つい1ヶ月ほど前には15センチの積雪があった。
しかしいきなり気温の上がった今日は県内各所で夏日を観測、沿岸の一部では真夏日も観測された。
暦はまだ4月なのに、北国の春はEHATOVの郷を足早に通り過ぎようとしている。
高地の遅咲きの桜も開花から2日目には満開を迎える異常事態である。
この異常な暖かさが、あと2か月後に迫ったアユ解禁の頃に、寒い夏となってしまう反動が最も恐ろしい。
米代川河口からは順調な天然遡上が始まったと言う情報が届く。
今年の遡上量はおそらく昨年を遥かに上回ると予想するが、その後の成育が心配でたまらないオラである。
遥か彼方まで広がる春の田園地帯。
その向う地平の果てには純白の雪を頂く栗駒の山々が連なっている。
オラの幼少期を過ごした宮城県北大崎平野のど真ん中。
しかしそこは、昔懐かしい茅葺き農家は姿を消しのどかな景観は一変した。
広く整備された道、激しく往来するクルマの流れ、綺麗に区画整理された水田、高くしっかりとした堤防や橋梁、近代的な建築物、働き手を求めて進出してきた企業の建物も建ち並ぶ光景に変わったが、川の流れだけは昔の面影をとどめていた。
目をつむると夕餉の煙たなびく温かな暮らしと懐かしい人々の笑顔が、風呂を立てる亜炭の燃える匂いとともに脳裏に蘇ってきた。
それは生涯忘れることのないオラの原風景なのである。
この3年の間に訪れた身内7人目の別れの時。
オラの心の中のともしびがまた一つ消えた。
最も辛く悲しい葬送の一日であった。
全てのことが終わり、夕焼けの空の方向を目指して帰途についたのであった。