ふと思い出したことがある。
その人は、我が子を幼くして失った。
悲しみのどん底にいる彼女に、
ある人は、先祖に罪人がいるからだと言い、
ある人は、過去の宿業だと言い、
ある人は、また子供を産めばいいと言った。
そして、互いに互いの言葉を責め合い、
塗炭の悲しみに喘ぐ彼女は置き去りにされた。
それでも、それぞれの人の言葉が、匕首を
突き立てられ、揉まれる様に感じた彼女は、
お祓いを受け、家系のルーツを出来得る限り
遡って、罪を犯した者がいないか調べ上げた。
結局、その作業に夢中になっている束の間、
少し悲しみから逃れることはできたが、
悲嘆に疲労困憊を上乗せしたにすぎなかった。
身も心も疲れ果て、我が子のもとへ行こう
ということしか頭に浮かばない中、
その子を可愛がってくれていたご近所さんが
弔問に訪れた。
長い、長い祈りの中、その人は嗚咽こそ
洩らさなかったが、ポロポロと涙していた。
そして、独り言のように口にしたのは、
その子はあまりにも綺麗で純粋な心を持って
いたので、穢れたこの世界では、生きては
いけなかったのかもしれないということだった。
彼女は、まるで自分の子を失ったかのような
そのご近所さんの祈りと涙に、そして、
その独り言に、初めて救われたような気がした。
端的に言えば、この世界で、今を生きる者が
一番大切なのである。
葬儀も、法要も、供養も回向も墓参りも、
それを執り行うのは生きている者である。
それは、故人の為ではなく、今を生きる者の為に
行うのである。
互いに、今を生きる者として、互いを置き去りに
してはならないと思うのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/90/333a0c66e0788ff07b5c660669202d4c.png)
その人は、我が子を幼くして失った。
悲しみのどん底にいる彼女に、
ある人は、先祖に罪人がいるからだと言い、
ある人は、過去の宿業だと言い、
ある人は、また子供を産めばいいと言った。
そして、互いに互いの言葉を責め合い、
塗炭の悲しみに喘ぐ彼女は置き去りにされた。
それでも、それぞれの人の言葉が、匕首を
突き立てられ、揉まれる様に感じた彼女は、
お祓いを受け、家系のルーツを出来得る限り
遡って、罪を犯した者がいないか調べ上げた。
結局、その作業に夢中になっている束の間、
少し悲しみから逃れることはできたが、
悲嘆に疲労困憊を上乗せしたにすぎなかった。
身も心も疲れ果て、我が子のもとへ行こう
ということしか頭に浮かばない中、
その子を可愛がってくれていたご近所さんが
弔問に訪れた。
長い、長い祈りの中、その人は嗚咽こそ
洩らさなかったが、ポロポロと涙していた。
そして、独り言のように口にしたのは、
その子はあまりにも綺麗で純粋な心を持って
いたので、穢れたこの世界では、生きては
いけなかったのかもしれないということだった。
彼女は、まるで自分の子を失ったかのような
そのご近所さんの祈りと涙に、そして、
その独り言に、初めて救われたような気がした。
端的に言えば、この世界で、今を生きる者が
一番大切なのである。
葬儀も、法要も、供養も回向も墓参りも、
それを執り行うのは生きている者である。
それは、故人の為ではなく、今を生きる者の為に
行うのである。
互いに、今を生きる者として、互いを置き去りに
してはならないと思うのである。
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