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企業と消費者、消費者同士のつながり 

『攻めのIT戦略』より ITで顧客接点を高度化 つながりを活かす

「つながりを活かす」ということについて、考えてみたい。ここでいう「つながり」には大きく二つのつながりがある。一つは、企業と消費者のつながり、もう一つは消費者同士のつながりである。

一つ目の企業と消費者とのつながりでは、近年、注目されている新たな経験価値として、「共創」経験がある。顧客は単に購買者としての位置にとどまらず、自分が気に入った企業の取り組みに協力し、一緒に何かを創り出す経験を求めている。企業とのつながりを重視する顧客は、商品企画に参加し、商品の宣伝を自ら買って出る。企業の活動に参画することで、ますますその企業の商品・サービスの対する愛着が深まり、高いロイヤリティを示すようになる。この好循環サイクルをいかにうまく回していくかが、今後の知恵を使いどころと言えよう。

現在、多くの企業が、ネット、特に自社で運営するSNS等をコミュニケーションのプラットフォームとして、顧客と共同で商品を企画する試みを推進している。商品・サービスに関するニーズを市場調査で捉えるのではなく、顧客を巻き込み、ニーズに応える商品・サービスを具体化する過程で、顧客とコラボレーションする。

もちろん、すべての商品をこのような形で提供することが良いわけではない。企業自体が意志を持って、顧客が気付かないような価値を提供するため、商品を企画して上市することも重要であろう。特に飛躍的なイノベーションを必要とするような商品は、顧客の真のニーズを洞察し、これに最新の技術を組み合わせることで、初めて生まれるものであり、顧客とのコラボレーションがう圭く機能するとは限らない。

しかし、通常企業が提供する商品・サービスは、すべてがすべて、そのような革新的なイノベーションに基づくものばかりではないだろう。いわゆる商品・サービスのポートフォリオをう圭く管理し、自社の商品・サービスのうち、顧客とのコラボレーションが有効なのはどのようなものかをしっかりと検討したうえで、コラボレーションを推進する必要がある。

今後、このような顧客とのコラボレーションは、様々な領域に拡大していくことが想定される。企業は商品企画以外にも様々な機能を持っている。プロモーションの領域は、アフィリエイトといった形で、既に一部を消費者が担っている。さらに販売や、商品の受け取り等、様々な領域で、うまく消費者を巻き込み、消費者の力を活用することができないか、常に検討する必要がある。

一方、消費者同士のつながりをうまく活用することも重要である。現在、多くの消費者は、何らかのソーシャルネットワークを利用し、相互につながっている。企業が顧客との間で行った様々なやり取りは、たちまちのうちに消費者の間で共有され、企業からのメッセージとして、伝播する。ある顧客からの問い合わせへの対応に難があっただけで、その経験は、リアルタイムにその顧客の知り合いに、極めて信頼性の高い情報として伝わる。仮に「顧客第二を標榜し、テレビCMでそのようなメッセージを流していても、それ以上に強い影響を持つメッセージ媒体として、SNSが機能するのである。

このような顧客のつながりを、自社のメッセージを顧客に伝える媒体として、う圭く活用していく必要がある。その際に留意すべき点は、SNSを媒体として利用する場合、「伝えたい」メッセージではなく、「(実際に)伝わったメッセージ」が拡散するという点である。企業が自社が伝えたいメッセージを「言葉」としてコントロータすることは不可能であり、顧客は自身の体験から得た企業からのメッセージを、自分の言葉で伝える。

SNSを活用して企業がメッセージを伝える際に、最も重要な点は、「どのようなコンテンツを、どのようなSNSに投稿するか」ではなく、あらゆる顧客接点における顧客の「経験」が、自社が顧客に理解してほしいメッセージに沿っているかどうかをチェックすることである。

このような活動を支えるIT技術として、SNSの投稿を解析するテキストマイニングや、SNS上での顧客のつながりを可視化する、ソーシャルグラフといったものがある。

ソーシャルグラフを利用することで、消費者の中に発生しているコミュニティ(っながりの単位)や、そのコミュニティの中心となる消費者の存在を確認することができる。コミュニティの中核となるような影響力を大きい消費者を、インフルエンサーと呼ぶが、様々な研究結果によれば、インフルエンサーの影響力というのは、特殊な場合を除いて、さほど大きくはないということも言われている。言い換えれば、やはりすべての消費者は等しく大きな影響力を持ちうるのであり、インフルエンサーヘの対応だけに注力するよりは、あらゆる消費者に対する顧客接点で誤ったメッセージが伝わらないよう、チェックすることが重要であるということになる。

そのような消費者のコミュニティの中を、どのようなメッセージが、どのように変化しながら伝播するのか、企業は今後注意してモニタリングする必要がある。伝貪ゲームのように形を変えるメッセージが、最終的にどのようなものになるかをきちんと把握し、これに適切な手を打たなくてはならない。メッセージが自社にとって不都合な方向に変わった場合は、その根源となった自社の要因を改善するのは当然として、そのことを再度、消費者のコミュニケーションネットワークに届けなくてはならない。

個々のSNSは流行り廃りが激しいため、どのSNSでアプローチするか等は、今後も継続的に変わっていくのであろうが、企業と消費者のコミュニケーションが双方向かつ、多数の間で共有される構造は、今後も変わらないであろう。企業は、今後、これらの消費者とのコミュニケーションの根本的な変化に対応し、新たな顧客経験を創り出していく必要がある。
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