『地球環境辞典』より ⇒ 「環境」とつけば、商売になるみたい。まともな定義がされていない
環境
一般的には人間や動植物などの生物の存在と活動に直接的または間接的に影響を与える外界ないしは周囲の状況を指す用語。日本では1900年代前半の大正期あたりから広く使われ始めた。今日、人間を主体とする場合の「環境」という用語は人間を取り巻く自然環境だけでなく、人間活動に関係する社会環境、すなわち生活環境、教育環境、文化環境、経営環境、市場環境、都市環境、国際環境などのような多くの分野で非常に幅広く使用されるようになってきた。
これらの環境は基本的に自然環境と社会環境の2つに大別されるが、現在のいわゆる「環境問題」は主として自然環境を対象にしている。この背景にあるのは、人間の存在や活動が自然環境に多大な悪影響をおよぽすようになり、自然環境を損なうようになったという実態にほかならない。
環境学習
環境を総合的にとらえ、自然観察などを通じて体験的に学ぶことを一般に「環境学習」と呼ぶ。近年急速に顕在化する地球環境問題をはじめとするさまざまな環境問題の解決には、行政・企業・市民が三位一体となって行動することが強く求められている。行政は環境行政を行い、企業は環境経営を実践し始めている。しかし、市民の環境意識は高いものの、実際の行動に結びつかない現状がある。こうした現状を打破するために環境学習を通じて市民の環境意識と環境行動のギャップを埋めようとする動きが活発に行われている。
環境学習の内容は環境汚染や地球温暖化などを理論的に学ぶものから、実際に自分たちの手で植林を体験したりするものまで多くの種類がある。こうした経験を通じて国民1人ひとりが環境問題に関心と知識を持って人間活動と環境とのかかわりについて理解し、環境に配慮した行動をとることが求められている。
環境行政
行政は国家の統治作用から立法および司法の作用を除いたものとされるが、一般に環境行政という場合には環境基本法の第1条に規定する環境保全の目的を達成するために行われる全体として統一性があり、継続的で形成的な国家活動を指す。具体的には公害防止、自然保護、生活環境保全、および地球環境に関する公共事務の管理・実施がある。
これらの施策内容は、公害防止のための環境基準の設定と規制、自然環境・地球環境の保護・保全、生活環境におけるリサイクルの促進、地方公共団体・民間団体等の活動促進、国際協力の実施等「規制」と「促進」、その「財政措置」によって、環境保全に関する行政施策に全体的統一性を与えている。地方公共団体では環境基本条例、公害防止条例、自然環境保全条例および環境影響評価条例等の環境保全関連条例が制定され、環境保全に関する施策が実施されている。
環境教育
人間と環境とのかかわりについて理解と認識を深め、環境に配慮した責任ある行動が取れるような環境学習を推進すること。つまり、人間活動と環境とのかかわりについて理解し、大量消費を中心とした現代社会のライフスタイルがいかに環境に負荷をかけているかという認識を持ち、生活環境の保全や自然保護に配慮した行動を心掛けるとともに、より良い環境の創造活動や自然との触れ合いに主体的に参加し、健全で豊かな環境を人々の共有資産として次世代に引き継ぐことができるよう環境学習を推進することを指す。政府や自治体が学校教育のなかの学習指導要領に環境にかかわる内容を充実させることを盛り込む一方、教育機関では環境に関するボランティア活動を支援するなど環境意識を高める教育を行っている。
環境問題
環境を汚染、悪化、または破壊することから生じるあらゆる問題を総称して使われる。このような環境問題への関心を高める契機となるのは、有害な化学物質によって引き起こされる環境汚染事故とは限らない。例えば1979年には米ペンシルバニア州にあるスリーマイル島の原子力発電所で事故が発生し周辺の住民が被曝したが、これも放射能による環境汚染であり、地域住民に多大な健康被害と恐怖をもたらした。
しかし、環境問題への関心が世界中で高まる大きな転機は1986年であり、この年を境に世界各国で環境問題が真剣に議論されるようになったという見解がある。 1986年といえばチェルノブイリの原発事故とライン川の汚染事故が発生した年であるが、前者は情報が開示されていない社会主義国(旧ソ連邦)で発生し、後者は汚染源が環境保護に熱心な国と評されるスイスであったという点で世界中に大きな衝撃を与えたわけである。
環境理念
企業などの組織が対外的または対内的に策定する環境に対する考え方、方針、哲学などを指す用語。「環境方針」「環境原則」「環境憲章」などと呼ばれることもある。 1980年代の後半あたりから企業に対し国内外において環境理念の確立を推進する試みが、産業界だけでなく政府機関からも活発に行われるようになり、21世紀の今日では環境理念の構築は企業にとって常識になったといっても過言ではないだろう。
実際、 1994年に環境庁(現在の環境省)から発表された「環境にやさしい企業行動調査」には、すでに次のような記述が見られる。すなわち「昨今の地球環境問題をはじめとする環境問題への対応においては、緊急の健康被害に的を絞って加害的行為を抑制する、いわゆる公害対応型を越えた包括的な環境問題への取り組みが求められており、これに伴い、環境に対する企業理念の再構築が社会潮流となっている」と。
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