『千と千尋の神隠し』 宮崎駿監督 ☆☆☆☆☆
日本版DVDで再見。何度観ても大傑作。現時点で宮崎駿の最高傑作はどれかと聞かれたら私は本作に一票。ちなみに日本版DVDは色が赤みがかっていると物議をかもしたようだが、私の持っているDVDは問題ない。修正されたのだろうか。
この映画は宮崎駿版『不思議の国のアリス』だ。異界に迷い込む少女というモチーフが同じだし、さまざまな超現実的なイメージやエ . . . 本文を読む
『狼たちの月』 フリオ・リャマサーレス ☆☆☆☆☆
『黄色い雨』で私のフェイバリット作家となったリャマサーレスの新訳本が出たので速攻で購入。ただちに読み始め、電光石火で読了。ああ、やはりこの作家は正解だった。祈りのように静謐な文体、全篇を覆う瞑想性と透明なメランコリー。まるでホアン・ルルフォとアントニオ・タブッキをミックスしたような極上の読書体験である。
今回もやはり断章形式だが、『黄 . . . 本文を読む
『男はつらいよ』 山田洋次監督 ☆☆☆☆★
『男はつらいよ』記念すべきシリーズ第一作である。正確にいえばテレビ版があるらしいが、とりあえず寅さん映画の歴史はここから始まった。
二作目もそうだが、やはりこの一作目の寅さんは特にヤクザ度が高い。後の「優しい叔父さん」的面影はなく、破壊力抜群である。さくらの見合いの席をぶち壊すシーンやおいちゃんおばちゃんとのケンカシーンもそうだが、目があった . . . 本文を読む
『色彩のブルース』 EGO-WRAPPIN’ ☆☆☆☆
初めて買ったエゴ・ラッピンのCD。5曲で30分に満たないミニ・アルバムだがなかなかいい。濃厚だ。関西のバンドらしい。アクの強い女性ヴォーカル、ウッドベースにドラム、ピアノ、ギター、ホーン、アコーディオンなどでジャジーで暗い、じっとり汗が滲むようなサウンドを奏でる。スタジオ・アルバムであるにもかかわらず、まるで小さなライブハウスのギグを . . . 本文を読む
『後日の話』 河野多恵子 ☆☆☆★
再読。17世紀トスカーナの物語。蝋燭商人の娘で変人のエレナは、帽子屋のジャコモと結婚する。ジャコモはいい夫だが嫉妬深く時々陰湿な怒り方をする。彼はいさかいで若い男を殺す。この時代、人殺しは必ず死刑である。面会に来たエレナの鼻をジャコモは噛み千切る。「妻を他の男にとられたくない」ジャコモは死刑になる。鼻をなくしたエレナはその後ジャコモの肖像を作ったり、他の . . . 本文を読む
『花とアリス』 岩井俊二監督 ☆☆☆☆☆
DVDで久しぶりに再見。やっぱり傑作。岩井監督の映画は他にチラホラとレンタルビデオで観たことある程度で良く知らないが、この映画だけは大好きだ。
主演は鈴木杏と蒼井優。「花」と「アリス」はこの二人のニックネーム。メインのストーリーは花が憧れの先輩を無理矢理「記憶喪失」に仕立て上げ、「自分に好きだと言った」とウソついて彼女におさまってしまい、そこに . . . 本文を読む
『歌声の消えた海』 ☆☆☆★
刑事コロンボ29作目。このエピソードはコロンボが休暇で豪華客船に乗っている時に起こるという、いつものパターンから外れてポアロものみたいな本格ミステリ・ムードを漂わせた企画ものである。殺されるのは女性歌手。もちろん庶民派のコロンボが自費で豪華客船の旅をするわけもなく、くじ運の強いカミさんがラッフルで当てたということになっている。
したがって全篇企画ものらしいお遊 . . . 本文を読む
『キサラギ』 佐藤祐市監督 ☆☆☆★
面白いという評判を聞いてDVDで鑑賞。なるほど、結構面白かった。『十二人の怒れる男』みたいな密室推理劇である。
一年前に自殺したC級アイドル・如月ミキのファンがネットで知り合い、一周忌のオフ会を開く。顔も知らない5人の男達。最初は和気藹々と盛り上がっていたが、中の一人が「本当に彼女は自殺だったのか? 実は殺人だったのではないか」と問題提起することに . . . 本文を読む
『黒い時計の旅』 スティーヴ・エリクソン ☆☆☆☆☆
写真は白水uブックスだが、私のは大昔に買った福武書店の単行本。一時期絶版になっていたらしい。再読だが、前読んだ時は斜め読みだったので読了してもほとんどわけわからなかった。もともとわけわからない小説なのに、斜め読みして分かるはずがない。
これも『夜のみだらな鳥』と同じように妄想系のシュールな小説である。時の経過がスピードアップしたり循 . . . 本文を読む
『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』 山田洋次監督 ☆☆☆☆
寅さんシリーズ32作目。ということで初期のテンションの高さはないが、その代わりに余裕と円熟味を感じさせる一篇。この作品はコメディパート、寅さんの恋愛のしみじみ感、マドンナの魅力、サブプロットなどそれぞれ充実しておりかつバランスが良く、個人的にはかなりの傑作だと思う。
まずマドンナの竹下景子がいい。竹下景子はシリーズに三回登場し . . . 本文を読む