宮城県北の広大な穀倉地帯に生まれたオラは、物心がついた頃には近くの竹薮から切り出した竹竿を担いで、すぐ裏手の江合川でフナを釣っていました。
当時は戦後の食糧難の時代、秋のイナゴ捕りと共に、あたり前のように家族のための蛋白源確保の一端を担っていたわけです。
2度大きな水害にも遭遇した江合川ですが、マブナやコイ、ウナギやナマズ、ハヤやドジョウやザリガニなど獲物は豊富だったことを記憶しています。
その当時も、ある場所には天然アユが着いていたとは思われますが、幼かったオラは勿論、大人たちもそれを獲って食料にしたと言う記憶はありません。
親父の仕事の関係である日突然、地平の彼方まで田圃が広がる明るく開けた生まれ故郷から、三方を高い山に囲まれ昼尚暗き閉鎖空間の釜石に引越しすることになりました。
ここでも直ぐ裏手には甲子川の清流、しかしこの地でのオラの獲物の主たるものは、コイ科からサケ科へと劇的に変化したのです。
のんびりした小ブナ釣りとは違って、スピード感のあるサカナに翻弄されながらも、新しく出来た仲間たちと共に山野を駆け巡ったのでした。
昭和26年、現在の国道283号線沿いに、製鉄所と鉱山との間を軽便鉄道が盛んに走っていた頃のことです。
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