『贖罪』 イアン・マキューアン ☆☆☆☆
昔買って最初だけちらっと読んでなぜかそのまま積読状態になっていた『贖罪』をあたらめて読了。映画の『つぐない』に感動したためだ。
マキューアンといえば『愛の続き』や『アムステルダム』の軽やかさ、ひんやりした残酷な目線、辛辣なイロニーが持ち味だと思っていたので、いかにも文芸作的、大河ドラマ的な本作の序盤を読んだ時は意外だった。いつもと違って随分と重 . . . 本文を読む
『男はつらいよ 知床慕情』 山田洋次監督 ☆☆☆★
寅さんシリーズ38作目。マドンナは竹下景子。竹下景子はシリーズ中3回マドンナを演じていて(しかも全部別人の役)、寅との相性が良かったことを伺わせる。この『知床慕情』は『口笛を吹く寅次郎』に続く2回目の登場で、三船敏郎の娘役である。ちなみに3回目は『寅次郎心の旅路』で、ウィーンで観光ガイドとして働く女性を演じている。
『口笛を吹く寅次郎 . . . 本文を読む
『シェル・コレクター』 アンソニー・ドーア ☆☆☆☆
再読。アメリカ人作家の短編集だが、非常に特徴がある短篇の書き手だ。まず、すべての物語が自然の中に生きる人々を題材にしている。都会人の話は一つもない。しかも登場人物は自然の中に住むだけでなく、自然や動物と深く接しながら、あるいは自然から癒しや生きる活力をもらいながら生きている。だから舞台もアメリカのオハイオ州だったり、アフリカだったりする . . . 本文を読む
『Cujo』 Lewis Teague監督 ☆☆
スティーヴン・キング原作の『Cujo』をDVDで鑑賞。ちなみにこのタイトルは翻訳本では『クージョ』になっているが日本版DVDでは『クジョー』になっている。実際の発音は私が聞いた限りでは「クージョー」である。別にどうでもいいか。
原作はスティーヴン・キングの作品の中では傑作の一つだと思う。比較的短めで、超常現象が出てこないシンプルな物語だ . . . 本文を読む
『シャーロック・ホームズの冒険』 コナン・ドイル ☆☆☆★
ご存知ホームズものの最初の短編集。ミステリの古典である。昔読んだことがあるが、久しぶりに読みたくなって買ってきた。
まあ今となっては単純な話が多い。トリックだってそれほど凝ってないし、最近のミステリを読みなれた読者なら話の途中でオチが分かる作品も多いと思う。が、これはこれで意外と面白かった。シャーロック・ホームズの推理は今読む . . . 本文を読む
『GALAXY』 クレイジーケンバンド ☆☆☆☆☆
クレイジーケンバンドのCDはほとんど全部持っているが、どれを人に薦めたらいいかと考えると結構難しい。どのアルバムも傑作ということもあるが、そういうアーティストの場合でもアルバムごとにこれはロックっぽいとかこれはキャッチーだとか、これはジャズっぽいとか、カラーがはっきりしていれば分かりやすいのだけど、クレージーケンバンドは音楽性がノンジャン . . . 本文を読む
『書物の王国 - 人形』 服部正・編 ☆☆☆☆
国書刊行会から出ている「書物の王国」シリーズのうち、「人形」「王朝」「美食」の三冊を入手した。もともとは谷崎の『少将滋幹の母』を読んで王朝ものをまとめて読みたくなったのがきっかけだが、なかなか面白そうなシリーズなので他のものも入手してみたのである。
これは「人形」篇で、人形に関する古今東西の幻想譚が収録されている。エッセーもあるし詩もある . . . 本文を読む
『蒲田行進曲』 深作欣二監督 ☆☆☆★
ブック・オフでDVDを見かけ、なつかしくなってつい買ってしまった。
昔観た時はラストの階段落ちに随分と感動したものだが、こうやってあらためて観てみるとそれほどの傑作とは思えない。作劇や演出が結構泥臭く、垢抜けない感じがする。話の展開もかなり強引だ。が、つかこうへい的感性がこの映画によってはじめて銀幕に登場したということ、そしてラストの階段落ちの迫 . . . 本文を読む
『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ ☆☆☆☆☆
再読。昔読んだ時は斜め読みで、結構地味だなと思った記憶があるが、今回じっくり読んでやはりピュリツァー賞も伊達じゃないということが分かった。題材はインド系アメリカ人の日常生活などから取られていて、それほどの起伏はない。どことなく劇的な事件が起きそうな状況であっても、結局大したことは起きないというパターンが多い。そういうところはちょっとモラッツォー . . . 本文を読む
『Tapestry』 Carole King ☆☆☆☆☆
キャロル・キングの名盤、タペストリー。邦題『つづれおり』。直訳なんだろうけれども、日本語としてもなかなかいいタイトルだと思う。グラミー賞4部門を制覇した折り紙つきの歴史的名盤だ。私は昔からプログレ系のロックが好きで、大学でバンドやってた頃はイギリス産かイーストコーストじゃなければロックじゃないと思っていた。ウェストコースト・ロックは . . . 本文を読む