レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

巻数とタイトル

2011-02-08 14:52:57 | 
 高校時代、武者小路実篤を多数読んだ。武者には「山谷五兵衛もの」と言われる作品群があり、暇人とその友人である書家や画家などの交流の日々を扱っている。現代ならばシリーズと言われるだろう。
 同じ人々が登場する作品群をまとめて「○○シリーズ」という場合、その○○は作品タイトルにはなっていないほうが私にはしっくりくる。
 『エロイカより愛をこめて』の場合、これを「エロイカシリーズ」と言われることに私は抵抗がある。実際に『エロイカより~』の題が表に立っているので、「シリーズ」などと言わないで、単に『エロイカ』でいいではないか(『エロ愛』なんて呼び方には断固反対!ウィキペディアにまでそう書いてあるとはけしからん)。しかし、コミックスの奥付には『エロイカより愛をこめて・シリーズ」と書いてある。長編にはみんなそうしているだけなのだろうが。
 佐々木倫子作品でも、人の顔を名前を覚えられない少年黒田勝久の話は「忘却シリース」であり、就職浪人と美大生の姉妹の話は「雁子&鴫子シリーズ」、それぞれ、『忘却』、『雁子&鴫子』なんて題のマンガがあるわけではない。『ペパミント・スパイ』は、これが通しタイトルになっていて、各話は「○○編」と添えて区別している。わざわざ『ペパミント・スパイ』シリーズなどと呼ぶ必要はない。

 本の一覧でしばしば感じる目ざわりなことーーもう終わっていて続きが出るはずないのに、「全○巻」ではないこと。『坂の上の雲』1~8 とか、『風と共に去りぬ』1~5 とか。
 その逆に、「全1巻」といちいち書いてあるのもなんだかうっとうしい。巻数が書いてなければ全1巻と読者は判断するという前提でいいのではないか?--もっとも、続きがあるべき内容なのにそれっきりということも少なくないのも事実。しかし、そういう意味があって区別しているとはまず思えない。
 作者は続かせたい意欲があるけど、反響がなければこのままなので、最初の巻には「1」も、エピソードタイトルもつけず、めでたく続いたらそこから「2」とか、添え題がつくということは多い。そういう統一のなさはたいへんみっともないと私は思う。
 『天上の愛 地上の恋』は、打ち切りにあったときには単行本はただ『天上の愛 地上の恋』だった(尻切れトンボもいいとこの終わり方で)。その後めでたく再開が決まり、同人誌として発表していたぶんが一気に2巻3巻4巻として出たあたりから、そのまえのぶんに「1」とつくようになった。巻数なしのぶんはそれなりに貴重になったのだろうか。
 『炎の蜃気楼』は、最初の巻は単に『炎の蜃気楼』であり、その次巻は『緋の残影  炎の蜃気楼②』となった。
 『マリア様がみてる』の場合は、2巻目からは『マリア様がみてる』に添え題がつくようになった。この作家、「巻数がつくとごちゃごちゃする」という考えで、巻数がない。しかし、明らかに話に流れがあるのだからつけておいてもらいたいと私は思う。

 ところで、ここで「添え題」などと書いているものを、通常は「サブタイトル」と言っていることが多い。
 ウィキペディアには、
「サブタイトル (subtitle) は、本、映像作品、音楽作品などにつけられる、説明的な、もしくは代替的なタイトル(題)である。副題に同じ。
目的には、テーマを匂わせる、購買意欲を沸かせる、シリーズ内での位置づけを明確にする、既存のタイトルと同名になることを防ぐなどがある。」

 (しかし、英語のサブタイトルって本来は字幕を指すという。)テレビドラマなどでの各回の題はエピソードタイトルというらしい。ちょっと長いな。すでにエピタイなんて略語ができているのだろうか。
 上記の説明の例としては、『クレオパトラの時代  ローマ共和制の崩壊』  『ウィリアム・テル伝説  ある英雄の虚実』  主要題がムード優先で内容がわかりにくいので副題で説明を、あるいはその逆とか。『呪縛の宴  ドイツ運命劇集』 『月下の幻視者  ドイツ・ロマン派短編集』
 あ、類似品や同じ題のものと区別するためといえば、「ナポレオン」とか「クレオパトラ」のように、ネームバリューがあって何度も本・映画のタネにされるものの場合に必要だろう。 しかし実際のところ、上手な副題で区別した映画の例を私はただちに挙げられない。愚劣な手抜き題ならば多いけど。 原題が『ヘレン・オブ・トロイ』である映画は少なくとも二つあるが、一方は(日本公開時は『トロイのヘレン』)今日のDVDでは『ヘレン・オブ・トロイ』。もう一つが『トロイ ザ・ウォー』、・・・あ~言いにくい、腹立たしい。
コメント
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