山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

銅街道を知る

2010-06-24 05:36:11 | くるま旅くらしの話

これも先日沢入キャンプ場付近の早朝散策の時の話です。キャンプ場の入口を出て沢入駅に向かう途中の小さな集落の道端に、「銅街道」という標識があるのに気づきました。そこは民家の前の細道で、急な坂道になっていました。その坂を下ると、キャンプ場の方への近道をなるようです。その細道は、特段変わったところなどないようでしたが、石が敷き詰めてあり、これは舗装するよりも滑り止めには好都合との考えからなのかと思いました。

   

旧東村教育委員会が設置した銅街道の標示碑。坂道の入口にポツんと建っていたが、一見するには何の変哲もない細道だった。

銅街道というのを耳にするのは初めてでしたが、そういえばここは足尾の直ぐ近くでしたし、渡良瀬川といえば、鉱毒事件で有名な所です。この環境汚染問題に、生命をかけて取り組んだ政治家田中正造の話はあまりにも有名です。そうか、その昔、足尾で生産された銅を運ぶ道が銅街道と呼ばれていたのかと気づきました。最初は銅という字を文字通り「どう」と呼んでいましたが、坂を少し下った所にある説明板を読み、これは「どう」ではなく「あかがね」と読むのだと気がつき、ちょっぴり恥ずかしくなりました。江戸時代では銅を「どう」などとは呼ばず、「あかがね」と呼んでいたことは当たり前のことであり、今でも銅をあかがねと呼んでいる人も結構おられるのではないかと思います。

その説明板によりますと、足尾で生産された銅は、御用銅と呼ばれ、江戸の浅草にあった御用銅蔵まで運ばれていたということです。このルートとして、足尾から陸路を利根川の前島河岸(現太田市)まで運び、そこから船に積んで川を下り、江戸川に入って浅草で陸揚げされ、蔵に収まったということです。この陸路は、銅街道と呼ばれ、沢入、花輪、大間々、藪塚、尾島町亀岡の5宿が設けられて、全長58kmを、宿から宿へは夫々凡そ1日かけて、馬1頭に銅90kgを積んで、100頭の馬で運んだと書かれていました。この小さな坂が往時の名残りを止めており、馬で重い荷を運ぶため、足元に穴が開いたりしないように、しっかりと石を敷き詰めて坂道を整備したとのことでした。

   

銅街道の坂道の様子。これは坂を見下ろす写真であるが、道には馬が通っても穴ぼこができないように、大小の石が敷き詰められている。この坂道を100頭の馬が通ってゆく景観は、周辺に住む人たちを元気づけたのであろうか。様々な想いが錯綜する。

なるほどなあと思いました。何も知らず通り抜けていたなら、このような歴史の重みにも気づかず、国道122号線が銅街道なのだなどと簡単に考えてしまったことだと思います。スピードを上げて車が走り回るような道が銅街道である筈がありません。それにしても100頭の馬が、鼻息を荒げながら細い坂道を上り、下りする景観はかなり迫力があるだろうなと、往時が偲ばれます。渡良瀬川に沿った細い道の幾つもの難所を越えて、ようやく沢入の宿場町に辿り着いた馬たちとその手綱を引く人たちの安堵感が伝わってくる感じがします。

石の敷き詰められた坂道は保存されていますが、そうではない古道は草木に埋もれ、もはや道ではなくなってしまっているのでありましょう。御用銅は慶安2年(1649年)から始まったとのことですから、僅か400年足らずの間に、このエリアは一大活況を呈したあと、多くの負の遺産を発生せしめて、今は静かに治まって元の姿に戻っているということなのでしょう。

銅街道の5宿について、いつの日かその名残りを訪ねてみたいなと思いました。ちょっぴりネットを覗いてみましたら、銅街道のことは結構たくさん掲載され、紹介されており、知らなかったのは自分ひとりだったような気になりました。陸路の終点となる前島河岸については、上州のやくざの代表人物である国定忠治との縁のある話も披露されており、こりゃあ結構面白いぞ!と思った次第です。

この頃思うのですが、旅の楽しみというのは、只もの珍しさを見聞するだけではなく、(その本質は変わらないとしても)出会いや気づきを拡幅させることに、より以上の面白さがあるような気がします。そして、そのように考えてみると、結局のところ歴史を訪ねるということに辿り着く感じがします。旅の中に未来を感ずることは少なく、過去の宝物を掘り起こすということの方が多いようです。勿論掘り起こした過去の感傷に浸るだけではなく、そこから未来に対する希望や反省をものにできることも、これ又大いなる喜びであり、楽しみなのです。

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