5月19日(金)
日光の世界遺産を巡礼した翌日、宿のある中禅寺湖畔はすっぽりと雲の中に包まれ、木々の枝から雨の滴が落ちて来る空模様でした。
いろは坂を下りる前にどこか立ち寄るとすれば、華厳の滝ということになりますが、あいにく見通しがよろしくないのと、10年ほど前にも一度眺めたことがあったので、そのまま市内へ下りることにしました。
実は、前日宿へ向かうバスに揺られている時に、「植物園前」という停留所を通過したので、ちょっと気になっていたこともありました。
植物園前のバス停は、いろは坂を下ってまもなく、田母沢旧御用邸の一つ手前でした。
正式名称は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園日光分園」ということで、なんとも長々しい肩書ですが、要するに東大の付属施設で、小石川の植物園の分園ということなのです。
それはともかく、小雨の散らつく中、入り口に向かうと、「ハンカチの木が見頃です」という案内がありました。
「ハンカチの木」は大船のフラワーセンターにもあって、何回か眺めたことがありますが、向かって行くと、
かなり遠くからでも白い花びらが目に入って来る
大木でした
これならよくわかります
白いハンカチが垂れ下がっているように見えますが、これ、実は花びらではなく、つぼみを包んでいた「苞(ほう)葉」なんだそうで、大きくて風にゆらゆら揺れるので「幽霊の木」とも言われるそうです。
そして、この木が「ミズキ」科の樹木だと知ると、このたぐいの木の花に少しばかり思いが広がります。
実は、初夏になると、若葉の上を白い花が飾る樹木をよく見かけます。三浦半島などでよく見るのは、初め「ヤマボウシ」かなと思っていましたが、調べると「ミズキ」でした。
不惑を越えたころから、毎年連休の頃にミズキの葉に白い花が乗りはじめると、「春が終わったな」と実感してきたのですが。
ところが、関西のほうでは、この木を見て季節の移り変わりを感じることがありませんでした。ある時、明石公園の「緑の相談所」で質問したところ、「ヤマボウシ」でないとすれば「ハナミズキ」か「ハリエンジュ(ニセアカシア)」のことではないかというご返事。
「ミズキ」の分布、図鑑では「ほぼ本州全域」とあるのにと、何回か、連休の前後に新幹線に乗った時に窓から観察してみましたが、やはり静岡駅から西のほうでは目に入ってきません。なぜ南関東でしか見られないのかと、大船の「フラワーセンター」でも聞いたことがあるのですが、明瞭な答えは得られませんでした。
「ハンカチの木はミズキの仲間なんだ」と、そんなことを気にかけながら新緑の中を歩いていると、「もしかしたら、あれミズキじゃない?」と思うような白い花を見つけました。
でも、名札には
「ゴマギ」とありました
葉の上に薫風招く白き花 弁人
さて、この時期、園内のいたるところに咲いているのが
朱色のツツジ
「ツツジ」にもいろいろな種類がありますが、これは「ヤマツツジ」。紫の花もきれいですが、ここは日光の地、やはり若草色の中に映える鮮やかな朱色が似合います。
植物園の傍らには、
清流大谷(だいや)川
これも初夏らしい白い花。
「ヒメウツギ」
白だけかと思ったら、
「キバナウツギ」とかも
卯の花の匂ふ小径や鳥の声 弁人
昔の御用邸の一部も園地になっているようで、園内には大谷川に注ぐ田母沢川が流れていますが、
その川を渡る
「通御橋(かよいみはし)」
さすがに日本を代表する大学の植物園、百花咲き乱れる時期ではないにしろ、ふだん目にすることのない花に出合います。
大きな葉にちょこんと咲く白い花。
「ハルナユキザサ」
平地では見られない
「サンショウバラ」
日光市内は、いろは坂の下とはいえ標高はかなりありそう。山地にしか生息しない植物が多いのはまさに然りですが、
平地でも見る「モクレン」は
ちょうど開き始めたところ
まだつぼみの多い「カキツバタ」が
数輪咲いていました
一輪ずつ、けなげにそっと咲く
「コウホネ」
これも清流に似合う
「クリンソウ」
輪王寺宝物殿のお庭の池の傍らにもきれいな「クリンソウ」が咲いていましたが、こちらのほうが少し野趣がまさっている感じがします。
野の花もやや上向きに夏兆す 弁人
初夏とはいえ、標高も高くどこからともなく漂ってくる冷気。どんよりとした雲の下の森閑とした大気の中を流れる清らかな水。
そんな世界の片隅でひっそりと咲く花たちの可憐さに心を洗われながら植物園をあとにし、
前日乗り損ねた新型特急
「リバティ」で帰って来ました
日光の世界遺産を巡礼した翌日、宿のある中禅寺湖畔はすっぽりと雲の中に包まれ、木々の枝から雨の滴が落ちて来る空模様でした。
いろは坂を下りる前にどこか立ち寄るとすれば、華厳の滝ということになりますが、あいにく見通しがよろしくないのと、10年ほど前にも一度眺めたことがあったので、そのまま市内へ下りることにしました。
実は、前日宿へ向かうバスに揺られている時に、「植物園前」という停留所を通過したので、ちょっと気になっていたこともありました。
植物園前のバス停は、いろは坂を下ってまもなく、田母沢旧御用邸の一つ手前でした。
正式名称は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園日光分園」ということで、なんとも長々しい肩書ですが、要するに東大の付属施設で、小石川の植物園の分園ということなのです。
それはともかく、小雨の散らつく中、入り口に向かうと、「ハンカチの木が見頃です」という案内がありました。
「ハンカチの木」は大船のフラワーセンターにもあって、何回か眺めたことがありますが、向かって行くと、
かなり遠くからでも白い花びらが目に入って来る
大木でした
これならよくわかります
白いハンカチが垂れ下がっているように見えますが、これ、実は花びらではなく、つぼみを包んでいた「苞(ほう)葉」なんだそうで、大きくて風にゆらゆら揺れるので「幽霊の木」とも言われるそうです。
そして、この木が「ミズキ」科の樹木だと知ると、このたぐいの木の花に少しばかり思いが広がります。
実は、初夏になると、若葉の上を白い花が飾る樹木をよく見かけます。三浦半島などでよく見るのは、初め「ヤマボウシ」かなと思っていましたが、調べると「ミズキ」でした。
不惑を越えたころから、毎年連休の頃にミズキの葉に白い花が乗りはじめると、「春が終わったな」と実感してきたのですが。
ところが、関西のほうでは、この木を見て季節の移り変わりを感じることがありませんでした。ある時、明石公園の「緑の相談所」で質問したところ、「ヤマボウシ」でないとすれば「ハナミズキ」か「ハリエンジュ(ニセアカシア)」のことではないかというご返事。
「ミズキ」の分布、図鑑では「ほぼ本州全域」とあるのにと、何回か、連休の前後に新幹線に乗った時に窓から観察してみましたが、やはり静岡駅から西のほうでは目に入ってきません。なぜ南関東でしか見られないのかと、大船の「フラワーセンター」でも聞いたことがあるのですが、明瞭な答えは得られませんでした。
「ハンカチの木はミズキの仲間なんだ」と、そんなことを気にかけながら新緑の中を歩いていると、「もしかしたら、あれミズキじゃない?」と思うような白い花を見つけました。
でも、名札には
「ゴマギ」とありました
葉の上に薫風招く白き花 弁人
さて、この時期、園内のいたるところに咲いているのが
朱色のツツジ
「ツツジ」にもいろいろな種類がありますが、これは「ヤマツツジ」。紫の花もきれいですが、ここは日光の地、やはり若草色の中に映える鮮やかな朱色が似合います。
植物園の傍らには、
清流大谷(だいや)川
これも初夏らしい白い花。
「ヒメウツギ」
白だけかと思ったら、
「キバナウツギ」とかも
卯の花の匂ふ小径や鳥の声 弁人
昔の御用邸の一部も園地になっているようで、園内には大谷川に注ぐ田母沢川が流れていますが、
その川を渡る
「通御橋(かよいみはし)」
さすがに日本を代表する大学の植物園、百花咲き乱れる時期ではないにしろ、ふだん目にすることのない花に出合います。
大きな葉にちょこんと咲く白い花。
「ハルナユキザサ」
平地では見られない
「サンショウバラ」
日光市内は、いろは坂の下とはいえ標高はかなりありそう。山地にしか生息しない植物が多いのはまさに然りですが、
平地でも見る「モクレン」は
ちょうど開き始めたところ
まだつぼみの多い「カキツバタ」が
数輪咲いていました
一輪ずつ、けなげにそっと咲く
「コウホネ」
これも清流に似合う
「クリンソウ」
輪王寺宝物殿のお庭の池の傍らにもきれいな「クリンソウ」が咲いていましたが、こちらのほうが少し野趣がまさっている感じがします。
野の花もやや上向きに夏兆す 弁人
初夏とはいえ、標高も高くどこからともなく漂ってくる冷気。どんよりとした雲の下の森閑とした大気の中を流れる清らかな水。
そんな世界の片隅でひっそりと咲く花たちの可憐さに心を洗われながら植物園をあとにし、
前日乗り損ねた新型特急
「リバティ」で帰って来ました