(つづき)
それらの施設を通り過ぎると、右手に大木の茂る小さな森があるのだが、この中に鶯と一緒に「オイシイヨ」と鳴く鳥が棲んでおり、通りかかると度々その玉を転がすような美声を聞かせてくれる。「オイシイヨ」と鳴くのは時々で、あとは切れ目なく玉ころがしの声を聞かせてくれるのだ。何という名の鳥なのか姿も見えず判らないのが残念だ。
「オイシイヨ」が鳴く森を超えて少し行くと、そこで堤防の側道は終わり、民家のエリアへと道は続く。この辺りの民家は古い家が多くて、中には大屋敷と思われる家もあるようだが、無住となっているものもあり、屋敷が蔓延る樹木や雑草に覆われているのを見ると、この町の世代交代というのか、断絶期にあるというのか、時代と現実がアンマッチな現象を強く感じたりする。守谷市は茨城県第1位の人口密度の高い市で、未だ人口は増加の傾向にあるけど、その内部では古い大きな家が寂れて消え去りつつあり、一方では大都会並に小さくて窮屈な新しい家がつくられ増加している。人間社会というのは、所詮ムダをつくりだすために営まれているのではないかと、時々思ったりする。絆の大切さは解っていても、家族においてさえも繋がりを保ち続けるのは難しい。古い集落を通りながらいつも感ずることである。
更に歩いて県立守谷高校の脇を通って新興住宅街へ。守谷高校はこの町唯一の高校だ。どんな特徴があるのかよく解らないけど、この高校が超有名な実績を持つのは、女子剣道部の存在のようだ。昨年の茨城ゆめ国体でも団体と個人で優勝しており、その他のインターハイでも何度か優勝や3位以内入賞の実績を誇っている。良き指導者に恵まれ、才能素質のある娘たちが集まって来ているのであろう。高校の窓や塀に掲げられている入賞等を讃える何枚もの垂れ幕を見ながら、若者たちの活躍を思ったりするのは楽しい。
県立守谷高校玄関わきの柵に掲げられた優勝を祝う横断幕。全国一というのは、文句なしの快挙だ。無名と思われているこの高校の存在を市民はもっともっと誇りに思わなければならないと思う。
新興住宅街は切り売りの土地にゆとりの少ない建物がずらりと並んで、やはり息苦しい感じは否めない。それにどの家にも複数台の車が収まっており、高級車も多い。自分の所も同じ様な新興住宅街にあり、同じパターンに収まっているのだけど、このような暮らしは、かつて望んでいたものとはかなり違うなと思うのは、田舎育ちの証なのかもしれない。現代人の暮らしは直線愛好の角の多い世界の中にいる感じがする。曲線の方が変幻自在のように思っているのだが、狭い庭には思う通りの樹木や野草を植える空間も心の余裕もない。皆同じように見える住宅街を通り抜けると、再び古い集落に入り、何軒かのお寺のような御殿を見ながら少し行くと、最近完成した鬼怒川の新しい堤防の道に出る。
今年の4月に完成して通れるようになった鬼怒川堤防の道。右手に見える赤い屋根の建物は、孫娘が通う幼稚園なのだが、昨年の大雨の時には堤防が未完成で、建物の半分が冠水した。
この辺りは常総市やつくばみらい市との境界近くとなっており、100mも歩かない内につくばみらい市となる。その場所に孫たちが通う幼稚園があるのだが、昨年の大雨時にはこの堤防がまだ出来上がっておらず、幼稚園の建物の一部が水に浸かってしまう被害を蒙ったのが記憶に新しい。でも今は、コンクリートの厚い壁で固めたこの新しい堤防が出来たので、これからはもう大丈夫だと思う。それにしても洪水というのは、真に恐ろしいものだ。大自然の溜まっていた怒りが一挙に吐き出され、濁流となって下流に押し寄せる。そのパワーは一時の人間の力などで間に合うものではない。昨年はそれを思い知らされたのだった。
新しい道は気持がいい。しかし、この道はたった数百メートルしかないのが残念だ。直ぐに終わって、そこからは一般道に入り、つくばみらい市の新興住宅街を通って自宅に向かい、30分ほど歩いて自宅に戻ることとなる。到着時刻は7時50分前後となる。万歩計は2万3千歩ほどとなっている。3時間20分ほどの歩きは、距離換算では14kmくらいであろうか。それほど疲れたとは思わないけど、多少足腰に負担が来ているのを感じているので、ま、これぐらいに止めておくのがベストなのではないか。
これがこのコースを歩く時の概要である。3月に入って以降、3日に1回の割合だから、毎月10回ほどこのコースを歩いている。景色を楽しみ、鳥たちの鳴き声を楽しみ、あらぬ空想に思いを馳せ、もの書きのテーマを思い浮かべたりして、飽きることはない。歩くことは単なる運動などではなく、考えることであり、時に観察者になり、時に科学者になったりして、生きているのを実感するのである。
今年の今日(6/5)までの歩きの実績は、万歩計で2,888,769歩。157日間での1日平均歩数が18,399歩となっている。凡そ1,600歩で1㎞という実績だから、毎日平均11kmと少しは歩いていることになる。万歩計の誤差は、長距離を歩くほど少なくなるので、この数値はそれほど実態から外れているとは思えない。ま、あまり歩き過ぎないように気をつけなければならないとは思っているのだが、コロナ禍が終るまでは、旅に出かけることもままならぬ状況なので、今年も年間600万歩をクリアーできるのではないかと思っている。
我が歩きの記録。毎日これを記すのを楽しみにしている。左から日・曜・今日の歩数・今月の累計歩数・今月の平均歩数・今年の通算日数・今年の累計・今年の平均歩数を記録することにしている。一番右は天気と簡単なできごとを記すことにしている。これはもう20年以上続けている。