未唯への手紙
未唯への手紙
AIの動向を知る
『武器としてのITスキル』より 新しいテクノロジーの基本を知る
まず一般的に「人間の脳の役割を担うのがAI」と思われがちですがそれは正確ではありません。「人間の脳の考え方のアルゴリズムや仕組みをコンピュータに適用する」のがAIです。
AIとは何か、ということについては各研究者がさまざまな定義をしていますが、将来的に人間と同じような思考ができる、人間の脳にとって代わる存在になる、ということを指しているわけではないということは理解しておきましょう。
AIは実は1950年代から研究されてきた概念であり、過去2度、世界的なブームを経験してきました。
第1次AIブームが1950年代後半から1960年代、第2次ブームが1980年代から1990年代前半、そして現在2010年代に第3次ブームを迎えています。過去のAIブームの変遷をみていきましょう。
第1次AIブームはコンピュータを使って「推論・探索」をすることで特定の問題を解決することに取り組んだ時代です。
たとえば、将棋で「この手を指したら次に相手はどの手を指すか」というサンプルデータをコンピュータに大量に読み込み、確率論で推計して最適な指し手を提案する、というレペルにとどまっていました。
人間の思考でいえば、1つの選択肢を選んだら、その後何が起こりうるかの場合分けを行って考える思考法に近いコンセプトです。ただし当時のコンピュータの処理能力ではそれほど複雑なものを短期間で計算することができず、実用化には至りませんでした。
第2次AIブームでは、コンピュータに大量の「知識」を記憶させ、各分野の専門家の仕事を代替させるエキスパート・システムを目指しました。たとえば、質問に順番に答えていくと患者が感染した細菌を特定し、専門医の代わりに薬を処方してくれるシステムなどです。
この時点でも、第1次ブーム時よりは複雑なことができるようになりましたが、本質的にはあまり変わらない状況でした。また、より多くの知識をコンピュータに覚えさせ管理する煩雑さや、明確ではない漠然とした一般常識のようなものを覚えさせる難しさなどが明らかになるとブームは去っていきました。
ただし、この時代に、どのように指示をしたらコンピュータが知識をよりよく記憶できるか、より効果的・効率的に動くかという研究が進み、さまざまなプログラミング言語が生まれたことは大きな成果だったといえます。
現在の第3次AIブームは。、過去のブームと比して革新的といわれています。その理由は「機械学習」のアルゴリズムの進化です。機械学習はコンピュータが与えられた大量のデータからデータの「分け方」を自動的に習得し、それを使って未知なデータが与えられても「分ける」ことが可能になります。
たとえば、皆さんは子供に「魚」というものを教える時にどのようにしますか。
すると、今までみたことがなかった種類の「魚」の写真をみても、その特徴をみて「魚」かどうかを判断することができるようになります。こめプロセスを実現したのが機械学習アルゴリズムです。従来は人間の作業であった分類するための特徴の抽出をコンピュータが自動的に学習しながら行うことができるようになったのです。
機械学習の基礎的な理論自体は最近生まれたことではありませんが、近年利用が急速に拡大しています。背景としては、前節で触れたビッグデータにより学習データの入手が容易になったこと、コンピュータの処理能力が向上し処理時間が実用レベルに短縮されたこと、そして、技術的ブレークスルーとしてディープラーニングというアルゴリズムが登場したことなどが挙げられます。
ディープラーニングとは機械学習のアルゴリズムの1つで、人間の脳のシナプスのつながりをコンピュータに適用したものです。人間の脳と同様にたくさんの情報を与えるとシナプスが反応して勝手に学習していくのです。
ディープラーニングを活用した有名な事例に手書き文字の認識があります。画像認識の世界ではよく使われる標準的な手書き画像データセットに「MNIST」というものがあります。
これは28×28 = 784ピクセルの大きさの手書き文字画像と正解ラベル(たとえばこの画像は「3」が正解など)をつけたデータをピクセル単位に分解して7万枚分ニューラルネットワークに読み込んで認識させるものです。
すると、コンピュータが自らデータから学習し、読み込ませた画像が何割の確率で「3」なのかを判断できるようになるのです。
1980年代にはすでに理論は確立されていましたが、784ピクセルを7万枚分、つまり5488万個のデータを実用レベルの時間内で処理できるレベルにまでコンピュータの能力が向上したからこそ実用化することができたのです。
このように現代のAIの能力は飛躍的に向上しましたが、万能ではありません。得意なこと、不得意なことを理解し、適切な期待を持って活用することが重要です。前節でも触れたように、AIが得意なことはデータの識別と予測、発見です。これらは2018年現在、AIサービスの主戦場ともなっています。
今後期待される領域は「会話」です。人間と話す際と同じように会話をすることができるAI技術は大変難易度が高く、まだ実用に堪えうるものはありません。なぜならば、AIの能力を向上させるために重要なことは、大量のデータをどれが正解か不正解かというラペルとともにインプットできることです。しかし、そもそも何か正解か不正解かを人間が決められないものは、AIも判断することはできないのです。
たとえば、人間同士の会話で、Aさんの「今日はよい天気ですね」という問いかけにBさんが「ムカつく!」と答えた、という会話は一見まったくかみ合わないようにみえますが、状況によっては違和感なく成り立つこともあるでしょう。
「AIが発達すると人間の仕事が奪われてなくなるのではないか」というようなことがホラーストーリーとして語られることがあります。確かに、AIで代替できる仕事も多数あるでしょう。
しかし、人間がする方がよいこと、人間にしかできないことがまったくなくなるということはありません。AIが進化した世界を闇雲に不安に思うのではなく、AIについて正しく理解し適切に活用していくことが大切です。
たとえば、弁護士の業務であれば、過去の判例を探すといった業務は紙の資料にあたって探すよりも大量データを読み込んだコンピュータに探させた方がずっと正確でスピードも速いことは明らかでしょう。一方で、対話を通じてクライアントの気持ちをほぐし、本音を引き出したり勇気付けたりする業務は人間が担う方がよいでしょう。
日本をはじめ、多くの先進国のように、労働人口減少に直面している経済においては、コンピュータが得意なことは任せてしまい、人間は人間がする方がよいことに集中する、というように協働しなければこれからの経済は成り立ちません。
人間が、AIの得意なことや不得意なこと、可能性と限界を正しく理解すること、そして、コンピュータが得意なことについては、コンピュータが効果的に仕事をするように人間が適切に指示をし、任せることが大切です。
まず一般的に「人間の脳の役割を担うのがAI」と思われがちですがそれは正確ではありません。「人間の脳の考え方のアルゴリズムや仕組みをコンピュータに適用する」のがAIです。
AIとは何か、ということについては各研究者がさまざまな定義をしていますが、将来的に人間と同じような思考ができる、人間の脳にとって代わる存在になる、ということを指しているわけではないということは理解しておきましょう。
AIは実は1950年代から研究されてきた概念であり、過去2度、世界的なブームを経験してきました。
第1次AIブームが1950年代後半から1960年代、第2次ブームが1980年代から1990年代前半、そして現在2010年代に第3次ブームを迎えています。過去のAIブームの変遷をみていきましょう。
第1次AIブームはコンピュータを使って「推論・探索」をすることで特定の問題を解決することに取り組んだ時代です。
たとえば、将棋で「この手を指したら次に相手はどの手を指すか」というサンプルデータをコンピュータに大量に読み込み、確率論で推計して最適な指し手を提案する、というレペルにとどまっていました。
人間の思考でいえば、1つの選択肢を選んだら、その後何が起こりうるかの場合分けを行って考える思考法に近いコンセプトです。ただし当時のコンピュータの処理能力ではそれほど複雑なものを短期間で計算することができず、実用化には至りませんでした。
第2次AIブームでは、コンピュータに大量の「知識」を記憶させ、各分野の専門家の仕事を代替させるエキスパート・システムを目指しました。たとえば、質問に順番に答えていくと患者が感染した細菌を特定し、専門医の代わりに薬を処方してくれるシステムなどです。
この時点でも、第1次ブーム時よりは複雑なことができるようになりましたが、本質的にはあまり変わらない状況でした。また、より多くの知識をコンピュータに覚えさせ管理する煩雑さや、明確ではない漠然とした一般常識のようなものを覚えさせる難しさなどが明らかになるとブームは去っていきました。
ただし、この時代に、どのように指示をしたらコンピュータが知識をよりよく記憶できるか、より効果的・効率的に動くかという研究が進み、さまざまなプログラミング言語が生まれたことは大きな成果だったといえます。
現在の第3次AIブームは。、過去のブームと比して革新的といわれています。その理由は「機械学習」のアルゴリズムの進化です。機械学習はコンピュータが与えられた大量のデータからデータの「分け方」を自動的に習得し、それを使って未知なデータが与えられても「分ける」ことが可能になります。
たとえば、皆さんは子供に「魚」というものを教える時にどのようにしますか。
すると、今までみたことがなかった種類の「魚」の写真をみても、その特徴をみて「魚」かどうかを判断することができるようになります。こめプロセスを実現したのが機械学習アルゴリズムです。従来は人間の作業であった分類するための特徴の抽出をコンピュータが自動的に学習しながら行うことができるようになったのです。
機械学習の基礎的な理論自体は最近生まれたことではありませんが、近年利用が急速に拡大しています。背景としては、前節で触れたビッグデータにより学習データの入手が容易になったこと、コンピュータの処理能力が向上し処理時間が実用レベルに短縮されたこと、そして、技術的ブレークスルーとしてディープラーニングというアルゴリズムが登場したことなどが挙げられます。
ディープラーニングとは機械学習のアルゴリズムの1つで、人間の脳のシナプスのつながりをコンピュータに適用したものです。人間の脳と同様にたくさんの情報を与えるとシナプスが反応して勝手に学習していくのです。
ディープラーニングを活用した有名な事例に手書き文字の認識があります。画像認識の世界ではよく使われる標準的な手書き画像データセットに「MNIST」というものがあります。
これは28×28 = 784ピクセルの大きさの手書き文字画像と正解ラベル(たとえばこの画像は「3」が正解など)をつけたデータをピクセル単位に分解して7万枚分ニューラルネットワークに読み込んで認識させるものです。
すると、コンピュータが自らデータから学習し、読み込ませた画像が何割の確率で「3」なのかを判断できるようになるのです。
1980年代にはすでに理論は確立されていましたが、784ピクセルを7万枚分、つまり5488万個のデータを実用レベルの時間内で処理できるレベルにまでコンピュータの能力が向上したからこそ実用化することができたのです。
このように現代のAIの能力は飛躍的に向上しましたが、万能ではありません。得意なこと、不得意なことを理解し、適切な期待を持って活用することが重要です。前節でも触れたように、AIが得意なことはデータの識別と予測、発見です。これらは2018年現在、AIサービスの主戦場ともなっています。
今後期待される領域は「会話」です。人間と話す際と同じように会話をすることができるAI技術は大変難易度が高く、まだ実用に堪えうるものはありません。なぜならば、AIの能力を向上させるために重要なことは、大量のデータをどれが正解か不正解かというラペルとともにインプットできることです。しかし、そもそも何か正解か不正解かを人間が決められないものは、AIも判断することはできないのです。
たとえば、人間同士の会話で、Aさんの「今日はよい天気ですね」という問いかけにBさんが「ムカつく!」と答えた、という会話は一見まったくかみ合わないようにみえますが、状況によっては違和感なく成り立つこともあるでしょう。
「AIが発達すると人間の仕事が奪われてなくなるのではないか」というようなことがホラーストーリーとして語られることがあります。確かに、AIで代替できる仕事も多数あるでしょう。
しかし、人間がする方がよいこと、人間にしかできないことがまったくなくなるということはありません。AIが進化した世界を闇雲に不安に思うのではなく、AIについて正しく理解し適切に活用していくことが大切です。
たとえば、弁護士の業務であれば、過去の判例を探すといった業務は紙の資料にあたって探すよりも大量データを読み込んだコンピュータに探させた方がずっと正確でスピードも速いことは明らかでしょう。一方で、対話を通じてクライアントの気持ちをほぐし、本音を引き出したり勇気付けたりする業務は人間が担う方がよいでしょう。
日本をはじめ、多くの先進国のように、労働人口減少に直面している経済においては、コンピュータが得意なことは任せてしまい、人間は人間がする方がよいことに集中する、というように協働しなければこれからの経済は成り立ちません。
人間が、AIの得意なことや不得意なこと、可能性と限界を正しく理解すること、そして、コンピュータが得意なことについては、コンピュータが効果的に仕事をするように人間が適切に指示をし、任せることが大切です。
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