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共有(シェア)という解決策

『プレチュード』より

一九九八年に『浪費するアメリカ人-なぜ要らないものまで欲しがるか』(森岡孝二監訳、岩波現代文庫、二〇一一年)を出版したとき、ある一文が激怒にも似た反応を引き起こした。乗用芝刈機など、たまにしか使わないような高価な品物は、隣人同士で共有すればいいのではないか、という私の提案に対してである。しかし一〇年経った今、共同で所有されているのは芝刈機だけではない。トラクターや自動車でさえ、共有される時代になった。シェアリング・エコノミーが発進しようとしているのである。その最も有名な例が、カーシェアリングである。

この分野の先駆者となったのは、都市に住む利用者に対して車を短期間貸し出すというシステムを開拓した、アメリカのジップカーという会社である。ジップカーの創設者であるロビン・チェイスはさらに、相乗りサービスの会社、ゴロコを創設している。あるいはFreecycle.orgというオンラインネットワークの会員になると、モノをあげたい人と欲しい人がお互いにやりとりできる。http://isharestuff.orgでは、人と共有してもいい、と思う物品をオンラインのページ上に投稿し、同様のことをしている人と連絡をとることができる。これらの事例は、世界規模のシェアリング〔共有〕という潮流を後押しする二つの重要な動きの延長線上にある。一つ目が、インフォメーション・コモンズ、二つ目が土地、水、大気といった共有の資源の責任ある利用という動きである。シェア・ザ・ワールズ・リソーセズ、クリエイティブ・コモンズ、アイ・コモンズといった団体の原動力となっている精神は、普通の製品に対しても、同様に当てはまる。自転車の共同利用のシステムはヨーロッパでは広く受け入れられており、二〇一〇年にはロンドンでもプロジェクトが発足する予定である〔同年にスタートしている〕。

このシステムはアメリカにも根付き始めており、いまやワンントンDC、ノースキャロライナ州チャペルヒル、ウィスコンシン州マディソン、コロラド州フォートコリンズなどの都市や地域で行われている。そのなかでも北アメリカ最大のプロジェクトがモントリオールのビクシーである(パリのヅェリブプログラムは、二〇〇七年に歓声に迎えられて始まったが、その後芳しくない報告が相次ぎ、この種の取組にありかちな欠点、すなわち一部の地域以外では、貸出にあたって保証金、会員制度、その他の何らかの盗難防止策が必要であることが明らかとなった)。道具の共同利用は、とくに低収入の共同体において長い歴史を持つもう一つの共有の方式である。これらの事例では、それぞれの物品は個人、会社、市や非営利団体が所有しているが、その利用は一般に開放されている。この方式の変種として、共同住宅のコミュニティなどで登場し始めた、分割所有権制度がある。いくつかの世帯が集まって、小さな道具だけでなく、自動車などの物品を共同で購入する方法もある。自動車の共同所有は、保険制度や損害評価、スケジュール調整方法が整備されている、スカンジナビアなどのヨーロッパの一部で実践されている。

以上の事例には、さまざまな所有形態(公的、私的、個人、共同)や資金面での取り決めがあるが、これらの根底には共通点がある。つまり、ある条件のもとでは、共有という形態は、独占的な私的所有に比べ、効率という面で明らかに優位なのである。共有は、原材料の節約になり、個人にとってはお金の節約にもなり、共同体の強化にも繋がる。とくに、対象となる物品が常に必要とされるものではなく、前もって必要となる投資(費用)が多く、使用によって品質が損なわれたり、私物化されたりすることがなく、(自動車のように)稼働や減価償却に伴う費用を個人に割り振ることができる場合、共有による便益は最大になる。その一方で、共有は経済学者がいう取引費用--規則を作ったり、スケジュールを管理したり、トラブルを規制したりする労力と時間--がかさむ、という難点がある(ただし、インターネットのおかげで、これらのコストは劇的に減少した)。BAU経済下でのように、資金が豊富にあり、環境への配慮がなされず、時間が高価な場合は、私的所有へのインセンティブが働く。一方、〈豊かさ〉、すなわち、原料を節約して、時間が十分にある状態においては、共有の価値が高まるのである。
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所有権 (もう)
2015-03-02 05:13:53
共有意識
 
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