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ドイツ語で世界を読み解く-シェールガス革命

『ドイツ語で世界を読み解く』より

新たな採掘技術のお陰でアメリカは世界最大のガス、石油生産国となる。今のところ、爆発的に高まっているのは儲けではない、胸算用である。国際エネルギー機関(IEA)は最も新しい報告で、その胸算用に火をつけた。 2020年までに米国は最大の石油産出国となり、それによってこれまでのトップを行く生産国であるサウジアラビアとロシアを抜き去る。それどころかもっと早く、つまり2015年には合衆国は天然ガスでも世界一を占めるだろうというのである。

米国はいかにしてこれを成就するというのか? 今から100年分に足りるという米領土地下の埋蔵シェールオイル、シェールガスによってである。 2005年以降、その地下層の埋蔵資源をフラッキングによって大規模に採取している。そのさい、水、砂、化学物質が地盤中に押し込まれる。岩石を破砕し透過性をよくするためのものだ。このようにして岩石中に縛りつけられていたガス、あるいは石油が採取される。しかし、このフラッキング技術は論争の的である。なぜなら、部分的に毒性を持つ化学物質混合物が大地の中に残るだけでなく、地下水にも浸み込むのだ。

しかしながら収益を勘案すれば、フラッキングは米国において巨大な成功例というに値する。特にガスの場合がそうだ。過去2年間だけで採掘されたシェールガスの比率は米国で7倍以上となった。採掘量の4分の1はすでにこの新規な方法で市場に出て、そこではいくつかの企業が早い者勝ちでガスをダブダブとマーケットに押しだし、その結果値段は10年来の低さに落ちた。エネルギー機関IEAの見通しによれば、2035年までに全世界で2兆8000億ドルがフラッキング技術による天然ガス採掘にジャブジャブ投じられる。

ただ、採掘ができれば採掘してよいかどうかは、まだまだ決着がついていない。なぜなら、環境への損傷がほとんど評価されていないというので、採掘業者を相手にした反対運動が多くの国々で形成されているからだ。「シェールガスの資源潜在量とそのコストはきわめて不確かである」とリチャード・ニューエルEIA事務局長はこの6月に言ったばかりだ。エネルギー問題の権威者クリス・ネルダーも警告する。「どのくらいのガス埋蔵量が採掘に値するものと証明されているのか、我々はこれまでわからず仕舞いのままだ。そして今後の何年間もおそらく我々はそれを知らずにいるだろう」と。開発企業が将来、法律によって掘削地点の安全措置、汚染水対策の改善、あるいは毒性のない化学物質への転換を強いられるならば、企業にはなおも巨額のコストがかぶさってくる可能性がある、とも。だがしかし、多くの人々は天然ガスの見通しを長期的には好ましいとみなしている。勇気ある人々はエクソン株に買いを入れ、ブームが2、3年のうちに大音響をあげて終結することがないことを願っている。

米国のシェールガス陶酔はドイツでも安価なエネルギーの夢を育てている。全世界的なトレンドはいよいよ強い。実際、天然ガス供給国のロシアはすでに重圧下にある。自国産の燃料が電力料金負担を下げ、それと並んでエネルギー転換に生きる道を与えるかもしれないのだ、とエクソン社のような大企業は予言する。しかし、専門家たちでそれを信じる人はほんどいない。

牧草地と温室群の中間地点で馬頭型をした2基の石油探堀ポンプが苦しげに首を上げたり下げたりしている。ベンキは剥げ落ち、採掘量は減っている。ハンブルクのライトブルック地区の住民たちはこの石油・ガス採掘事業はやがて彼らの地域にもはや関心を持たなくなる、とずっと前から決めつけている。とんでもないことが起きた。鉱山局はエネルギー多国籍コンツェルンのエクソン・モビール子会社にこの地域の石油、ガスの埋蔵量について調査することを最近認可したのだ。住民はそれ以来大騒ぎだ。住民が恐れるのは、エクソンがいつかシェール・ガスを物議の的であるフラッキング採掘法で汲み上げるつもりであることだ。同社はその可能性を否定したがらない。

エクソン、BNK石油、ウィンターシャル、それからBGインタナショナルのようなコンツェルンはこのところドイツの地下をあっちに行きこっちへ行き調べ回している。米国におけるシェールガス・ブームを目撃して、これらの企業はこの地にも同様に地下巨額財宝が隠されていないか、探り出そうと狙っているのだ。「ドイツは胸を躍らせるマーケットだ」とエクソンのスポークスウーマンは語る。鉱脈が存在すればそれは同時に、エネルギー源転換による電力判・金高騰を不安がるドイツ経済全体にとっての活性化療法になるはずだ。「エネルギー価格が下がれば消費者も産業も」利益を受けるだろう、とエクソンはカネや太鼓のキャンペーンぶりだ。

実際には、シェールガスはドイツのエネルギー問題解決に寄与するところ小さいと言ってよいだろう。ドイツではこれまでまだ試みられていないフラッキング工法に対する住民の抵抗だけに理由があるのではない。この工法においては掘削機が水平方向に頁(けつ)岩の中へ掘り進み、水、化学物質を手段としてガスが地中から押し出される。「ドイツの埋蔵量は熱せられた石の上の一滴のようなものだ」と、ブルームバーグ社の米国ガス問題アナリスト、C・ブランチャードはガス相場の上がり下がりに目をやりながら述べる。

「シェールガス・ストーリーは、ヨーロッパでは誇張されている」。とりわけドイツのシェールガスなど無きも同然としてしまうのは、ガスの世界規模奔流である。カタールの圭うな輸出国は同国産の液化ガス(LNG)を供給過剰の米国への代わりにアジアとヨーロッパに向け船出しする。こういうことすべてがガス価格を下げる。これに対してドイツでのカネのかかるガス生産は、専門家多数の言によれば価格をほとんど引き下げない。米国以外でシェールガス革命を待つ者は幻滅を味わうだろう、とドイツ銀行は2011年の調査報告ではっきり述べている。
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