この小説の成功は多くの人がいうように、主人公をナチス側の人間にしたことによる部分が大きいと思う。連合国側の人間じゃないのである。もちろん、ヒトラー万歳という人間ではないが、不本意ながらもヒトラーのために戦争を戦っている男だ。それに . . . 本文を読む
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』 山崎貴監督 ☆☆☆★
レンタルDVDで鑑賞。前の『ALWAYS 三丁目の夕日』がとても良かったので楽しみにしていたが、私見ではやはり前作には及ばない。これは続編の宿命なのか。
前作は昭和という実在した時代の空気感を利用し、うまくふくらませて、かつてどこにも存在したことのないユートピア的世界を現出させるという力技を見せてくれた。力道山やら冷蔵庫やらシュ . . . 本文を読む
『こわれもの』 イエス ☆☆☆☆☆
イエスの最高傑作は『危機』だとして、次はどれだと言われると私は迷わずこの『こわれもの』を選ぶ。『危機』と『こわれもの』、このチョイスはイエス・ファン最大公約数的意見であって、当たり前すぎて面白くないといわれても仕方がない。意表をついて「いや『リレイヤー』こそ最高傑作だ」とか「実は『究極』かも知れない」とか「ひょっとしたら『90125』では」といってみたい . . . 本文を読む
『ためらい』 ジャン=フィリップ・トゥーサン ☆☆☆☆★
これも『カメラ』と同じように、再読して評価上がる。やはりトゥーサンというのは不思議な奥行きをもった小説書きのようだ。
あとがきで訳者が書いている通り、これは何も扱っていない、究極的には無意味でしかない小説である。トゥーサンの小説はみんなそんなところがあるが、この作品ではそれが徹底している。「ぼく」は赤ん坊の息子を連れてさびれた村 . . . 本文を読む
『ティファニーで朝食を』 トルーマン・カポーティ ☆☆☆☆☆
村上春樹訳の『ティファニーで朝食を』を読了。というかそもそもこの小説自体未読だったので、色んな意味で面白かった。
まず、とにかく文章が美しい。文章の美しさだけでいうと『グレート・ギャツビー』より上かも知れない。さすがカポーティ、村上春樹やノーマン・メイラーが絶賛するだけのことはある。が、私はカポーティの短編集(日本語訳)は前 . . . 本文を読む
『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』 スティーヴン・スピルバーグ監督 ☆☆★
先週『インディ・ジョーンズ』最新作を観てきたが、正直いってあんまり面白くなかった。19年振りの続編ということでもちろん不安はあったが、監督はスピルバーグだし、前の三作はどれも面白かったので一定レベルはクリアしてるはずだ、と思ったのだが残念ながら甘かったようだ。最近続編しか客が入らなくなっているという . . . 本文を読む
『巨船ベラス・レトラス』 筒井康隆 ☆☆☆☆
『ダンシング・ヴァニティ』を読んだら読み返したくなって再読。初回一気読みしたせいか印象が薄かったが、今回もまた一気読みしてしまった。筒井康隆の小説にしてはかなり読みやすい部類だ。
本書は『ダンシング・ヴァニティ』のような純粋に文学的、審美的作品ではなく、かつての『大いなる助走』のような批評的作品といっていいと思う。批評の対象となっているのは . . . 本文を読む
『殯の森』 河瀬直美監督 ☆☆☆★
カンヌで審査員特別グランプリを受賞した『殯の森』を、ようやくDVDで観ることができた。あいかわらず不親切さ爆発である。何がどうなってるのかさっぱり分からない。世間ではかなり激しく毀誉褒貶が渦巻いているようだ。
話は複雑ではなくむしろきわめてシンプル。認知症の男性とヘルパーの女性が二人で森の中をさまようだけだ。男性は妻を亡くし、女性は子供を亡くしている . . . 本文を読む
『感情教育』 フローベール ☆☆☆★
恋愛小説の傑作、そしてフローベールの代表作の一つに数えられる『感情教育』を読了。やりたいことは何となく分かるし、独特の味わいもあるけれども、面白いかといわれると正直微妙だった。私があまり恋愛小説を読まないということもあるだろうが、本書はもともと微妙な性格の作品なのである。
訳者があとがきで書いているが、本書は発表当時も退屈といわれ、不評だったらしい . . . 本文を読む