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シェアの法則が、これからの産業界を牽引する

『ソーシャルシフト』より

ザッカーバーグ氏は、2011年はソーシャルメディアにとってターニングポイントとなると宣言、これからはつながりの数ではなく、その上で何を築くことができるかが人切だと強調した。そして、今後5年のFacebookの方向性を次のように話している。

 ●次の5年間、Facebookにとって重要となる指標は、人々が得た価値の量、費やした時間、アプリの数、動かした経済などだ。

 ●共有される情報量は、指数関数的な割合で増加している。前年と比べ、―人あたりの共有は約2倍。少なくとも今後2年間はこのトレンドが続くと思われる。

 ●我々は(共有の成長に関する)指数関数カーブの「屈曲部」にいる。今後開発される機能は、共有に指数関数的成長をもたらす。

特に重要な点は、Facebook上で1人あたりの情報共有量が年間2倍になっている(以降、この経験則を「シェアの法則」と呼ぶ)という事実だ。会員数が爆発的に増加しているだけでなく、会員一人あたりのシェア量が2倍になっているわけで、人類がソーシャルメディア上で共有する情報量が指数関数的に増えていくことを示唆しているわけだ。

その予告通り、ザッカーバーグ氏は、2011年9月に開催された開発者向け大規模カンファレンスF8において、「いいね!」に加えて「見る」「聴く」「読む」「走る」といった行動をFacebook上に記録し、自分の行動履歴をタイムラインとして表示させる革新的な新機能を発表する。そしてシェア文化をさらに強力に推進していく意欲をにじませた。

これまでIT分野を力強く牽引してきたのは、インテルの共同創業者であるゴードンームーア氏が語った経験則、半導体の集積密度は18ヵ月で2倍になるという「ムーアの法則」だ。この法則に基づき、40年もの間、CPU、記憶装置、それに付随した多様なハードウェアが指数関数的に性能向上した。その結果、端末や通信コストが劇的に低下し、世界中に無数のコンピュータが配られ、やがてインターネットでひとつに結ばれた。ムーアの法則は、パソコン(PC)はもちろんのこと、携帯電話やゲーム機、家電などあらゆるハードウェア産業、そしてその情報機器を接続するための通信産業、情報機器上で稼働するソフトウェア産業、インターネットを利用したWebサービス産業と、極めて大きな産業牽引力となってきた。「パラダイムシフト」という言葉がある。科学史家トーマスークーンが著書『科学革命の構造』(みすず潜房)で提唱した概念で、その時代において常識と思われていた認識や思想、価値観が覆される様を指す言葉だ。典型的なパラダイムシフトの例としてコペルニクスの「地動説」がある。地動説は、それまで常識だった宇宙が地球の川りを川っているという考え方から、地球が太陽の周りを回っているという見方へと非連続的な変化を促したパコベルニクス的転用」とも同義語だ。

ムーアの法則は、ハードウェア、通信といった情報インフラを指数関数的に進化させたが、それを動かすためのソフトウェア、そのソフトウェアを操作する人間の機能は自然な向上にとどまった。そしてソフトウェアや操作する人間が情報流通のボトルネックとなってゆく。その結果、世の中に流通している情報量と、実際に人々が消費している情報量に極めて大きなギャップが生じてしまった。世の中を便利にするはずの情報社会において、ジャンクな情報が大量に発生し、機能的にボトルネックとなった人間が情報過多に苦しむようになったのだ。

現在、半導体の集積密度は分子の5倍程度にまで極小化し、ムーアの法則は物理的な限界点に近づきつつある。その一方で、Facebookが牽引するシェアの法則が、ムーアの法則が導いた情報洪水を人間系の生産性を高めるカタチで解決しはじめた。それが、信頼できる友人による「知っておくべき情報」の選別、ソーシャルーフィルタリングだ。

シェアの法則により、人々が情報を加速度的にシェアしはじめると、このフィルター機能が指数関数的に強化される一方、既存メディアのパワーは相対的に低下していく。今後3年間で、国内のソーシャルメディア利用者数が2倍となり、1人あたりのシェア量が8倍になると仮定すると、日本人のシェアする情報量は16倍にも膨れ上がる。人間は、自分と関係ない人の大きなニュースより、関係ある人の小さな話題に強く引かれる生き物だ。1日の時間は限られている。「自分ごと」の情報が16倍になるということは、それ以外のメディアから垂れ流される情報の多くは、今以上にスルーされるということだ。つまり、人々が興味を持たない、楽しめない、共感できない一方的な情報は全く知覚されない。そんな時代がそう遠くない将来、確実にやってくるであろうことを意味している。
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