レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

タヌキ一家、後妻偏見、理不尽な恨み

2010-09-20 10:38:32 | 
 先月読んだものから三つ。

森見登美彦『有頂天家族』
 京都を舞台に、タヌキと天狗とヒトが入り乱れて駆け引きを繰り広げる。語り手「私」は由緒あるタヌキの一族の者で、叔父一味と対立関係にある。ひきこもりが過ぎて井戸の中のカエルになってしまった次兄だの、宝塚の男役ふうに化けることの好きな母だの、峰不二子並みにえたいのしれない美女「弁天」だの、ヘンな奴てんこもり。
 タヌキのくせに「母上」という呼び方がなんだかかわいい。

田辺聖子『ここだけの女の話』
 平凡な人やダメな人たちの、滑稽でちょっとほのぼのが基本の短編集。
ーーであるが、表題作だけは胸糞悪いのだ。語り手は団地の主婦。人の隠したがることをかぎつけてきては「jここだけの話」と言いながら触れまわる連中である。
 悪口を言うなと主張するつもりはあまりないけれど、--「後妻」であることを劣ったことのように決めつけている態度は許しがたいと思った。初婚同士であることや、子供が実子であることがそんなに偉いかっ! この本はまえにも読んだことがあるけど、当時よりもこの件に対する怒りは強くなっている。  たいへんリアリティがあることは間違いない。作者自身がそういう偏見に与しているはずはないのだけど。

『小泉八雲集』
 新潮文庫の「おとなの時間」で先月出ていた。去年の夏の角川文庫フェアで『怪談』が出ていたのを買って読んだし、今回のもだいぶ重複はある。こういうのが出るのも夏だからだろう。
 『守られた約束』と『破られた約束』が並べてある。前者は『菊花の約』。後者は、死んでいく妻に対して再婚しないと約束した武士がやはり 後添いを迎えてしまい、後妻が亡妻に呪い殺される話。--どうせなら夫のほうにしておけよ、と思うのは男の感じ方だとこの話の末尾に加えてあるが、私自身は納得できない。
 (『不如帰』の浪子が姑を呪い殺すのだったら快哉を叫ぶけどな!)
 それにしても、守られた約束が男と男で、破られたほうが男女かい・・・。
コメント
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