
CSSを眼視で観望できたのは10月8日の18時30分を過ぎたころ…




はてさて、ドッキングしただけで中国宇宙ステーションの輝きを40倍も明るくさせた科学実験モジュール(問天)とはいったいどのようなものなのか? 興味がわいたので深掘りしてみた。

問天は全長約18mの科学実験モジュールだが、天和ドッキングポートにあるエアロックよりかなり広めの船外活動用エアロックや天和コアモジュールのバックアップ機能(ナビゲーションアビオニクスや推進装置)なども備えている機能満載の宇宙船だ。
おもな装備品は図のとおりだがひとつISSには無い装備品があるので注目したい。その名はインデックスロボットアーム。ドッキングポートに装備されている再ドッキング自動システムだ。

これは何をするものかというと、進行方向前方にドッキングした問天を右舷ポートに引っ越しさせるためのマジックハンドのような働きをする装置だ。
↓ 2022年7月時点での中国宇宙ステーション(7月24日ドッキング完了)

↓ 2022年10月現在の中国宇宙ステーション(9月30日に引っ越しました~)

再ドッキングはクルードラゴンでもソユーズでもISSを離れたあとにスラスターを噴射させて再ドックするものだがこの装置はスラスターを噴射させることなく、少々乱暴な言い方で表現するとロボットアームでモジュールを引っこ抜いて別のポートに差し込むというやり方である。
9月30日に行われた再ドッキングの様子

↑ 左が問天、右が天和ドッキングポート

↑ 左に見えるのが6月5日にドッキングした有人宇宙船神舟14号、右が問天
さて、この聞き慣れないインデックスロボットアーム(再ドッキング自動システム)だが、これはミール宇宙ステーションで使用されたリアッパアームを元にしていると考えられる。↓

ミールの建造ではクバント2、クリスタル、スペクトル、プリロダの各モジュールにリアッパアームと呼ばれる再ドッキング自動システムを装備して、ミールコアモジュールの前方(軸方向)ポートにドッキングしたモジュールをこのアームで持ち上げて各ポートへと移動させた。

↑ クバント2のポート移動(再ドッキング)の様子
さて、話を中国宇宙ステーションに戻そう。中国宇宙ステーションは今後、左舷ポートに2つめの科学実験モジュール(夢天・Mengtian)をドッキングさせてとりあえずの完成となる。(最終的にはCSS近傍に宇宙望遠鏡を配置する計画があるのでそれをもってシステム完了となる予定だ)

直近の情報によると夢天を打上げる長征5号ロケット(CZ5B)は10月31日にリフトオフするようだ。ローンチウインドウは10/31~11/5で時刻はいずれも06:00~12:00(UTC)となっている。問天と同じように最初は天和前方モジュールにドックさせてのちに左舷ポートへと再ドックする。
夢天を打上げるロケットは長征5号(CZ5B)なので、制御装置を装備していなければ、またしても「どこに落下するのか問題」が勃発しそうだ。そうならないことを切に願う。
無人貨物宇宙船天州5号(Tianzhou-5)は11月6日に、有人宇宙船神舟15号(Shenzhou-15)は11月26日にリフトオフする予定となっている。
中国宇宙ステーションの詳しい解説,ありがとうございます。図を見ると,だいたい2倍に本体が増設されたようなので,明るくなるわけですね。それにしても-1.9等とは,見るのが楽しみです。晴れスターさんの撮影も楽しみですね!
中国は,月の裏面に探査機を下ろしたり宇宙開発が盛んですが,どうも軍事的なにおいを感じていました。しかし今回の記事で,宇宙望遠鏡を設置するというのは(まぁ国威発揚もあるのでしょうが)単純に嬉しく思いました。宇宙望遠鏡を装った対衛星兵器だったり地上のスパイ活動に使ったりなんてことではありませんように。(笑)
「宇宙強国」を掲げる中国は2020年に月サンプルリターンを成功させて2021年には火星にローバーを着陸させるなど米露と肩を並べる勢いで宇宙開発を進めていますね。純粋に科学的な成果も挙げてはいますが宇宙における覇権争いもやってますよ感は否めないかなぁ~なんて思ったりもしています。
日本の自衛隊も2020年に「宇宙作戦隊」を発足してますので悲しいですが今や国防上の宇宙利用は必須の世界になってしまったようですね。表の世界に現われない宇宙開発はどの程度進んでいるのかは、知りたいような知りたくないような…といったところですね。