アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

みちのくの人形たち

2017-10-31 23:08:10 | 
『みちのくの人形たち』 深沢七郎   ☆☆☆☆★  深沢七郎といえば『楢山節考』だが、これも代表作といわれる作品集『みちのくの人形たち』を読了。短篇が七篇収録されている。バラエティ豊かで、作品によってかなり雰囲気に差がある。それぞれについて簡単に紹介してみたい。 「みちのくの人形たち」 表題作にしてトップバッター。いかにも深沢七郎というムードで、「楢山節考」直系の短篇という感じである。日本の田 . . . 本文を読む

座頭市

2017-10-28 10:42:43 | 映画
『座頭市』 北野武監督   ☆☆☆☆  最近、『アウトレイジ最終章』の公開に合わせてたけしの映画が軒並みブルーレイで再発されているようなので、手持ちのDVDのうちお気に入りのものをいくつか買い替えつつある。これもその一つ。たけし映画としてはかなりエンタメ寄りで、一説によれば本人はあまりやる気がなくお仕事として受けた企画だというが、私は結構好きである。  座頭市といえば勝新太郎だが、本作は勝新の . . . 本文を読む

生か、死か

2017-10-24 11:31:25 | 
『生か、死か』 マイケル・ロボサム   ☆☆☆☆  オーストラリアの作家、マイケル・ロボサムのミステリを読了。ミステリといっても本格パズラーではなく、スリラー・サスペンスものである。ページターナーとしてはかなり高性能で、とても面白く、ほぼイッキ読みしてしまった。  強盗殺人で10年服役していたオーディは、なんと出所の前日に脱獄する。一体どういうわけだこりゃ? というのが冒頭の謎で、そこから脱獄 . . . 本文を読む

パターソン

2017-10-21 13:27:19 | 映画
『パターソン』 ジム・ジャームッシュ監督   ☆☆☆☆☆  iTunesのレンタルで鑑賞。最近観た映画の中では文句なく最高であるとともに、最近観た映画と限定しなくてもほぼ完璧な美しさを備えた、オールタイムベスト級の映画である。ジム・ジャームッシュ監督作品中では『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に並ぶか、あるいはそれ以上の出来だ。  主人公はアメリカのニュージャージー州パターソンに住む、パター . . . 本文を読む

潔白

2017-10-18 21:40:38 | 
『潔白』 青木俊   ☆☆☆★  ニュージャージーの紀伊国屋書店で平積みになっていたのが目に止まり購入。すでに死刑が執行された男の再審請求が出され、無罪になっては大変なので検察が全力で潰しに行く、という設定が大胆で面白い。が、「冤罪もの」が大好きな私は『死亡推定時刻』のように不条理な司法の闇の生々しい描写を期待したのだが、その点はちょっと物足りなかった。社会派に徹している感じではなく、社会派に見 . . . 本文を読む

八甲田山

2017-10-15 19:05:27 | 映画
『八甲田山』 森谷司郎監督   ☆☆☆★  新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』がとても面白かったため、これはやはり映画も観なくてはと思い日本版ブルーレイを購入。それなりに面白かったが、やはり原作の面白さにはかなわない。これはブルーレイを購入するまでもなかったかも知れない。  良いところは、まず何と言っても名優がゾロゾロ出てくる。豪華きわまりない。男優陣は高倉健、北大路欣也、三國連太郎、小林桂樹 . . . 本文を読む

アメリカン・スクール

2017-10-12 13:49:45 | 
『アメリカン・スクール』 小島信夫   ☆☆☆☆  村上春樹が『若い読者のための短編小説案内』で取り上げている小島信夫の「馬」に興味を惹かれ、短篇集『アメリカン・スクール』を読了した。収録されている短篇は「汽車の中」「燕京大学部隊」「小銃」「星」「微笑」「アメリカン・スクール」「馬」「鬼」の八篇。ハマるとやみつきになるらしい小島信夫の小説だが、一通り読み終えた今の段階で、私はそこまでは至っていな . . . 本文を読む

今度は愛妻家

2017-10-09 22:04:32 | 映画
『今度は愛妻家』 行定勲監督   ☆☆☆  日本版DVDを購入して鑑賞。泣けると聞いて観てみたが、確かに泣けた。ほとんど反則技と言っていいぐらい泣けた。要するに夫婦愛の話で、豊川悦司と薬師丸ひろ子が夫婦を演じているが、特に奥さんと悲しい別れを経験している男性は要注意である。滂沱の涙で前が見えなくなる可能性がある。もしくは号泣。それぐらいキます。  と同時に、この映画は叙述トリックものでもある。 . . . 本文を読む

満願

2017-10-06 00:33:55 | 
『満願』 米澤穂信   ☆☆☆  ニュージャージーの紀伊国屋書店で文庫本を購入。「このミス」「週刊文春ミステリーベストテン」「ミステリーが読みたい! 」 で第一位を獲得し、史上初の三冠を達成したミステリー短篇集、というのが売り文句である。これは凄そうだ、というので私としては松本清張や横山秀夫あたりの傑作短篇集レベルのものを期待したが、結果的にはそれほどでもなかった。そこまで社会派、人間ドラマ派で . . . 本文を読む

おとうと

2017-10-02 23:30:43 | 映画
『おとうと』 市川崑監督   ☆☆☆★  名作と名高い『おとうと』を日本版DVDを購入して鑑賞。このところ私はなぜか市川崑づいていて、『鍵』や『ぼんち』や『細雪』を再見して以前見た時より感動を深めたため、とりわけ評判が高いこの作品に手を伸ばしたのである。1960年のキネマ旬報ベストテンで第一位となっている。ちなみに、同監督の『鍵』は前年のキネマ旬報ベストテンで第九位。  結論から言うと、『鍵』 . . . 本文を読む