盛唐の詩人、李白の七言絶句です。
望慮山瀑布
日照香炉生紫煙
遥看瀑布挂長川
飛流直下三千尺
疑是銀河落九天
日ハ香炉ヲ照ラシテ紫煙ヲ生ズ
遥カニ看(み)ル瀑布ノ長川ニ挂(か)クルヲ
飛流直下三千尺
疑フラクハ是レ銀河ノ九天ヨリ落ツルカト
「訳」
陽の光が香炉峰を照らして、峰は紫にけぶっている。
はるか彼方に、大きな滝か長い川をたてかけたように流れ落ちているのが見える。
飛ぶようなその滝の勢いは、まっすぐに三千尺も流れおちる。
まるで銀河が天空から流れ落ちるのではないかと思われるばかりである。
「鑑賞」
慮山は、江西省、九江市の西南、は鄱陽湖と長江のほとりにそびえる。峰や滝にめぐまれる
名山で香炉峰はその峰のひとつ。ここもまた多くの詩人に親しまれているが、李白らしくダイナミックにうたいあげたのがこの作である。
起・承の前半の二句で瀑布を遠望し、「香炉」と「煙」の縁語によって慮山の美と奥深さを描き出し、転・結の後半の二句では瀑布そのものに焦点を合わせて、躍動感と着想の奇抜さを発揮している。「三千尺」の滝などあろうはずはないが、銀河が天から直下するかのような豪快な滝の表現にはぴたりの詩想である。「李絶杜律」と李白は絶句、杜甫は律詩)と称せられるように、壮大にして迫力十分な李白の代表作といえよう。
「白髪三千丈」とか「銀河が九天から落つる」とか、誇大表現もここまで来ると、もはや恐れ入るほかありません。
石川忠久「NHK 漢詩紀行」 日本放送出版協会
望慮山瀑布
日照香炉生紫煙
遥看瀑布挂長川
飛流直下三千尺
疑是銀河落九天
日ハ香炉ヲ照ラシテ紫煙ヲ生ズ
遥カニ看(み)ル瀑布ノ長川ニ挂(か)クルヲ
飛流直下三千尺
疑フラクハ是レ銀河ノ九天ヨリ落ツルカト
「訳」
陽の光が香炉峰を照らして、峰は紫にけぶっている。
はるか彼方に、大きな滝か長い川をたてかけたように流れ落ちているのが見える。
飛ぶようなその滝の勢いは、まっすぐに三千尺も流れおちる。
まるで銀河が天空から流れ落ちるのではないかと思われるばかりである。
「鑑賞」
慮山は、江西省、九江市の西南、は鄱陽湖と長江のほとりにそびえる。峰や滝にめぐまれる
名山で香炉峰はその峰のひとつ。ここもまた多くの詩人に親しまれているが、李白らしくダイナミックにうたいあげたのがこの作である。
起・承の前半の二句で瀑布を遠望し、「香炉」と「煙」の縁語によって慮山の美と奥深さを描き出し、転・結の後半の二句では瀑布そのものに焦点を合わせて、躍動感と着想の奇抜さを発揮している。「三千尺」の滝などあろうはずはないが、銀河が天から直下するかのような豪快な滝の表現にはぴたりの詩想である。「李絶杜律」と李白は絶句、杜甫は律詩)と称せられるように、壮大にして迫力十分な李白の代表作といえよう。
「白髪三千丈」とか「銀河が九天から落つる」とか、誇大表現もここまで来ると、もはや恐れ入るほかありません。
石川忠久「NHK 漢詩紀行」 日本放送出版協会