未唯への手紙
未唯への手紙
シェアリングの仲介者としてのあり方
『なぜ、日本人は考えずにモノを買いたいのか?』より ⇒ シェアは個人とか企業の思惑を超えたところにあるけど、それまでの動きを探っています。
「持つ」ことへのこだわりの低下。借り物、中古でもいい
スマートフォンの普及による環境整備とコト消費志向、ミニマリスト志向、エシカル志向などの価値観変化から、中古・レンタルヘのニーズが拡大傾向にある。企業は新品の提供者としてだけではなく、シェアリングの仲介者としてのあり方も検討していくことが求められる。
モノヘのこだわりが低下し、中古・レンタルヘのニーズが増えている モノを「持つ」ことのこだわりが低下し、必ずしも新品ではなく、使えれば借り物でも中古でも良いと思う人が増えている。図では、レンタルやリースに対する抵抗感の年代別時系列変化について、およそ30年前の1985年からの変化をみることができる。
1985年に実施されたNRI「生活者アンケート調査」の結果と、2012年の結果を比較すると、1985年では40代以上でレンタルやリースを使うことに抵抗を感じる人が多い傾向にあったが、2012年ではレンタルやリースに抵抗がないと感じる40代以上の割合が大きく増えている。これは、1985年当時30代だった人が、30年近く経った2012年では60代になっているためである。一方、直近の2012年から2015年にかけては、10代を除くすべての世代でレンタルやリースに対する抵抗感がさらに薄れつつあることがわかる。
また、「A:中古製品やリサイクル品を買うことに抵抗はない」「B:なるべく新品のものを買いたい(中古製品やリサイクル品を買うことに抵抗がある)」を対にして比較した際に、「Aに近い」または「どちらかといえばAに近い」と回答した中古品・リサイクル品に抵抗がない消費者の割合は、30代以下では過半数を占め、以降年齢が高まるにつれ減少するも、70代でも35%を占める。特に若い世代に「中古品・リサイクル品に抵抗がない」人が多く分布する傾向から、この価値観は今後の消費者の傾向として高まってくるだろう。
何か必要なモノがあった際に、即「新品を買おう」とならないのが、今の消費者といえる。
実際に、不要なものをリサイクル店やオークションに出す、必要なものをフリーマーケットで探すといった行動は、リアル店舗、インターネットの双方でよくみられるようになってきている。一部は2014年4月の消費増税による節約意識の影響もあるが、やはりスマートフォンの普及による影響は大きい。
さらにレンタルサービスやフリマアプリなど利用しやすい環境が整ってきたことで、個々人が持っているモノについての情報交換が進み、求める人と提供したい人がマッチングされやすくなった。顔をみたことがない遠くに住む相手とも、たとえばなくしてしまったおもちゃのパーツのような本当に細かいものまで、時間や物理的距離を気にせずにやり取りし、ニーズをマッチングできるのだ。
インターネット空間では、店舗を構えることなく、誰もが簡単に売り手になることが可能となる。中古の衣類・日用雑貨から趣味で作ったハンドクラフト品まで、面倒な手続きを踏むことなしに売りに出すことができる。
また、最近の消費者は、「企業との取引」と「個人間取引」の間に、信頼性の面で違いを見い出さなくなっている。企業の情報よりもューザー評価を参照したいとする傾向が強まっており、一定のブランドカを持つ企業でなくても、ユーザー評価が高ければ個人の売り手についても安心感が得やすくなってきた。それは消費者同士が、ューザー評価というかたちで、お互いに品質保証し合っていることを意味する。
1999年にサービスを開始した「ヤフオク!」では、出品者に対して評価をつけるしくみがある。評価の内容はすべての利用者に公開され、その人と取引する時の重要な情報となる。2013年に登場した「メルカリ」は、スマートフォン向けのフリマアプリとしてしくみを簡潔にしたことで急成長を遂げているが、こちらも出品者の評価状況がわかりやすく表示されている。商品を選択する際に、過去にその出品者から購入したことのある購入者からの、出品者に対する評価が良ければ、出品されている商品についても状態が良さそう、もしくはきちんと商品情報を載せている(傷や汚れがある場合も正確に載せている)として一定の安心感を得ることができる。ネット上の個人ではあるが、新品を信頼性の高い企業から購入する、あるいは現物を確かめて購入する際に得られる安心感にも似たものが、ユーザー評価によって実現している。
エコ意識と人とのつながりを求める意識
エコや人とのつながりといった観点から、シェアリングに対する志向性も高い。カーシェアリングは「めったに使わない車を維持・保有するよりも、お財布にも地球にも優しくてスマート」として特に若者からの評価が高い。不特定多数の人が長時間利用するレンタカーに対し、カーシェアリングはあらかじめ登録された会員のみが短時間(15分単位)でも利用することも可能であり、ちょっとした買い物の際に利用することもできる、より「共有」に近いサービスである。日本ではタイムズカープラスが2016年1月段階で全国7500ヶ所、会員数58万人まで普及しており、珍しいサービスではなくなってきている。
また、シェアハウスは10代、20代の若者の利用意向が高く、従来若者向けのサービスというイメージも強かったが、最近ではシニア向けのシェア(ウスも出てきている。ただし、若者では一軒の家で各部屋に住みながら居間・キッチンなどを共有スペースとしているのに対し、シニアの場合は、住居としては分譲マンションに住み、コミュニティスペースをシェアするかたちが一般的だ。
たとえば、シニアが健康なうちに入居し終身まで過ごすための生活共同体「CCRC(Continuing Care Retirement Community)」が注目されており、自立を望むシニアに対して、生活・健康・介護などのサポートを充実させながら、シニア同士で仕事や趣味・娯楽を通じて人間らしい生活を送れる住環境として話題になっている。
CCRCは1970年代にアメリカで始まった取り組みであり、アメリカでは75万人がCCRCで暮らしていると推計されている。日本の代表的な例としては、千葉市にある日本最大級のCCRC施設「スマートコミュニティ稲毛犬があげられる。1000人以上が過ごせるコミュニティ施設と隣接する分譲マンションが一体となっており、味わう・愉しむ・つながるをテーマとした食生活や多彩なアクティビティ、コミュニケーションを提供し、アクティブな生活が実現化されている。
シニアと若者が共同コミュニティを形成するシェアハウスも存在する。学生マンションから共生創造企業を目指す「ジェイ・エス・ビー」では、学生マンションとシニア住宅を一体化した住宅を提供している。マンションの低階層をシニア向け住宅、高階層を学生マンションとし、学生ボランティアによる介護サービスによってシニアをサポートするとともに、ボランティア費用として学生マンション部分の管理費として還元するしくみを取っている。シニアと学生にとって、Win-Winな関係が構築されるとともに、異なる世代間の日常的な交流が生まれ、活気あるコミュニティ形成が期待されている事例だ。
近年、生涯未婚率は急激に上昇、2030年では、男性の29・5%、女性の22・5%が生涯結婚しない社会になることが予測されている。また、離死別者も増加し、2030年では日本人のうち配偶者がいない人が約5割となる見込みであり、一人暮らし世帯は全世帯の3分の1以上を占める予測だ。そのような状況下、来たるべき超高齢化社会において、こうした人と人とが支えあうコミュニティづくりが、未来の日本の課題を解決するカギとなるかもしれない。
「持つ」ことへのこだわりの低下。借り物、中古でもいい
スマートフォンの普及による環境整備とコト消費志向、ミニマリスト志向、エシカル志向などの価値観変化から、中古・レンタルヘのニーズが拡大傾向にある。企業は新品の提供者としてだけではなく、シェアリングの仲介者としてのあり方も検討していくことが求められる。
モノヘのこだわりが低下し、中古・レンタルヘのニーズが増えている モノを「持つ」ことのこだわりが低下し、必ずしも新品ではなく、使えれば借り物でも中古でも良いと思う人が増えている。図では、レンタルやリースに対する抵抗感の年代別時系列変化について、およそ30年前の1985年からの変化をみることができる。
1985年に実施されたNRI「生活者アンケート調査」の結果と、2012年の結果を比較すると、1985年では40代以上でレンタルやリースを使うことに抵抗を感じる人が多い傾向にあったが、2012年ではレンタルやリースに抵抗がないと感じる40代以上の割合が大きく増えている。これは、1985年当時30代だった人が、30年近く経った2012年では60代になっているためである。一方、直近の2012年から2015年にかけては、10代を除くすべての世代でレンタルやリースに対する抵抗感がさらに薄れつつあることがわかる。
また、「A:中古製品やリサイクル品を買うことに抵抗はない」「B:なるべく新品のものを買いたい(中古製品やリサイクル品を買うことに抵抗がある)」を対にして比較した際に、「Aに近い」または「どちらかといえばAに近い」と回答した中古品・リサイクル品に抵抗がない消費者の割合は、30代以下では過半数を占め、以降年齢が高まるにつれ減少するも、70代でも35%を占める。特に若い世代に「中古品・リサイクル品に抵抗がない」人が多く分布する傾向から、この価値観は今後の消費者の傾向として高まってくるだろう。
何か必要なモノがあった際に、即「新品を買おう」とならないのが、今の消費者といえる。
実際に、不要なものをリサイクル店やオークションに出す、必要なものをフリーマーケットで探すといった行動は、リアル店舗、インターネットの双方でよくみられるようになってきている。一部は2014年4月の消費増税による節約意識の影響もあるが、やはりスマートフォンの普及による影響は大きい。
さらにレンタルサービスやフリマアプリなど利用しやすい環境が整ってきたことで、個々人が持っているモノについての情報交換が進み、求める人と提供したい人がマッチングされやすくなった。顔をみたことがない遠くに住む相手とも、たとえばなくしてしまったおもちゃのパーツのような本当に細かいものまで、時間や物理的距離を気にせずにやり取りし、ニーズをマッチングできるのだ。
インターネット空間では、店舗を構えることなく、誰もが簡単に売り手になることが可能となる。中古の衣類・日用雑貨から趣味で作ったハンドクラフト品まで、面倒な手続きを踏むことなしに売りに出すことができる。
また、最近の消費者は、「企業との取引」と「個人間取引」の間に、信頼性の面で違いを見い出さなくなっている。企業の情報よりもューザー評価を参照したいとする傾向が強まっており、一定のブランドカを持つ企業でなくても、ユーザー評価が高ければ個人の売り手についても安心感が得やすくなってきた。それは消費者同士が、ューザー評価というかたちで、お互いに品質保証し合っていることを意味する。
1999年にサービスを開始した「ヤフオク!」では、出品者に対して評価をつけるしくみがある。評価の内容はすべての利用者に公開され、その人と取引する時の重要な情報となる。2013年に登場した「メルカリ」は、スマートフォン向けのフリマアプリとしてしくみを簡潔にしたことで急成長を遂げているが、こちらも出品者の評価状況がわかりやすく表示されている。商品を選択する際に、過去にその出品者から購入したことのある購入者からの、出品者に対する評価が良ければ、出品されている商品についても状態が良さそう、もしくはきちんと商品情報を載せている(傷や汚れがある場合も正確に載せている)として一定の安心感を得ることができる。ネット上の個人ではあるが、新品を信頼性の高い企業から購入する、あるいは現物を確かめて購入する際に得られる安心感にも似たものが、ユーザー評価によって実現している。
エコ意識と人とのつながりを求める意識
エコや人とのつながりといった観点から、シェアリングに対する志向性も高い。カーシェアリングは「めったに使わない車を維持・保有するよりも、お財布にも地球にも優しくてスマート」として特に若者からの評価が高い。不特定多数の人が長時間利用するレンタカーに対し、カーシェアリングはあらかじめ登録された会員のみが短時間(15分単位)でも利用することも可能であり、ちょっとした買い物の際に利用することもできる、より「共有」に近いサービスである。日本ではタイムズカープラスが2016年1月段階で全国7500ヶ所、会員数58万人まで普及しており、珍しいサービスではなくなってきている。
また、シェアハウスは10代、20代の若者の利用意向が高く、従来若者向けのサービスというイメージも強かったが、最近ではシニア向けのシェア(ウスも出てきている。ただし、若者では一軒の家で各部屋に住みながら居間・キッチンなどを共有スペースとしているのに対し、シニアの場合は、住居としては分譲マンションに住み、コミュニティスペースをシェアするかたちが一般的だ。
たとえば、シニアが健康なうちに入居し終身まで過ごすための生活共同体「CCRC(Continuing Care Retirement Community)」が注目されており、自立を望むシニアに対して、生活・健康・介護などのサポートを充実させながら、シニア同士で仕事や趣味・娯楽を通じて人間らしい生活を送れる住環境として話題になっている。
CCRCは1970年代にアメリカで始まった取り組みであり、アメリカでは75万人がCCRCで暮らしていると推計されている。日本の代表的な例としては、千葉市にある日本最大級のCCRC施設「スマートコミュニティ稲毛犬があげられる。1000人以上が過ごせるコミュニティ施設と隣接する分譲マンションが一体となっており、味わう・愉しむ・つながるをテーマとした食生活や多彩なアクティビティ、コミュニケーションを提供し、アクティブな生活が実現化されている。
シニアと若者が共同コミュニティを形成するシェアハウスも存在する。学生マンションから共生創造企業を目指す「ジェイ・エス・ビー」では、学生マンションとシニア住宅を一体化した住宅を提供している。マンションの低階層をシニア向け住宅、高階層を学生マンションとし、学生ボランティアによる介護サービスによってシニアをサポートするとともに、ボランティア費用として学生マンション部分の管理費として還元するしくみを取っている。シニアと学生にとって、Win-Winな関係が構築されるとともに、異なる世代間の日常的な交流が生まれ、活気あるコミュニティ形成が期待されている事例だ。
近年、生涯未婚率は急激に上昇、2030年では、男性の29・5%、女性の22・5%が生涯結婚しない社会になることが予測されている。また、離死別者も増加し、2030年では日本人のうち配偶者がいない人が約5割となる見込みであり、一人暮らし世帯は全世帯の3分の1以上を占める予測だ。そのような状況下、来たるべき超高齢化社会において、こうした人と人とが支えあうコミュニティづくりが、未来の日本の課題を解決するカギとなるかもしれない。
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