とうとう今年も大晦日になってしまった。あっという間だった。やりたいこと、やらなくちゃいけないことはたくさんありながらただ歳月だけが過ぎていく。もう少ししゃんとしろ!(<と、自分を叱る) というわけで、本年最後のレビューであります。
『男の事情 女の事情』 ジョン・マクガハン ☆☆☆☆
アンソロジー『燃える天使』収録の「僕の恋、僕の傘」が気に入って短編集を入手。全部が良かったとは言わな . . . 本文を読む
『さや侍』 松本人志監督 ☆☆
もはや期待値は限りなくゼロに近い松本人志監督作品だったが、前二作よりも良いという評判を耳にして日系レンタルDVDで借りてきた。観始めていきなりさや侍がなんとかお竜に斬られ、なんとかかんとかに鉄砲で撃たれ、と笑えないギャグ(らしきもの)の連発。またこのパターンかよ、とさっそくテンションは最低だ。やっぱり借りるんじゃなかったな、という後悔の念とともに観続ける。
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『燃える天使』 柴田元幸編 ☆☆☆☆☆
再読。柴田元幸編集のアンソロジーは色々出ているが、その中でも特に気に入っている一冊である。収録作品リストは以下の通り。
「僕の恋、僕の傘」ジョン・マクガハン
「床屋の話」V. S. プリチェット
「愛の跡」フィリップ・マッキャン
「ブロードムアの少年時代」パトリック・マグラア
「世の習い」ヴァレリー・マーティン
「ケイティの話 1950年10月」シ . . . 本文を読む
『トゥルー・グリット』 イーサン・コーエン/ジョエル・コーエン監督 ☆☆☆★
コーエン兄弟の映画をDVDで鑑賞。
かなり評判が良かったので期待したのだが、実は拍子抜けした。いや、いい映画なんである。情緒はあるし、それなりに重厚感もある。ユーモアもスリルもあり、コーエン兄弟の匠の技は充分に感得できる。演技陣も申し分ない。が、フツーである。変じゃない。コーエン兄弟にこんな、普通にいい映画は . . . 本文を読む
『愛その他の悪霊について』 ガブリエル・ガルシア・マルケス ☆☆☆☆☆
再読。これもマルケスの傑作だ。暗い詩情をはらんだ愛の悲劇、とでもいう感じでこの美しさには酔える。
ややこしい複合的な物語が多いマルケスにしてはわりとストレートなプロット展開である。文体は『百年の孤独』『族長の秋』ほど饒舌ではなく、『予告された殺人の記録』に近い。端正で分かりやすく、読みやすい。そして美しい。物語の舞 . . . 本文を読む
(前回からの続き)
さらに驚くべきことが起きる。立ち去っていく刑事たちから、すれ違う一人の男へとカメラの視線が移る。これが誘拐犯人なのだ。映画は犯人探しのミステリ的興味をここで惜しげもなく投げ捨て、観客に誘拐犯人を教えてしまう。ここから観客は誘拐犯人の一喜一憂を目にし、やがて権藤へ向けられた屈折した憎悪を知る。正確に言うと、犯人の権藤への得体の知れない執着を感じ取ることはできるが、それが何かと . . . 本文を読む
『天国と地獄』 黒澤明監督 ☆☆☆☆☆
久しぶりに再見。これもまた黒澤明大傑作群の一つである。スリルといい面白さといい重量感といい知的興奮といいテーマの複合性といい、すべての点において圧倒的という他はない。
この映画の第一の特徴は、前半と後半で雰囲気、見せ方がガラッと変わることである。前半は高台に立つ権藤邸の中、しかもほぼ居間だけに舞台が限定されていて、権藤(三船敏郎)をメインとする人 . . . 本文を読む
『ブラック・スワン』 ダーレン・アロノフスキー監督 ☆☆☆☆
TARGETでDVDを購入して鑑賞。最近じゃもう、ウェブじゃなければスーパーマーケットぐらいでしかDVDは買えない。寂しい限りだ。しかしずいぶんと話題になった映画だが、なるほどこういう話だったのか。
サイコ・サスペンスだと思っていたが、この脅かし方はホラーに近い。意外とびっくり演出が多くて、そこがちょっと安っぽい感じがした。 . . . 本文を読む
『Sunlight』 Herbie Hancock ☆☆☆☆
ハービー・ハンコックの『サンライト』をご紹介したい。1978年発表作品。
これは以前ご紹介した『洪水』などの怒涛のブラック・ファンク期のちょい後の作品で、これ以降ハンコックはVSOPなど純然たるジャズの活動と平行してブラック・コンテンポラリー的な、ポップな歌ものを発表するようになる。クィンシー・ジョーンズあたりに近い感触の音 . . . 本文を読む
プラネタリウムの建造者たち
この町にはプラネタリウムが多過ぎるという外部の人々の批判を、私たちは決して軽んじているわけではない。まして私たちがそれに気づいていないふりをしているという非難は的外れもいいところだ。この町に住む私たち以上に誰がこの現状を憂い、深刻な問題として受け止めるだろうか。この町を歩く時、私たちは実にたくさんのプラネタリウムを目にする。あのすべすべしたドー . . . 本文を読む