yoshのブログ

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「金州城下の作」 宇田博氏の批判

2024-02-15 06:16:03 | 文学
乃木将軍作の 「金州城下の作」という有名な漢詩があります。
 満州(中国東北部)ゆかりの反骨の自由人、宇田博氏。氏は「北帰行」の作者で1995年に逝去。宇田氏は「金州城外の作」を嫌っており、著書の中で批判しています。不肖にも参考になりましたので下記に紹介します。

私が乃木ぎらいになるきっかけになった漢詩がある。

山川草木転(うた)タ荒涼
十里風腥(なまぐさ)シ新戦場
征馬前(すす)マズ人語ラズ
金州城外斜陽ニ立ツ

漢文をならった戦前の学生ならば、たいてい一度は、読まされた記憶があるだろう。じつは、この詩のむすびの一行は、最初、
金州城外夕陽(せきよう)蒼(あお)シ
となっていた。それをあとになって乃木は「立斜陽」になおしたのである。
両方とも似ているようで、中身はぜんぜんちがっている。はじめの句は第三節までと同じく叙景詩である。
草も木も荒れ果てていて、風は死臭をふくんでなまぐさい。馬の足ど
りはおもく、将兵はもくもくと歩いていく。金州城外の夕日はあおざめている。
これならすなおにうけとれる。しかし、「斜陽に立つ」というと、まったくちがう。感慨無量の思い入れで立っているのは、乃木自身であり、その悲壮な姿を見ているのも、乃木である。乃木という人は、悲壮なことが、ひどく好きだったらしい。つねに、軍服に威儀をただし、自分を悲劇の主人公にして、哀切な気分をあじわっている。第四節の修正には、かれのそんな気質が、種明かしされていると思った。

乃木将軍の気質について、司馬遼太郎も宇田博氏と類似した観察をしていたことを読んだ記憶が不肖にもあります。

  
宇田博 「大連・旅順はいま」六法出版社

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