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「原発安全革命」の新版

『原発安全革命』より

新版を出すに至ったわけ

 本書の旧版は二〇〇一年に刊行された。旧版は、きわめて安全で取り扱いが容易、発電効率がよく、しかもこれからの全世界のエネルギー需要の急速な増大にも対応できる、まったく新しい革命的な原発システム(核エネルギー発電所システム)を、初めて一般書として紹介したものである。

 このたび新版を出すに至った直接のきっかけは、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故にある。

 二〇一一年三月十一日、世界観測史上四番目といわれるマグニチュード九・〇の大地震か、岩手県・宮城県を初めとする東日本一帯を襲った。福島第一原発では、炉の緊急停止には成功したものの、炉は、遅れて襲来した大津波に冷却のための電源をすべて奪われ、核燃料自体か発する高い崩壊熱で燃料棒が熔融し、その結果、格納容器から漏れ出た大量の放射性物質が、周辺地域を汚染、本書執筆の時点で今なお、危機的状況が続いている。この経緯は、すでに読者の皆さんもよくご存じのことだろう。

 本書で提案・解説する新しい原発(「トリウム熔融塩炉」という炉を中心としたシステム)であれば、原理的にこんな過酷な事故は起こりえない。

 おりしも、この数年、この革命的な原発への関心が世界的に高まりつつあり、国際協力の進展で実現への道のりが見え始めた。

 「トリウム熔融塩炉」などというと、一般の方々は、なにやらひどく難しそうなものに思われるかもしれないが、技術の原理原則はきわめて単純・簡明なものである。極力平易な記述を心がけるので、どうかその本質とするところを読み取っていただきたい。

三つのポイント

 これからの原子力発電は、まずなにより安全でなければならない。安全であることで初めて、皆さんの支持を得られる。

 しかし、安全であるだけでは不充分である。安全である上に、経済性がなければいけない。発電効率が良く、安価で、しかも、今後ますます増大する世界のエネルギー需要に応じられるだけの供給力を持っていなければいけない。

 本書の提案は、その二つのハードルをともにクリアするものである。

 簡略にいえば、本書の「原発革命」の「革命」たるゆえんは、次の三点にまとめうる。

 第一に、これまでの固体燃料を液体燃料に代える。事故の報道で炉心の燃料棒の図や写真をご覧になった方も多いと思うが、今の原発では、被覆管の中に密閉された固体核燃料を燃やしている。これを液体に代える。

 第二に、今のウラン燃料をトリウム燃料に代える。現在の原発はウラン235の核分裂により発生する熱を利用しているか、このウラン235に代えて、それより少し質量の軽いトリウムという物質を燃料にする(ウランやトリウムについては第二章で解説する)。

 第三に、原発自体を小型にする。今の原発は発電規模一〇〇万キロワット卜以上の大型施設が主流だが、これを二〇~三〇万キロワット程度の小型のものに代える。

 この三つの変革がなぜ「革命」なのか、どういうメリットをもたらすのかについての詳しい解説は本文を読んでいただくとして、ここではごく大雑把にその意義を、安仝性と経済性の両面から素描することにしよう。


・・・本が出ている割には、我々には伝わってこないし、マスコミにも出てこない理由は何なんでしょう。
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