『かもめの城』 ジョン・ギラーミン監督 ☆☆☆★
『シベールの日曜日』のパトリシア・ゴッジ主演の悲恋映画『かもめの城』を鑑賞。これも知る人ぞ知るマニアックな映画で、長いことソフト化されていなかったらしい。モノクロである。
舞台はフランスのブルターニュ地方。海岸沿いの館に厳格な元判事の父親と一緒に住む少女アニエス(パトリシア・ゴッジ)は、古い人形を人間の友達のように扱い、かもめ達と会話し . . . 本文を読む
『悪い娘の悪戯』 マリオ・バルガス=リョサ ☆☆☆☆☆
バルガス=リョサの新刊を読了。いやー、これも素晴らしく読み応えがある小説だった。お見事。それにしてもリョサは今だにガンガン小説を書いてくれて、まったく頼もしい限りだ。訳者あとがきを読んでも、とにかくおれは書き続けるぞという決意がみなぎっているようだ。マルケスがもうずいぶんご無沙汰なのと対照的である。
今回は『チボの狂宴』のような歴 . . . 本文を読む
海底の夢
五つ年上の従姉妹が死んだのは、ぼくが高校二年生の時だった。近親者の死という異物がぼくの人生の平穏な営みの中に力づくで割り込んで来たのは、これが初めてのことで、だから自分のまわりで進行しつつある事象のすべてが絵空事みたいな、実体を欠いたものとしてぼくの目に写った。そのせいで悲しみを感じることすらできなかった、ただ世界がふわふわと軽くなったような、おかしな気分になっ . . . 本文を読む
『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』 山田洋次監督 ☆☆☆
シリーズ第27作。マドンナは松坂慶子。大昔観たことがあるはずだがあまりよく覚えていないので、今回はじっくり鑑賞。
その結果、なかなか評判がいい作品のようだけれども、私としてはそれほどとは思えなかった。とはいえ悪くもない、水準作である。今回もまた、マドンナと寅が相思相愛になるパターンだ。なんとなく、二作後の『あじさいの恋』にストー . . . 本文を読む
『パラダイス・モーテル』 エリック・マコーマック ☆☆☆☆☆
前から欲しかったマコーマックの『パラダイス・モーテル』が文庫で出たので、すかさず入手。あまりの面白さにあっという間に読み終えてしまった。
以前読んだ『ミステリウム』はマコーマックにしては印象が弱く、物足りない小説だったが、この『パラダイス・モーテル』は違う。最初から最後までマコーマック節全開である。素晴らしい。大傑作だ。と書 . . . 本文を読む
『ひまわり』 ヴィットリオ・デ・シーカ監督 ☆☆☆☆
所有している日本版DVDで再見。1970年のイタリア映画で、主演はソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ。監督は『自転車泥棒』のヴィットリオ・デ・シーカ、音楽はヘンリー・マンシーニ。まさに堂々たるメロドラマの名作である。この風格はさすがイタリア映画だ。ハリウッド映画でこの味は出ない。
子供の頃にテレビの洋画劇場で観て以来何度 . . . 本文を読む
『狩りのとき(上・下)』 スティーヴン・ハンター ☆☆☆★
『極大射程』を再読して面白かったので、その続編である『狩りのとき』を入手した。といっても直接の続編ではなく、間にもう二作ぐらい挟まっているらしいが、全部は読む気にならないので飛ばし、傑作という評判の本書を選んだのである。
結果はまあ面白かったが、個人的な感想としては『極大射程』より落ちると思う。ページターナーぶりもそれほどでも . . . 本文を読む
『緑の光線』 エリック・ロメール監督 ☆☆☆☆
再見。ロメール監督の映画はあまりたくさんは知らないものの、『パリのランデブー 』で興味を持って以来ぽつりぽつりと観ている。これまでの印象は、題材こそちゃらちゃらした恋愛遊戯でトレンディ・ドラマっぽいが、その人間心理の解剖と掘り下げは異常に鋭く、実はかなり残酷、というものだ。この映画も例外ではない。
パリに住む独身のデルフィーヌは夏のバカン . . . 本文を読む
『トルネイド・アレイ』 ウィリアム・S・バロウズ ☆☆☆☆☆
バロウズの短編集、というか掌編集をご紹介する。これはもともと朗読用のテキストを集めたもののようで、どれも非常に短い。最初から最後まで通して読んでも数十分で読み終えてしまう。物足りない。もっと欲しい。
これは私がバロウズにはまるきっかけになった本で、だから非常に思い入れと愛着がある。最初に『裸のランチ』を読んで、やたら強烈だけ . . . 本文を読む
『コンテイジョン』 スティーブン・ソダーバーグ監督 ☆☆☆☆
ソダーバーグ監督の新作を英語版DVDで鑑賞。しかしこれは日本語字幕で観るべきだった。英語のサブタイトルを見ても医学用語頻出でよく分からないし、必死で字幕を読んでいなければならない。映像をゆっくり観ていられない。
未知の病原体による疫病が世界的に広まっていく様子をドキュメンタリー・タッチで描いた、硬質な社会派映画である。登場人 . . . 本文を読む