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チエ・ゲバラの死 「別れの手紙」

『フィデル・カストロ』より

--国際社会では、あなたとチエが不仲になり、重大な政治的不一致が生じたなどと報じられました。チエは投獄されたとも伝えられ、処刑されたとさえ報じられました。

C 我々は、一連の噂や中傷を黙止した。だがチエは一九六五年三月末、出発に際して私に「別れの手紙」を書いた。

--あなたは、その手紙をすぐには公開しなかったのですか。

C いや、公開せずに私が保管していた。あの手紙を公開したのは、一九六五年一〇月三日に開かれた新しいキューバ共産党の中央委員会の発足式でのことだ。中央委員会にチエがいない理由を説明する必要があったからだ。その間、中傷が続いた。敵は不和の種や疑念をまき散らし、チエーゲバラは我々と対立して「粛清された」という噂を流した。

--噂を流す大がかりな宣伝工作があったということですね。

C チエは、あの手紙を思うままに書いた。「あなたを十分に信頼しなかったことを後悔している」などと、ずいぶん率直に書いている。一〇月危機などにも触れていた。思うに、彼は極めて批判的であり、多くの人を信用していなかったのだろう。

私のために詩を書いてくれたこともある。私は、そのことを当時まったく知らなかった。私に対してはいつも友愛に満ち、敬意を払い、私の決定を尊重していた。私は彼と議論はしたが、強制したことはなく、命令することも通常はなかった。なすべきことがあれば、それをするよう説得するのが常だった。ごくたまにだが、「それはしてはいけない」と、禁止することがあった。

彼は一九六六年三月、アフリカからチェコスロヴァキアの首都プラハに行った。状況は複雑で、事実上、秘密の滞在だった。「別れの手紙」を書いており、面子を強く気にするがゆえに、一度別れたキューバに戻ることなど脳裏になかったのだろう。だが、ボリビア遠征部隊はすでに選別され、準備を整えていた。そこで私は手紙を書き、彼の義務感と理性に訴え、説得した。

--チェは何のためにキューバに戻ったのですか。

C チェの家族は、私の書いた手紙をすでに公開したと思う。私は手紙を書き、真剣に語りかけたのだ。戻るよう説得し、「そこからでは、あれはできない。戻らねばならない」と書いて、次にしたいことをするには戻るのが得策だと訴えた。命令として「戻らねばならない」と書いたのではなく、説得したのだ。すべての事情を超えて戻り、ボリビア遠征計画の準備を終えるのが君の義務だと説いたのだ。

彼は密かに戻った。誰にも知られなかった。戻ってくる旅行中も悟られることはなかった。一九六六年七月に戻った。

--変装していたのですか。

C あまりに変装が凝っていたため、指導部の同志たちを昼食に招いた際、とても面白い友人を紹介しようと彼らに言ったほどだ。誰も同席していたチエを見抜けなかった。それほどまで上手に変装していた。

--ラウールは、チエを前にして見抜けなかったのですか。

C ラウールは何日か前にゲリラ訓練場でチエと別れの挨拶を交わしており、昼食会の日にはソ連を訪問していた。昼食会の席にいた誰も、紹介した〈友人〉がチエだとは見抜けなかった。我々には、彼をこれほどまでに変装させ異なる人物に変えてしまう技術を備えた人材があった。チェは、ピナルーデルーリオ州の山岳地帯のある場所にあるサナンデレス農場の家に滞在していた。彼はそこで部隊を組織し、同行する一五人の部下と数カ月間訓練した。彼が選んだのは、志願者ばかりだった。チェはある場所で妻子に別れを告げ、その場所に私も行った。

--部下をボリビアにゲリラとして連れていくために訓練したのですね。

C 何人かは、マエストラ山脈で戦ったゲリラだった。他の者はコンゴでチェとともに戦った。チェは、部下の一人ずつと語り合った。私は、何人かの同志についてチェに異論を唱え、「それはしない方がいい」と忠告した。チェは、仲のいい兄弟二人を別々の班に分けようとしていた。そこで、「この兄弟は別々にしない方がいい。一緒にしておきたまえ」と言ったのだ。二人ともいい戦士だった。私が性格を熟知していた別の同志は立派な戦士だったが、やや理屈っぽかった。そこで何度か注意した。

ボリビアに行った者は全員、優れた戦士だった。「サンルイス大尉」ことエリセオ・レジェスが死んだとき、チェは日記に「汝、勇気ある大尉の小さな姿よ」と記している。この表現は、彼が愛読していたパブロ・ネルーダの美しい詩からとったのだ。チェはレジェスを深く思いやっていた。チェは、そんな人間だった。

彼がまずすべての部下を選び、それから私と話し合った。私はいくつかの提言をしたが、私も知っていたある戦士は、規律面である種の問題があった。これは重要なことだった。だがチェは、彼を立派な戦士だと擁護した。私はチェと、一九六六年一〇月に出発するまで、ずいぶん話し合った。彼は大いなる情熱をもって出発した!
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