レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ポンパドゥール登場のマンガ2本

2012-08-19 05:44:58 | マンガ
 今月、『かの名はポンパドール』2巻と『ロココの冠』が続けて出た。(前者の1巻と、『ロココの冠』とは明らかに同じ肖像画をモデルにしている。) 前者は青年誌(「ジャンプ改」ってそうだよね?)、後者は少女誌の掲載なので、同じ棚に並ばないけど、購入者が重なることはあるはずだ。
 前者は、絵・紅林直、佐藤賢一原作(まだ単行本になってないだろう)。ところどころのコラムも重要。ディドロやルソーとも親交があり、芝居の上演でも成功したりするポンパドゥールの才女としての活躍がぞんぶんに描かれる。生々しくない程度にベッドシーンがわりに出てくるのは青年誌だからなのかサトケンだからなのか。絵はさほど美麗というタイプではないけど。
 レディコミの読み切りでは何度も取り上げられているポンパドゥールが、初の長編マンガでの主役、それが男ものマンガであるあたりはかなり意外な気がする。(藤本ひとみ原作でレディコミならば驚かないけど。官能路線でいくならば魔木子さんあたりか?)
 モールパ伯や王太子のように、ヒロインに敵対する人々にもそれなりの立場を与えて描いているのはプラスポイント。
 「私は父上のような屈強な体も不貞な下半身もいりません なれど・・・知恵と野心で父上を超えてみせますよ」との、ちょっと笑えるけど殊勝な心がけ、でもこの王太子が王位につくことはなかったと知る読者としては痛々しい。
 
名香智子『ロココの冠』
 『山猫天使』に始まったブルボン王朝シリーズは4冊目のこれで終わりということだ。
 そもそもメインには架空キャラたちが据えられていた。長いこと女装で活動していたラファエルが相愛になったマリー・レクザンスカは、少年王ルイ15世の妃になり、ラファエルはしばらくアメリカへ行っていた。帰国した彼は、抑制した態度でマリーのために奔走し、王妃を傷つけないためにこそ、聡明なレネット(のちのポンパドゥール)を公式愛妾にしてゆく。
 うんと有名人以外は実在架空をあまり意識しないで読んでいたけど、上記サトケン原作と並行してみると、史実との組み合わせがいっそう興味深い。15世の側近の一人リシュリュー公は「王に劣らず容姿端麗」とコラムに書かれており、名香さんのバージョンだとそれがビジュアルでわかる、ただし、「少女マンガだから美形化はありがち」という保留をつける読者にとっては、コラムでの説明で、では信用していいのかと安心する。
 「鹿の苑」は、ほかの家来が勧めたことになっていて、ポンパドゥールは単にほうっておいただけに描かれている。このへんはサトケンはどうするのだろう。
 華麗な絵と力量を兼ね備えた名香さんには、また西洋コスプレを描いてもらいたいのものである。
 それにしても、ルイ15世がキラキラの美少年→美青年である。『ベルばら』しか知らないでいきなりこのマンガを目にした読者は仰天するだろう。
コメント (4)
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