山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

越後・信濃路の旅:第2日(その1)

2016-11-05 08:48:48 | くるま旅くらしの話

第2日<10月16日:日> 天気:晴れ

 <行程>

道の駅:南魚沼 →(R17)→ 塩沢宿探索(鈴木牧之記念館など)[南魚沼市塩沢] →(R17・R253)→ 道の駅:まつだいふるさと会館[十日町市松代]→ (R253・R403)→ 室島集落散策[十日町市室島] →(R403・R252)→ 道の駅:瀬替えの郷せんだ[十日町市中仙田] →(R252・K12)→ 荻の島集落散策[柏崎市高柳町荻の島] →(K12)→ 道の駅:じょんのびの里高柳[柏崎市高柳町高尾](泊) 走行74km

 <レポート>

この辺りは越後平野の南端くらいに位置するのであろうか。南側と北側にはかなりの高さの山が連なっている。山は東側にもかかっているのか、日の出が遅いようだ。7時過ぎ、ようやく快晴の空から陽光が射し始めて、どうやら今日も天気は心配ないらしい。9時過ぎまで書きものなどの整理をして、そのあと売店に行き柿の種などの最後の買い物を済ます。今日の一日が始まる。 

塩沢宿と鈴木牧之

塩沢宿は中山道の高崎から別れて、越後の寺泊を終点とする三国街道にある32の宿場町の第19番目に位置している。国道17号線からは少し横に入ったJRの駅寄りにその宿場町の名残りが復元されていた。先ずはその中心街近くにある鈴木牧之記念館を訪ねる。今日は日曜日であり、直ぐ近くにある公園ではフリーマーケットが開かれたりしていて、かなりの人出で賑わっていた。駐車場もそのためか混みあっていて、危うくセーフで車を留めることが出来た。

     

鈴木牧之記念館。記念館は公園の一角に2階建てで建てられていた。牧之関係の資料等は1階の方に展示され、2階はイベントなどで活用されるらしい。

 今回の旅の目的の一つがこの鈴木牧之記念館を訪ねることだった。旅の前に三国街道筋のことをいろいろ調べている内に気づいたのが、鈴木牧之という人物のことだった。この人のことは「北越雪譜」の著者ということは知っていたが、20年ほど前に買ったその本をしっかり読んでおらず、ただその名前だけは覚えていたのである。「北越雪譜」は、江戸時代中期にベストセラーとなった一冊なのだが、それを買って読もうとした頃は、自分はあまり民俗的な分野に関心が向いていなくて、読み出した後も後回しにして、そのまま書棚に置いたっきりにしていたのである。ところが最近になって日本の昔を訪ね始めてからは、今の世のことよりも昔のことを知りたい気持が膨らんで来て、改めて鈴木牧之という人物のことを知りたくなっていたのである。

 この辺りに来ると、米と鈴木牧之は郷土の誇りの最高位置にあるようで、町の至る所にそれを知らしめようと、掲示や旗がたなびいていた。鈴木牧之は江戸の昔に、郷土北越の暮らしのあり様を全国に知らしめようと著書を表わした偉人なのだ。そのことはここへ来てから初めて知ったことだった。

金五百円也を払って、記念館の中に入ると正面の奥の方に牧之翁の木製の座像が置かれていた。解説資料では、この人は体格が良くて風貌魁偉とあったが、座像を見る限りそのような印象は無く、穏やかな感じの人のように見えた。その後は彼と交友関係のあった人たちとの関わりを示す絵や文書等の資料が順次並べて展示されていた。その中でも山東京伝や十返舎一九といった江戸の人たちとの交友が深かったとのこと。

この北越後において、家業の織物類などを扱う商売をしていた鈴木家には、旅の文人墨客が良く訪れて、それらの人々との交友が広がっていたとのことで、彼の父親も牧水という俳号の著名人だったとのこと。牧之はそれを更に高めるという存在だったのである。

 さまざまな資料を見ている中で、特に目を引き気になったのは、「秋山記行」という一文を紹介している資料だった。これは牧之を訪ねて江戸からやって来た十返舎一九と一緒に牧之が秋山郷を訪ねた時の記録であり、その中で牧之は秋山郷に棲む人たちの暮らしやその心根を高く評価し、大自然の中で欲張ることも無くありのままに生きるという姿に感銘を受けたということを記している。北越の雪深い国に暮らしている牧之先生でさえもが感銘を受けたという秋山郷とは一体どういう所なのか、その暮らしとはどんなものだったのか。俄然興味関心が高まった。

 秋山郷については、何年か前の冬に、この地に大雪が降って、人家が孤立しているというニュースを聞いたのを記憶している。その時ああ、今の時代でもそのような場所があるのだと、よほどの雪深い里なのだというのを思い知ったのだったが、江戸時代であれば、今よりもなお一層厳しい冬を過ごさなければならない土地であったのであろう。

帰り際に、その「秋山紀行」について書かれた資料を買い求めた。帰ったら、もう一度今度はじっくりと「北越雪譜」を読み返してみたい。そして、「秋山記行も」牧之先生がどんな気持ちでその旅を味わったのかを感じて見たいと思った。

記念館を出た後は、少し歩いて塩沢宿の跡を散策することにした。塩沢宿は、現在は往時のイメージをわかせるべく、宿場町風に通りの町並みがリニューアルされ、こげ茶色の新しい建物が並んでいた。雪国特有の雁木の造りとなっており、これは今の世でも有効なのだなと思った。しばらく通りを散策しながら往復した。中には牧之先生の生家もあったけど、その昔の風情は残っていなかった。これは致し方ない。日本の家屋が木材ではないもので造られていれば、古墳時代といえどもその名残を確認できるのに、残念なことではある。が、しかし、その分日本の昔を訪ねる旅には、無限の想像力を掻き立てることが出来るのは、ありがたいことではある。そのようなことを想いながら塩沢宿を後にした。

     

往時に近づけるべく復元された塩沢宿の景観。表通りの商店街には雪国特有の雁木も設けられている。

 まつだいふるさと会館(ほくほく線発祥の駅)

その昔の松代村(現在は十日町市)の道の駅を訪れるのは2度目だろうか。前に来た時は、松之山温泉に入るためにこの辺りに来て、道の駅があるのを知って立ち寄ったのだった。特に印象に残ることも無く、駅舎の中を覗いてそのまま立ち去っただけだった。

 今回はこの道の奥の方に地図によれば玉石垣の家並があると書かれているので、それを見たいなと思ったのである。丁度昼時なので、ここで昼食休憩とすることにした。その前に売店などを見ていると、すぐ傍に観光案内所があったので、そこの人に玉石垣の家並のことを訪ねたのだが、知らないという。地図では2kmくらい先にその印があるのだけど、地元の観光案内の資料の中にはそれを紹介するものも無く、担当の女性もご存知ないという。それじゃあ、行って見ても仕方が無いかという気持ちになった。

この辺りには棚田が多く、一見に値する場所もあると聞いているのでそれに変更しようかと心が動いた。しかし、棚田は見たくても細道が多く、車で上の方まで行くのは難しい場所が多い。棚田の景観は、下から見上げたのではさっぱりその状況が判らないので、必ず上方から見下ろす必要があるのだ。意気込んで行って見ても、下方に車を止め、上の方まで歩かねばならず、相棒と一緒では何かと問題が多いのである。それで、結局玉石垣も棚田も止めることにした。この後も山村風景を訪ねる予定があるので、欲張らないことにした次第。

駅舎の脇の方に「ほくほく線発祥の地」という石碑が建っているのに気づいた。そうか、ここは鉄道の駅も併設されているのかと、初めて気づいたのだった。線路にも気づかず、列車にも出会っていないので、現役の駅がここにあるのに気づかなかったのである。「ほくほく線」という鉄道の名を随分昔の現役時代に聞いたことがある。その時は職場の仲間に富山市出身の者がいて、正月の帰省の際にほくほく線経由の切符を買っているとか言っていた。元々鉄道にはそれほど関心が無いので、その時は、へえ、妙な名前の路線があるんだなと思っただけだった。それがここへ来て、発祥の地とあるのを見て、どうしてなのだろうかとふと疑問を持った次第。

というのも、ほくほく線というのは、この地が起点ではなく、松代は丁度中間ぐらいに位置しており、何故発祥の地となりうるのかと思ったのである。それで調べて見た。今はネット上に様々な情報が溢れており、直ぐにほくほく線の由来も確認することが出来た。それによると、ほくほく線が開通するまでには相当に長い歴史があり、路線を巡っての意見の対立から消えかかったこともあるという、大変な状況を乗り越えて来て今日があるのだった。根底にはこの地に住む人たちの雪国ならではの鉄道の必要性に対する切実な願望がこもっているのを知った。冬の間道路が使えないために、常に大周りの遠い道を使わなければ用を足すことが叶わないという、鉄道の敷設はそれゆえの悲願だったのである。そして、その悲願達成のために大きく旗を振り続けたのが、この松代の人たちだった。これは自分たちの様な気まぐれな他所者には到底解らないことなのだと思う。

ほくほく線は長野新幹線の延長に伴って、北陸富山や金沢に向かう近道としての機能をかなり失うこととなっているようである。それでもかなり善戦しているとか。開設の頃に比べて車社会が一層進展し、道路の状況もかなり改善が進んでいることもあり、これからもほくほく線は影響を受けざるを得ないのだと思うけど、先人たちの努力が無に帰すというようなことがないようエールを送りたいと思った。「発祥の地」という碑に籠められた先人たちの誇りがいつまでも輝き続ければいいなと思った。

 

コメント
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