毎週の出来事をお伝えします
電話室便り
THE GINGER-BREAD BOY
2009-05-08 / 音楽
2006年の夏のある日、何気なしに入った古本屋で、ぐるりぐるりと店内を
まわり、書棚を物色してみましたが、これといってピンとくる本がなくて、
でも、せっかく入ったのだから、なにか1冊でも、なーあいかなあー、と
さらにぐるぐるとしたところ、おやっ、これは?
茶色くなった背表紙を発見!
それが、この、『 しょうがパンぼうや 』 でした。
子供の頃から、男の子の型抜きをした生姜のクッキーなるものに、欧米文化を
感じ、憧れていたこともあり、ちょっとぼろぼろの表紙で、ちょっとシミもあった
けど、その日の その古本屋さんでの買い物を、この絵本にしました。
むかし、おじいさんとおばあさんが いました。
こどもが ひとりも いなかったので、
ふたりきりで ちいさないえに
すんでいました。
というはじまりで、
おばあさんが あるひ、しょうがパンでぼうやをつくってみようか・・・と
思いつきます。天火に入れたしょうがパンぼうやを、ほかの仕事に熱中していて
すっかり忘れ、あわてて天火にかけつけ戸を開けたとたん、焦げ付きかけたパン
ぼうやが、とびあがり逃げ出します!
「 おまちー! おまちよ、パンぼうや! 」
「 はしれ! はしれ! はしれ!
つかまえてごらん、できるなら!
つかまったりするもんか!
ぼくは パンぼうや、
パンぼうやさまだい! 」
パンぼうやの逃げ足の速いこと!! このあと、牛、馬、お百姓たち、牛飼いたち
が追いかけますが、まったく追いつけません。
有頂天のパンぼうやさまでしたが、そこに、きつねがあらわれ、
言葉巧みなきつねに、とうとう パクッ、 パクリッ、パクッ 、、、、、、
ああ、すっかり食べられてしまう!! 、、、、という、お話。
繰り返し、繰り返し、で 追っ手が増えていくところまでは絵本の定石ですが、
最後、きつねに食われるところは、大きく開けたきつねの口からパンぼうやの
頭がわずかに見えていて、けっこうな衝撃!
でもそこが、幼児心にも興奮するらしく、この絵本は、ただ今 息子もなかなかに
気に入っている1冊です。
ポール・ガルドン 作/ 1976年版、とあり、この時点では重版がまだ出ていな
いので、これが初版のようです( 初版へのこだわりはまったくありませんが )。
ポール・ガルドン氏の絵がたいへん巧みなので、このパンぼうやの小憎らしくも
あわれなキャラクターがとてもよく表現されていて、大人も楽しい作品ですね。
ですが、今の私としましては、『 しょうがパンぼうや 』 といえば、
やはり、ジミー・ヒース作の、この曲、『 GINGER BREAD BOY 』。
マイルス・デイビスの 『 MILES SMILES 』 でのこの曲の演奏が素晴らしい。
その解釈、その展開は、この時期 ( ’60年代後半 )のマイルスと俊英バンド
メンバー達による、革新的で超絶的に美しい絶品、と思う。
とても好きです。 マイルス・デイビスがどんなにクソ野郎 ( 失礼! )であっ
ても、このような作品を出されたならば、もうなんにも言えずに頭を下げるだけ。
そして、もうひとつ ・・・・というか、もうひと演奏、もしくは、もうひと録音
は、デクスター・ゴードンの 『 HOMECOMING 』 の中の、この曲です。
マイルス版とはまるっきり違う、くらくらするよなノリのいい豪快な演奏は、
デクスター・ゴードン節、とでもいう感じで、心沸き立つ感じ!!
なんてったって、掛け合う相手が、我が敬愛のウッディー・ショウですもの、
そのソロの素晴らしさは言うまでもなく。
『 HOMECOMING 』 は、活動の拠点をヨーロッパに移していたデキスター・ゴード
ンが、いよいよニューヨークに戻ってきた、その おかえりなさいライブの版で、
おやっ、時は何と、絵本と同じ1976年ですよ!
場所は N.Y.といえば、やはり ヴィレッジヴァンガード。
デクスター・ゴードン ( tenor sax )、ウッディー・ショウ ( trumpet、flue-
-gelhorn )、ロニー・マシュウズ ( piano )、スッタッフォード・ジェームス
( bass )、ルイス・ヘイズ ( drums )、というメンバー。
デクスター・ゴードンのサイドメンバーに二流がつくはずもないわけですが、
なかでも、ピアノのロニー・マシュウズが、とってもいいんです。
うまいっ!、もう、がんがん弾きまくっていて、いいピアノですー!!
この1曲は、必ず、ボリウム増大。ロックみたいに聴く。効きます( 何に? )。
ジャズの場合は、同じ曲での ” 聴き比べ ” というのが楽しさの1つなわけです
が、『 GINGER BREAD BOY 』 は、この2枚のほかには、作曲者本人の演奏を
ずーっと前にジャズ喫茶で聴いたのでしたが、どんな演奏だったか全く覚えていな
いです。印象薄かったのねー。
今回は、絵本版まで巻き込んでのご紹介に発展してしまいました。
” しょうがパンぼうや ” の魅力、ますます、です。
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