あの日と同じ小雪舞う北東北、名刹中尊寺本堂から聞こえてくる読経。
14:46、抹香の煙りたなびく中に、厳かに響く鎮魂の鐘の音。
参拝客は雪融けでぬかるんだ境内に暫し足を止め、深く頭を垂れ黙祷を捧げたのでした。
未だ行方知れずの近親者を想うオラも、流れ出る涙を拭いもせず、この荘厳かつ清らかな雰囲気の中に、ゆったり身を任せたのでありました。
この日、多くの津波犠牲者の為に、何処で鎮魂の祈りを捧げるべきか思案したオラ。
中尊寺を選んだのは我ながら上出来ではありました。
月見坂のうっそうたる杉巨木、能楽堂に至る手入れの行き届いた竹林、一帯に点在する由緒あるお堂、彼方に望む束稲山の雪の大文字、一帯に感じる心地よい霊気に浸るひと時でした。
久しぶりに訪れた古都平泉は、近頃歪みっぱなしだったオラの精神をも確実に落ち着かせてくれたのです。