新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

ドイツ映画鑑賞会『ベルリン、僕らの革命』2004年制作

2018年10月05日 | 映画

近くの大学の秋季市民講座が始まりました。ドイツ語学科の先生と学生が選んだ映画を、先生方の解説も交えて上映、その後質問、感想のやりとり、アンケートがあります。

映画館とは違った楽しみおもしろみがあり、夜間にも関わらず人気の高い講座です。講座料無料、近くに住む者の特権です。

最初にドイツの1960年代の学生運動やその頃の社会的思想が説明されました。’68年頃は日本でも学園が荒れました。

     

舞台は今のベルリン。青年ヤンとピーターは格差社会に反発し、自分たちの理想を描き「エデュケーターズ」と称して秘密の活動を行っていました。

それは金持ちの留守宅に忍び込み、家具などの贅沢品を引っ掻き回し『贅沢は終わりだ』と警告文を残して立ち去るもので、市中で取りざたされている怪事件です。 「物盗り」は大義にもとるとの信条で絶対盗みをせず、人も傷つけません。富裕層ばかりが優遇される現体制への痛烈な反抗だったのです。

ピーターの恋人ユールが富豪ハーデンベルグの車に追突して100万ユーロの保償を抱えたことから、彼女を巻き込んで3人だけの「僕ら」の革命が始まります。

ピーターの留守にヤンとユールはハーデンベルグの邸宅に忍び込み室内を引っ掻き回し成功したかにみえたその時に警報装置が!慌てて逃げ出しその場を切り抜けましたが、ユールが携帯電話を落としていたのに気づいたことから、ストーリーはサスペンス風に。

夜を待って再びハーデンベルグの屋敷に忍び込み携帯は発見しましたが、その時彼が長旅から戻ってきて鉢合わせ。息詰まる攻防の末ハーデンベルグが脳しんとうを起こしました。

ピーターの助けも借りてハーデンベルグを誘拐同然に連れ出して、ユールの親戚のチロルの山小屋で奇妙な共同生活を始めます。

共同生活の中でわかったことは、今は年収300万ユーロのハーデンベルグも、1968年学生運動のバリバリの活動家。しかし今はその富を肯定する側です。 三人の若者の苦い三角関係はもつれ込みますが、最後はピーターは理想と友情を優先させ落着させます。

そんな中の議論の末、ハーデンベルグは警察通報はしない、車の賠償も取り消すということで、彼を解放して家に帰すことにしました。

その後暫くして、重装備の警察官が三人のアパートに押し入りますがもぬけのカラ。すでに他の場所に移動していました。ハーデンベルグは約束を破り、やはり最後は警察に通報したのですが、それにも時間差があるのは苦渋のハーデンベルグの意図かも。

ラストシーンは、地中海の明るい日射しの中で、イタリアらしくマリンカラーのジャケットをはおり、3人は豪華なヨットで海に滑り出します。そのヨットはハーデンベルグ所有のものでした。

映画の途中に、ヨーロッパ中を網羅している地中海の通信施設を破壊して打撃を与える計画が出てきて、それが伏線になって多分その通信施設に向かったのでしょうか・・・。

ヨットの中のテーブルにハーデンベルグの写真入りの証明書がちらっと映ったのは、この計画にはハーデンベルグの意志も入っていたのか・・・。 ハーデンベルグの昔の思想と今の姿の両方に激しく揺れ動く心・・・が見てとれます。

現代社会の緻密さから考えれば、この青年たちの理想もやり方も先が見えていて幼稚とも言えます。 ’68年の闘争は数年で消えた記憶があり、その活動が今の若者には憧れとして映ったのかも知れません。

自由主義経済の中で「変わる、変える」ことの理想が実現できたかどうか・・・は、あのヨットの行き先だけが知っているのかな。日本でも60年代の活動家が経済界のトップになったりしています。

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