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CRMの定義

『NGO・NPOと企業協働力』より

二〇〇八年のリーマンショック(国際金融危機)以降、企業のCSR的関心に新しい変化が起こっていると思われる。①CRM(コーズリレーテッド・マーケティング Cause Related Marketing)、②BOPビジネス、③プロボノ、の三点に対して強い関心を持つようになっているようである。

 CRM(コーズ関連マーケティング)は、コーズ(cause=大義、目標、理想、よきこと)を全面に出したマーケティング活動のことである。フィリップ・コトラーは「企業が製品の売上げや取引に応じて、得られた利益の一定割合を何らかの組織に寄付すること」で、「時間的限定で、特定製品を対象に、特定のコーズ」と共に行うマーケティングであると定義していび。

 CRMは「社会問題解決型マーケティング」、あるいは「ソーシャル・マーケティング」の新しい形ともいわれている。ソーシャル・マーケティングは社会課題解決に基本的な軸足を置いて取り組むマーケティングとされているが、コーズマーケティングは利益獲得(販売増)を中心目的としているところ、あるいは貢献の水準が製品の売上と結びついている点が特徴となっている。

 この種の「寄付つき商品」の販促手法はかねてからあったが、CRMはその取り組みを「より本格化・体系化」したものとして登場させてきている。CRMの事例は実に多様であるが、コトラーは理想的なのは「マス・マーケット向けに大量の潜在顧客を保有し、流通チャネルに幅広く展開している製品を扱う企業」(金融、消費財、航空産業、通信分野)が行うケースだと述べている。

 NGOにとっても、CRMは新しい安定的な資金源として、また自らのNGOの認知度、ステータス、信頼性を高めるものとして有効であることから、CRMにおける企業との協働を前向きに検討するようになっている。

 CSRの本質は、何度も述べているが、企業が「コアビジネス(本業)」において社会課題(環境と社会問題)に取り組んでいるかどうかにある。この点で、CRMは、第一に、企業がそのマーケティング力を社会課題解決のために提供するものであること(それによって収益増大を目的とするとしても)、第二に社会課題への取り組みをテーマとして販売促進活動(マーケティング)を行い、その売上額の所定比率をNGOに「寄付」しようとするものであること。収益からの「寄付」という点で、従来型のマーケティングと同様と考えられるが、自社の本業である製品に対して寄付システムを直接的に組み込むという点で、本業(経営システム)として取り組んでいるということがいえよう。

 第三に、企業のマーケティング力の提供という意味で、その商品が売れたら寄付するという、特定商品の販売額に限定した寄付(いわゆる全社収益からの寄付という形と比べると縮小型の寄付)ではあるが、マーケティング力を最大化することによって、そのコーズ(社会課題)とコーズに取り組むNGO活動を広報することになり、コーズの実態とNGO活動の実態を知ることを通じて、消費者の開発教育への効果も大きく期待できるという点で、CRMはCSRの一環であると考えてもよいであろう。

 フェアトレードと同様、CRMは消費者にとって、日々の消費行動を通じて無理なく社会貢献を行う一つの手法として、今後企業によってますます取り入れられ、社会に浸透していく可能性もあろう。さらに、CSRの観点からも「本業」を通じた戦略的な取り組みとして、また企業・消費者・NGOなど多くのステークホルダーを巻き込む形での効果的なマーケティング手法として一層展開されていく可能性もある。
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