毎週の出来事をお伝えします
電話室便り
ゴンゾウラ写真館
2020-09-30 / 本
シミー書房の 『 しらくも村のおはなし 』は、今のところ全5巻。
各巻は見事に完成された素晴らしい物語の三冊組で、函に入っています。
その中でも、私が三重に好きなのが 『 ゴンゾウラ写真館 』 という一冊 。
「 これはある薄曇りの春の日に、写真館を訪れた養蜂家と
その妻のおはなし。」
なのですが、
三重に好きな、まず一重目は、
養蜂家とその妻の、とてもいきあたりばったりなところ。
養蜂家・パンツラ氏の人生がまずはかなりいきあたりばったり人生なんですが
( その流れは 『 ウロホテル 』 や 『 しらくも村にくらして 』 や、別シリーズの
『 紙魚豆コレクション 』 にて読める ) 、” いきあたりばったり ” は、主体のない
受け身などではなく、頭で計画した通りにやるんじゃなくて、感覚!なんです。
ピピッと感覚アンテナが動いたら、素直にそのアンテナの反応した方へとよろけていく。
なので、最初頭で計画をたてたとしても ( コレコレが必要だから、ナニナニじゃ
ないと不便するから、そうすべきだから、e.t.c. ) 、感覚アンテナが反応してしまった
なら、自動的に一切は白紙化され、思いもしなかった事態や出会いを繰り広げ・・・・。
一見ふらふら。何をしたいのかな? と人は思うかもしれないですが、本人もはっきり
判っているのではない。でも、感覚アンテナは何よりも信頼できる!ということを
このお話しは伝えてくれるのです ( しらくも村のおはなしは、全部そうですね )。
そこが、好き・共感の理由の一重目。
養蜂家とその妻は、ある薄曇りの春の日に、山を下りてきて、しらくも商店街で
生活必需品を、しかも二人の新しい生活の必需品を、ですよ!を揃える予定だった。
なのに二人して商店街の片隅でひらかれていた蚤の市に釘付けになってしまって、
全くぜんぜんちっとも必需じゃない品々でリュックを満タンにしちゃうのです。
なんといういきあたりばったりぶりでしょうか!
( その、ある意味奢侈品のセレクトぶりがニヤリです )
そしてその結果・・・・は、読んでのお楽しみですね。
二重目は、ゴンゾウラ写真館のゴンゾウラ氏の人生。
「 ゴンゾウラ氏はもう60年近く、この場所で写真館を営ん
でいる。庭と写真・・・・彼の人生はこのふたつにつきる。そし
て、このふたつが何と多くの人々の人生に寄り添い、幸せを
生み出してきたことだろう。 」
ゴンゾウラ写真館がどのような写真館かは、やはりここでは説明しないでおきたい
のです、だって素晴らしくて。このようにブログなんかで知ってしまうのは本当に
もったいないからね。
60年にわたる写真館運営と写真撮影の日々が、氏の静かで豊かな人生そのもので、
そのような 、あれもこれもではない、これだけでいいと言い切れる対象と共にある
人生に強烈に憧れ続けてきたわたしにとって、ゴンゾウラ氏と写真館に深い感動と
共感を覚えずにはいられないのです。
そして、三重目。
養蜂家とその妻の、しみじみとしたディスタンスです。
大きな樹の下へ運ばれたベンチに座る二人の後ろ姿、ページをめくると正面姿。
くっつくんじゃないのです。離れて、でもないです。
自然に、無意識に並んで座ってこの程の良さ、あっさり感。
そうですね、淡々としているような、何も考えていないような、でもなんだか信頼
しあっている見えない繋がりが判るんです、何となくね。
この、なんとはなしの幸せの、その尊さ・・・・。
このおはなしは、
『 農夫イシコロ 』
この巻に入っています。
読書の秋です。ぜひお手にとって、ご自分で読んでみてください。
深まる秋に、とてもおすすめですからね。
もうすぐ始まります!
「 シミー書房の いってんものてん 」
シミー書房の世界を満喫できます。お楽しみに!
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