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統計から見る図書館

010.4『図書館を読む』より

図書館の活動を評価するのにさまざまな利用統計が使われます。来館者数、登録者数、貸出冊数、予約件数、レファレンス件数などですが、中でも貸出冊数は大変重要な統計になります。図書館の総合力がこの貸出冊数となって表れてくるといってもよいかと思います。そのため、図書館評価の指標としていろいろな形で使われます。

一つは、貸出密度。貸出冊数を設置人口で割ったもので、人ロー人当たりの貸出冊数になります。図書館活動の推移を見たり、他の図書館との比較をしたりによく使います。例えば、二〇〇六年度の岡山県内の市町村立図書館全体の貸出密度は五・一冊(全国平均五・二冊)です。これは全国の都道府県の中では十三番目です。一番は滋賀県の八・四冊、かなり開きがあります。岡山県の実力はこんなものではないはずです。

もう一つは、行政効果や効果比。サービス量を金額に換算(貸出冊数×平均単価)して使います。岡山県立図書館を例にとると、百二十万冊×平均単価=約三十六億円のサービス量となります。これから図書館費を引いたものが県民への還元額、行政効果となります。二十五億円以上の還元がなされたと考えられます。また、図書館費で割ると行政効果比となります。投じた資金が何倍になったかです。先の場合は四倍となります。

還元額は図書館活動が活発になればなるほど増えていきます。実際にお金が還元されるわけではありませんが、知識・情報がみなさん自身に、また生活や仕事や学校等の場で活かされていきます。

水や石油は使えば使うほど環境破壊や資源の枯渇につながりますが、図書館の知識や情報は使えば使うほど人を豊かにし、地域を活性化させてくれます。

(一)岡山県内市町村立図書館の貸出密度と全国比較

 岡山県内市町村立図書館全体の貸出冊数は、一時足踏みした年がありましたが、専任職員の減少や資料費の減額にもかかわらずまず順調に伸びてきています。しかし、その数字を貸出密度(市民一人当たりの貸出冊数)で全国と比較してみますと、二〇〇六年度あたりから全国平均を下回るような状況になっています。図書館界をとりまく状況が厳しい中ですが、最近貸出密度は全体として伸びています。しかし、その伸び方は岡山県よりも全国平均の方が少し大きくなってきています。順位も十位前後だったものが十七位と大きく後退しています。東京都や滋賀県の約九冊と比べると岡山県の五・六冊とはかなりの開きを感じます。岡山市立・倉敷市立・岡山県立図書館と資料費が一億円を超す図書館が三館(現在は倉敷市が約九千万と一億を少し切っている)もある県はそんなにありません。図書館ネットワークも全国に誇れるほどに充実しています。まだまだ大きく伸びる余地があるように思えます。

(二)貸出密度の高い上位十県 (二〇〇九年度)

 東京都と滋賀県が約九冊(人ロー人当たりの個人貸出冊数)とずば抜けています。二都県は独自の図書館振興策を作り、都県立図書館自体の拡充だけでなく、市区町村立図書館の設置、振興を図ってきました。東京都は「図書館政策の課題と対策」を策定し、一九七一~一九七六年度にわたって充実した振興策を実施してきました。レベルの高い本格的な助成事業としては最初のもので、東京都下の図書館整備を飛躍的に促進しました。また、滋賀県は一九八〇年代から振興策を実施しており、全国でも最低水準に近かった滋賀県の図書館界を大きく変えていきました。県としての整備基準を設け、市町村側の自己努力を求めつつ建設費と継続した資料費補助を行い、図書館開設の準備に当たっては専門職の館長の確保を指導するなど、振興策の中身は全国的に大きなインパクトを与えるものでした。こうした背景があって東京都も滋賀県も図書館設置率は高く(滋賀県は百パーセント)、それぞれの図書館活動もレベルの高いものとなっています。ただ、滋賀県では最近県立図書館の資料費が全国平均の約六千万を下回るような事態に至っていること、また、東京都については区立図書館で窓口業務の外部委託が拡大していること、職員の有資格者率が全国平均よりもかなり低いこと等心配な面も多く出てきています。

(三)岡山県内町立図書館に見る行政効果及び行政効果比(二〇〇八年度)

 県内の町立図書館を表にしましたが、平均値で見てみます。図書館に投入した費用・図書館費は約二千百万円です。図書館が町民に提供できたサービス量は金額に換算すると(貸出冊数×平均単価)約一億二千百万円にもなります。これから図書館費を引くと町民への還元額・行政効果となるわけですが、約一億円にもなります。また、図書館費で割った場合の行政効果比をみると約五・七倍と、図書館への二千百万円の投入が五・七倍にもなった、大変大きな効果が見てとれます。

 図書館活動は、その効果がなかなか見えにくいだけに注目されない弱さがありますが、少し視点を変えて図書館活動を数字に置き換えてみると、図書館が持つ力の大きさが分かりやすくなります。しかもこの数字は資料の貸出し以外の図書館サービスを加算すると更に大きくなるわけです。

(四)貸出密度が高い他県町村立図書館の行政効果及び行政効果比(二〇〇八年度)

 岡山の町立図書館に見る行政効果・比を先に見てみましたが、ここでは全国の町村立図書館で極めて活動が盛んな五つの図書館を取り上げてみました。

 図書館に投入する費用に対してサービス量、行政効果、行政効果比がいかに大きいものであるか分かります。図書館での資料の提供がもたらすものは、経済的な視点からもその効果が見てとれますが、数字には現れない利用者の豊かな人生、生活にも貢献していることは間違いのないところです。
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