未唯への手紙
未唯への手紙
家族法を楽しく理解してもらうために
『家族法の道案内』より 身近な家族法 家族法を楽しく理解してもらうために
家族法の存在理由
①日々の生活と法律
家族法は、私たちの日常生活に密接に関係する問題を取り扱う法律である。たとえば、結婚や離婚、財産の相続など、現実に体験をしていれば分かりやすいが、たとえ現実に体験していなくても、このような人間関係をテーマとした小説やドラマなどを思い起こすことができれば、頭の中にイメージしやすいだろう。そこに登場する人々の結婚や親子の関係といった人間関係をどのように「法律的」に取り扱うかを示しているのが「家族法」である。
とはいっても、日々の暮らしの中で、人と人との関係が、法律によって縛りつけられていると感じることはほとんどない。どちらかといえば、日常生活は流されるがままに進んでいくものである。結婚といった大イベントを除いて、大部分の日常生活は、朝起きて夜眠るまで目まぐるしく過ぎ去っていくものであり、法律に基づいて生活しているなどという意識はないのが普通といえる。だから通常は、日常生活を送っていく中で、知らず知らずの間に法律に反しない生活をしている、といえるのかもしれない。
②「自分」を中心に
さて、人と人との関係をみていく家族法を学ぶ場合、「自分」を中心として親や結婚相手、そして、生まれてくる子どもなどとの関係を考えることが基本となる。「自分」を取り巻く人々のイメージを常に頭の中に描きながら読み進めていくことが理解を手助けする。
人は、この世に生まれたからには父親と母親が存在し、共に生活する時間の流れの中で、日々、成長していく。もちろん、生まれてすぐに、さまざまな理由で父母がそばにいない場合もあるだろうが、いずれにしても時間は進み、学校や社会の中で、いろいろなことを吸収していく。そして、愛する人に出会い、共に歩むことを選択することもあれば、別れを選択することもある。幸運にも子どもを授かれば、今度は自分が親となり、自分が歩んできた道を、自分の子どもが不安を抱えて歩んでいく姿を見守りながら全力で支えていく。そして、命あるものの宿命として、やがて死を迎える(わずかに残した財産をめぐる、子どもたちの争いが起こらないことを祈りながら)。
このように人の一生をわずかな行数でまとめてしまうと寂しい気持ちになるが、人生の各場面と登場人物のイメージは頭に浮かぶだろうか。どのような人生であっても、止まることのない時間の流れの中で、人は成長し、老いていく。それぞれがそれぞれの進む道を選択しながら、それぞれの最良の人生を歩んでいくのである。
その人生の選択は、基本的には一人ひとりが自由に選択し、誰の命令に従う理由もないし、他人のいうとおりにする必要もない。もちろん、自分を心配してくれる人々の助言や苦言に耳を傾けることは必要であるが、最終的には自分の自由な選択により、自分の人生を進んでいくのである。
③すべて自由でも良いか
しかしながら、すべてが自由で良いだろうか。たとえば、①AとBという女性を同時に愛してしまった男性が「AB両方と結婚する」と決断し、二人の妻と結婚生活ができるだろうか。あるいは、②イケメン俳優の熱烈なファンである女性が「あの人と結婚する」と決めれば、それで夫婦となることができるだろうか。結婚だけでなく、③可愛い赤ちゃんがいるので「うちの子に」と、他人が勝手に親になることは可能だろうか。また、④少し乱暴に育ってしまった子どもを「うちの子ではないです」と親子の関係を切ってしまうことは可能だろうか。逆に、⑤「この親は嫌だから隣の家の子になります」と子どもが宣言できるだろうか。また、⑥大金持ちの資産家が死亡したときに、単なるゴルフ友だちが「あの資産家の大きな家に私が住んであげる」といって住み着き、亡くなった資産家の家族を追い出そうとしたら、家族は自分たちの生活していた家を出て行かなければならないだろうか。
ここにあげた「たとえ話」を頭にイメージした場合、おそらく、「ありえない」と思ってもらえるだろう。中には「できれば良いなあ」と思う話もあるだろうが、無理だと直感的に感じてもらえるはずである。
④ルールの必要性
それでは、なぜ、自由な選択が認められる世の中で、上記のような「たとえ話」を現実のものとしてはいけないのであろうか。「常識だ」といえばそれまでであるが、常識は年齢や地域などによって、若干、異なることもある。なぜ、一人の夫に妻が二人いてはいけないのか。他人の子を自分の子としてはいけないのか。当たり前すぎて、今まで考えたことがなかった、というのが大半の答えではなかろうか。
このように人生という自由な選択の中で、なんとなく駄目とは分かっていても、考えてみれば、なぜ駄目なのかと思うことは多い。道徳や宗教観といったものも大きく影響するだろうし、感情的な判断や、非合理的なことも多い。かといって、全員が自由に好き放題にしてしまえば、一人ひとりの小さな争いは、社会全体の大きな混乱を簡単に引き起こすのである。たとえば、スポーツをイメージすれば容易に理解できるようにルールのない試合は選手にとってはただの乱闘であり、観客は応援も感動もしないに違いない。
だからこそ基本となるルールが必要となるのである。
そこで、たとえ話のようなことは駄目だ、というルールが決められ、それが「法律」と呼ばれることになる。「法律」という響きから、即座に難しいというイメージが浮かびそうだが、「ルール」というイメージを持ってもらえれば、拒否反応は少ないだろう。その中でも、結婚や親子の関係などのルールを決めているのが、これから説明していく「家族法」ということになる。
要するに「家族法」が決めるルールは、身近で、なんとなく当たり前であることが多い。その当たり前であることを法律的にみていくのであるが、基本的に当たり前と思うことが多いので、難しいというイメージは捨ててほしい。そうすれば、ただ「ありえない」と思っていたことが、〇〇という法律があるからこそ「ありえない」と考えることができるはずである。
家族法という法律はない
家族法を説明するといいながら、いきなり家族法という法律はないというのは矛盾するが、細かい話なので、深刻に考える必要はない。
大小を問わないので、是非、「六法」を開いてみてほしい。6つの法どころか多数の法律が書かれており、楽しいと思える人には楽しんでもらえる書物である。
その目次を探しても「家族法」という法律はないはずである。では、この先、ありもしない法律を説明していくのかというと、そうではない。
実は、「家族法」は、民法という法律の中に存在しているのである。
民法典(法典とは、1つの分野の法律を統一的にまとめたものであり、ここで民法典とは六法全書に文字で記載されている民法という法律であるとイメージしてもらえれば良い)は、総則・物権・債権・親族・相続という5つの編で構成されており、一般的に前の3っ、総則・物権・債権を財産法、後の2っ、親族・相続を「親族・相続法」または「家族法」と呼ぶことが多い。だから、細かい話になるが、「親族・相続法」という法律も「家族法」という法律もないのであり、厳密には民法第四編親族・第五編相続を説明することになる。ただ、本書では、一般的で読みやすいので「家族法」を採用することにする。
家族法の存在理由
①日々の生活と法律
家族法は、私たちの日常生活に密接に関係する問題を取り扱う法律である。たとえば、結婚や離婚、財産の相続など、現実に体験をしていれば分かりやすいが、たとえ現実に体験していなくても、このような人間関係をテーマとした小説やドラマなどを思い起こすことができれば、頭の中にイメージしやすいだろう。そこに登場する人々の結婚や親子の関係といった人間関係をどのように「法律的」に取り扱うかを示しているのが「家族法」である。
とはいっても、日々の暮らしの中で、人と人との関係が、法律によって縛りつけられていると感じることはほとんどない。どちらかといえば、日常生活は流されるがままに進んでいくものである。結婚といった大イベントを除いて、大部分の日常生活は、朝起きて夜眠るまで目まぐるしく過ぎ去っていくものであり、法律に基づいて生活しているなどという意識はないのが普通といえる。だから通常は、日常生活を送っていく中で、知らず知らずの間に法律に反しない生活をしている、といえるのかもしれない。
②「自分」を中心に
さて、人と人との関係をみていく家族法を学ぶ場合、「自分」を中心として親や結婚相手、そして、生まれてくる子どもなどとの関係を考えることが基本となる。「自分」を取り巻く人々のイメージを常に頭の中に描きながら読み進めていくことが理解を手助けする。
人は、この世に生まれたからには父親と母親が存在し、共に生活する時間の流れの中で、日々、成長していく。もちろん、生まれてすぐに、さまざまな理由で父母がそばにいない場合もあるだろうが、いずれにしても時間は進み、学校や社会の中で、いろいろなことを吸収していく。そして、愛する人に出会い、共に歩むことを選択することもあれば、別れを選択することもある。幸運にも子どもを授かれば、今度は自分が親となり、自分が歩んできた道を、自分の子どもが不安を抱えて歩んでいく姿を見守りながら全力で支えていく。そして、命あるものの宿命として、やがて死を迎える(わずかに残した財産をめぐる、子どもたちの争いが起こらないことを祈りながら)。
このように人の一生をわずかな行数でまとめてしまうと寂しい気持ちになるが、人生の各場面と登場人物のイメージは頭に浮かぶだろうか。どのような人生であっても、止まることのない時間の流れの中で、人は成長し、老いていく。それぞれがそれぞれの進む道を選択しながら、それぞれの最良の人生を歩んでいくのである。
その人生の選択は、基本的には一人ひとりが自由に選択し、誰の命令に従う理由もないし、他人のいうとおりにする必要もない。もちろん、自分を心配してくれる人々の助言や苦言に耳を傾けることは必要であるが、最終的には自分の自由な選択により、自分の人生を進んでいくのである。
③すべて自由でも良いか
しかしながら、すべてが自由で良いだろうか。たとえば、①AとBという女性を同時に愛してしまった男性が「AB両方と結婚する」と決断し、二人の妻と結婚生活ができるだろうか。あるいは、②イケメン俳優の熱烈なファンである女性が「あの人と結婚する」と決めれば、それで夫婦となることができるだろうか。結婚だけでなく、③可愛い赤ちゃんがいるので「うちの子に」と、他人が勝手に親になることは可能だろうか。また、④少し乱暴に育ってしまった子どもを「うちの子ではないです」と親子の関係を切ってしまうことは可能だろうか。逆に、⑤「この親は嫌だから隣の家の子になります」と子どもが宣言できるだろうか。また、⑥大金持ちの資産家が死亡したときに、単なるゴルフ友だちが「あの資産家の大きな家に私が住んであげる」といって住み着き、亡くなった資産家の家族を追い出そうとしたら、家族は自分たちの生活していた家を出て行かなければならないだろうか。
ここにあげた「たとえ話」を頭にイメージした場合、おそらく、「ありえない」と思ってもらえるだろう。中には「できれば良いなあ」と思う話もあるだろうが、無理だと直感的に感じてもらえるはずである。
④ルールの必要性
それでは、なぜ、自由な選択が認められる世の中で、上記のような「たとえ話」を現実のものとしてはいけないのであろうか。「常識だ」といえばそれまでであるが、常識は年齢や地域などによって、若干、異なることもある。なぜ、一人の夫に妻が二人いてはいけないのか。他人の子を自分の子としてはいけないのか。当たり前すぎて、今まで考えたことがなかった、というのが大半の答えではなかろうか。
このように人生という自由な選択の中で、なんとなく駄目とは分かっていても、考えてみれば、なぜ駄目なのかと思うことは多い。道徳や宗教観といったものも大きく影響するだろうし、感情的な判断や、非合理的なことも多い。かといって、全員が自由に好き放題にしてしまえば、一人ひとりの小さな争いは、社会全体の大きな混乱を簡単に引き起こすのである。たとえば、スポーツをイメージすれば容易に理解できるようにルールのない試合は選手にとってはただの乱闘であり、観客は応援も感動もしないに違いない。
だからこそ基本となるルールが必要となるのである。
そこで、たとえ話のようなことは駄目だ、というルールが決められ、それが「法律」と呼ばれることになる。「法律」という響きから、即座に難しいというイメージが浮かびそうだが、「ルール」というイメージを持ってもらえれば、拒否反応は少ないだろう。その中でも、結婚や親子の関係などのルールを決めているのが、これから説明していく「家族法」ということになる。
要するに「家族法」が決めるルールは、身近で、なんとなく当たり前であることが多い。その当たり前であることを法律的にみていくのであるが、基本的に当たり前と思うことが多いので、難しいというイメージは捨ててほしい。そうすれば、ただ「ありえない」と思っていたことが、〇〇という法律があるからこそ「ありえない」と考えることができるはずである。
家族法という法律はない
家族法を説明するといいながら、いきなり家族法という法律はないというのは矛盾するが、細かい話なので、深刻に考える必要はない。
大小を問わないので、是非、「六法」を開いてみてほしい。6つの法どころか多数の法律が書かれており、楽しいと思える人には楽しんでもらえる書物である。
その目次を探しても「家族法」という法律はないはずである。では、この先、ありもしない法律を説明していくのかというと、そうではない。
実は、「家族法」は、民法という法律の中に存在しているのである。
民法典(法典とは、1つの分野の法律を統一的にまとめたものであり、ここで民法典とは六法全書に文字で記載されている民法という法律であるとイメージしてもらえれば良い)は、総則・物権・債権・親族・相続という5つの編で構成されており、一般的に前の3っ、総則・物権・債権を財産法、後の2っ、親族・相続を「親族・相続法」または「家族法」と呼ぶことが多い。だから、細かい話になるが、「親族・相続法」という法律も「家族法」という法律もないのであり、厳密には民法第四編親族・第五編相続を説明することになる。ただ、本書では、一般的で読みやすいので「家族法」を採用することにする。
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