goo

こころの除染という虚構 43

心の除染という虚構

43

 説明会はすでに、その役割を終えたのも同然だった。これで住民は市の考えを受け入れ、市は住民の同意を得たことになった。元霊山町議であり、伊達市になってからも市議を務め、地元住民からの信頼が厚い、大波栄之助(当時78歳)はこの流れに非常に驚いた。

思わず、大波は声を上げた。「なんですか?両区民会長、あんたら二人だけで決めたように聞こえっぺ。ふざけんな!」

 

大波は後にこう振り返る。

「おらびっくらこいた。両区民会長、大賛成と言うから。“シャンシャン”になりそうで。集まっているのは年寄りばっかりだから」議事録には、大波の発言が記録されている。

 

Q(上小国・大波栄之助さん)市の意向として、自主避難をさせたいと言っているように聞こえるが、この説明会だけで、住民の理解を得たと、市長は判断するのか?

 A(市長)この会だけで結論を出すと言った訳ではない。今日、説明会ですから、市の考え方と皆さんの考え方を伺って行って、最終的に市としても決定したい。

 Q(上小国・大波栄之助さん)今日の参加者を見ると、小さい子供や小中学生を持つ父兄がいないように見えます。子どもを持つ父兄が一番心配している。こうゆうことを決める場合は、若い方々の意向に十分配慮してやって頂けないと困る。

是非アンケートなどの地区の全員の意見を掌握した上で、自主避難等をやって頂きたい。

 A(市長)アンケートで皆さんの意向を伺う。多数決で決めるのもやぶさかでない。

 

この会合には早瀬道子の夫、和彦も実は出席していた。山下行政区の班長だった彼は唯一、就学前の子を持つ親の参加者となった。

会合から帰った和彦はこう言った。

アンケートを取ると市長は言ったからな。アンケートで、子どもを持つ親の気持ちもちゃんと聞くと

高橋佐枝子の夫、徹郎もこの会に潜り込んでいた。

「市長も来ていて『子どもさんがいる世帯は優先して指定しますから』って言うんで『おらい(私の家)は指定される』って、ほっとして帰ってきた。下は中学生だけれど、あの時は小学生だったんだから。アンケートもやるって言うし」

しかし、このアンケートはついに一切行われることはなかった。続く

 

 

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )