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「接客サービス」から高度サービス化

『カフェ・バッハの接客サービス』より

「接客サービス」がなぜ大切なのか

 カフェ・バッハではある意味、コーヒーよりも接客サービスを大切にしてきました。それは、「カフェの役割」を果たすための基礎になるのが、接客サービスだからです。

 接客サービスはたいへん難しいテーマで、私自身、カフェ・バッハを開いて45年以上になりますが、試行錯誤の連続でした。失敗も数多く経験しています。良かれと思った接客が、相手を不快にさせてしまったことも一度や二度ではありません。しかし、私はめげませんでした。カフェにとって何よりも大切な「役割」を果たすためには、接客サービスが必ず必要になるからです。だから私はママやスタッフだちと接客サービスについてとことん語り合い、カフェ・バッハなりの接客サービスを築き上げてきました。当たり前のことが当たり前にできて初めて、その先にあるカフェの役割を果たせるのだと思います。

接客サービスの先にある「カフェの役割」では

 カフェ・バッハでは、自家焙煎のコーヒー、コーヒーに合うお菓子やパンと真摯に向き合い続けてきました。カフェにとってコーヒーやお菓子はとても大切です。実は、私がそれ以上に大切にしてきたことがあります。それがカフェの役割です。

 東京の山谷(現在の台東区日本堤)と呼ばれた場所にカフェを開き、地域の人たちに、また社会に何かできるのか。創業当時は、漠然としながらですが、そんなことを考えながら、日々営業していました。

 そんな漠然としたものを、確固たる考えとして認識することができたのが、1980年のヨーロッパの視察旅行でした。

 フランス、イタリア、チェコスロバキア、オーストリア、旧東西ドイツの国々を見て周りました。これらの国々を周って感じたのは、カフェが人々の生活の一部になっていることでした。

 日本にカフェが登場したのは明治の中頃の1888年で、上野に『可否茶館』が開業したのが最初と言われています。そのもっと以前に、ヨーロッパにカフェが登場しています。古くから受け継がれ、今も愛されているカフェは決して少なくおりません。

 かつてパリのカフェは、市民生活の一部を担い、人々が集ってコーヒーを飲みながら情報を交換し、その中から世論なり思潮を形成するサロン的な役割も果たしていました。

 また、ヨーロッパを周って、美術館には必ずカフェが併設されていることも分かりました。そこでは、コーヒーを味わいながら、絵画について語り合う人たちの姿がありました。カフェが文化と密接に結びついていることに気づかされ、改めてカフェの役割について考えました。

カフェ・バッハを支えてきた接客サービス

 カフェ・バッハは、束京・山谷に開業し、45年以上にわたって営業を続けています。お陰様で、コーヒー自家焙煎店として評価していただき、全国的に知られる存在になりました。

 これまでに雑誌やテレビなどでもたびたび紹介され、地域の人たちだけでなく、全国からもたくさんのコーヒー愛好家の方に来ていただいています。

 これもコーヒーひとすじに一所懸命取り組んできたことが、お客様からの高い評価につながっていると考えています。

 これからカフェやコーヒー自家焙煎店を開業しようと考えている人、また現在それらの店を営業している人にぜひ知っていただきたいのは、今日のカフェ・バッハを支えてきた大きな柱があるということです。それが、接客サービスです。

 コーヒーと接客サービス。このふたつの柱があって、今日のカフェ・バッハがあります。

 カフェ・バッハでは、創業以来、コーヒーと同じように、いやそれ以上に接客サービスを大切にし、力を注いできました。

カフェ・バッハが接客サービスか重要視する理由どは

 カフェ・バッハが、接客サービスをたいへん重要視しているのには理由があります。それは、カフェという業種特性ゆえのもので、お客様の来店動機が希薄であるということです。

 分かりやすいように、車を購入する時のお客様の動機と比較してみましょう。大金を払って購入する車は、なぜその車を選んだのかその理由がはっきりしています。

 例えば乗り心地が良いから、燃費が良いから、デザインがかっこ良いから・・・など購入時の動機がはっきりしています。

 これに対して、カフェを利用するお客様の来店動機は?もちろん、コーヒーがおいしいからというお客様もいるでしょう。しかし、どうしてもその店を利用しなければならない、といった明確な来店動機がいまひとつ希薄なのも確かです。

 それだけに、自店にお客様を呼ぶには、〝ぜひその店へ行ってみたい″と思わせる魅力づくりが必要不可欠になってきます。その魅力づくりの土台となるのが、接客サービスなのです。

「コーヒー1杯で最高のかもてなし」を目指すのはなぜか?

 カフェ・バッハでは、「コーヒー1杯で最高のおもてなし」に挑戦してきました。1人何万円もする三つ星レストランと同じようなおもてなしを目指してきました。

 こうしたやり方を見て、同業者の中には、「1杯500円のコーヒーを売っているコーヒー自家焙煎店が、1人何万円もする料理を提供しているレストランと同じ接客サービスをして意味があるの?」ということを言う人もいます。

 でも、これは少し違うと思います。コーヒーは1杯500円でも、カフェ・バッハを気にいって来店されるお馴染みのお客様は1ヵ月に何度も来店してくれます。仮に2日に一度の割合で来店していただいたとします。500円×15日=7500円 1ヵ月で7500円、2ヵ月で1万5000円、3ヵ月で2万2500円。たいへん大きな金額をカフェ・バッハで使っていただくことになります。

 これは高級レストランに3ヵ月に1回来店されるお客様とほぼ同じくらいの金額になると言えないでしょうか。ということは、1杯500円のコーヒーを楽しみに来店されるカフェ・バッハのお客様も、高級レストランを利用されるお客様も使っていただく金額は同じということです。だから、カフェ・バッハでは、「コーヒー1杯のお客様に対しても最高のおもてなし」ができるように努めています。

基本と個人への接客サービス。サービスには大きく分けてふたつある

 接客サービスには大きく分けてふたつある--カフェーバッハではそのように考えています。

 ふたつの接客サービスとは、基本の接客サービスと個人への接客サービスです。

 基本の接客サービスとは、例えば、挨拶でいえば、「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「失礼致します」といったものです。必要最低限だが、決して疎かにできない挨拶です。

 店によっては、今日入店したアルバイトの人でもできるようにマニュアルを作って、徹底的に教え込んでいるところもあります。

 カフェ・バッハでも、この基本の接客サービスはたいへん重要に考えて大切にしています。

基本の接客サービスか疎かにすると不公平感が生じる

 個人店でよく見られるケースですが、「個人のキャラクターを生かせばいいだろう」ということで、基本の接客サービスを疎かにしていることです。

 例えば、お馴染みのお客様と話し込んで、初めて来店したお客様にきちんと挨拶しない。本人はまったく気づいていないようですが、これは個人店が地域社会の中で商売していくうえでたいへん危険なことです。

 〝なんで私にだけ挨拶がないの″という気持ちをお客様に抱かせ、不公平感が生じるからです。この不公平感が、お客様を失う大きな要因になります。
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