アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

銀齢の果て

2006-03-31 20:18:04 | 
『銀齢の果て』 筒井 康隆   ☆☆☆★  筒井康隆の新作である。法律により町内の老人達が殺し合いをしなければならないという、設定は『バトル・ロワイヤル』のパロディとなっている。  まあこの設定はまさに筒井康隆のためにあるようなもので、これまで筒井康隆が書いてきたブラックなドタバタ・コメディの集大成のような、非常に洗練された、安定感のあるエンターテインメントになっている。帯には「21世紀最大の . . . 本文を読む

陰日向に咲く

2006-03-29 21:37:53 | 
『陰日向に咲く』 劇団ひとり   ☆☆☆  劇団ひとりという芸人さんが書いた短篇集だそうだ。日本のバラエティ番組をほとんど見ない私は、どういう芸人さんかほとんど知らない。ネットでなかなか評判が良さそうなので買ってみた。  結果はまあまあ。娯楽小説であって、それ以上の何かを期待してはいけない。傾向としては、ユーモアがあり、ほろっとさせる部分もあり、最後に「そうだったのか」と思わせるミステリ風味も . . . 本文を読む

麦ふみクーツェ

2006-03-27 19:51:22 | 
『麦ふみクーツェ』 いしいしんじ   ☆☆☆☆  昨日読了。かなり良い。童話的な世界で、時々妙にひらがなが多かったりするが、大人が読んでもずっしりと読み応えがある。可愛らしくポップだけど、しっかり文学している。  これはジャンル分けするとファンタジーになるのだろうか。ファンタジーといっても騎士や姫やユニコーンが出てくるようなのじゃなくて、宮沢賢治的なもの。あるいは、クラフト・エヴィング商会の物 . . . 本文を読む

ラーメンズ DVDボックス :『雀』

2006-03-25 18:49:59 | 演劇
ラーメンズ DVDボックス :『雀』   ☆☆☆  DVDボックス最後の一枚。最初の『お時間様』は、仕事でミスをした男が時間を戻してもらうために「お時間様」のところへやってくる話。まあまあ面白い。一番笑えるのはやっぱり「パチンコだいがく」の文字が入れ替わってどんどん変わっていったりする言葉遊びの部分である。やっぱり、こういうナンセンスな言語感覚はラーメンズの最大の武器の一つだと思う。  『許し . . . 本文を読む

ラーメンズ DVDボックス :『鯨』

2006-03-24 22:13:20 | 演劇
ラーメンズ DVDボックス :『鯨』   ☆☆☆★  『select』とかぶっているのは『バースデー』、『器用で不器用な男と不器用で器用な男の話』の二本。『零の箱式』、『椿』に続けてみるとだんだん演劇志向が強まっているのが分かる。  『器用で不器用な男と不器用で器用な男の話』は最後のコントだが、笑わせつつほろりとさせる典型的なパターンである。このコントの前にチェロ奏者が出てきてバッハを弾くが、 . . . 本文を読む

ラーメンズ DVDボックス :『椿』

2006-03-22 19:39:38 | 演劇
ラーメンズ DVDボックス :『椿』   ☆☆☆☆  この『椿』からは『ドラマチックカウント』と『日本語学校アメリカン』が『select』に収録されている。この二つとも、非常にラーメンズらしい、普通のお笑いとはちょっと違う方向性を見せてくれる。  『ドラマチックカウント』は、「10,9,8,7,...」とカウントダウンするだけの音声にマイムを合わせて、ちゃんとストーリー性を持たせるという、かな . . . 本文を読む

ラーメンズ DVDボックス :『零の箱式』

2006-03-21 20:20:51 | 演劇
ラーメンズ DVDボックス :『零の箱式』 ☆☆☆☆  ラーメンズのDVDボックスを買った。二つ出ているが、昔の方である。『零の箱式』、『椿』、『鯨』、『雀』の4本が入っている。せっかくなのでそれぞれについて感想を書いてみる。まずは『零の箱式』。   これは初期公演からのヨリヌキ集ということになっている。私はラーメンズは『Rahmens 0001 select 』を持っているが、かぶっているの . . . 本文を読む

橋ものがたり

2006-03-19 17:40:47 | 
『橋ものがたり』 藤沢周平   ☆☆☆  時代小説というものは普段ほとんど読まない。たまに日本情緒に浸りたくなって読むこともあるが、藤沢周平を読むのは初めてだった。名前は知っていた。  井上ひさしの解説によれば、この短篇集は市井人情もの/職人人情ものということになるらしい。なるほど、どの短篇も確かにしみじみした人情が描かれている。しかし、そもそも小説に人情とかしみじみとかいうものをあまり求めて . . . 本文を読む

舞台版 笑の大学

2006-03-17 22:49:41 | 演劇
『舞台版 笑の大学』 三谷幸喜脚本   ☆☆☆☆☆  前に映画版を観てからずっと舞台版を観たいと思っていたが、パルコ劇場のオンラインショップでDVDを売っていることを知り即ゲット。海外発送をしてくれないので、一旦実家に送って中継してもらうということをした。ああ面倒。  さてさて、結果は高まりまくった期待を裏切らない傑作だった。映画では役所広司、稲垣吾郎だったが、舞台は西村雅彦、近藤芳正の二人で . . . 本文を読む

蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ

2006-03-15 22:59:34 | 
『蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ』 室生 犀星   ☆☆☆☆  『日本怪奇小説傑作集1』に収録されていた『後の日の童子』が良かったのと、ある方のブログで『蜜のあわれ』について書かれていたのを読んで興味をひかれ、講談社文芸文庫版を入手した。  まず驚きだったのは、これが本当にあの『後の日の童子』と同じ作者だろうか、ということだった。三人称で書かれた純然たるファンタジーである『後の日の童 . . . 本文を読む