未唯への手紙
未唯への手紙
地方分権型の税・社会保障システム
『北欧モデル』より 北欧諸国の税・財政システム
北欧諸国の所得課税のもうひとつの特徴は、社会保障の財源の大部分が地方所得税(日本の住民税に相当)で賄われていることである。逆に、国税の所得税の最高税率を見ると、フィンランドの30%が最も高く、次いでスウェーデン25%、ノルウェー24・55%、デンマーク18・67%と全般的にかなり低い水準にある。
他方で、住民税のほうは、個別自治体により税率が異なるのが大きな特徴だ。とりわけスウェーデン、デンマークでは、税率水準が20%~30%台と、所得税と比べて高いことが指摘できる。
その理由は何か。これらの国々では、地方分権が進んでおり、国によって多少の差異はあるものの、年金を除く医療・介護・福祉など社会保障の実施主体は地方自治体で、国と地方の役割分担が明確である。また、地方が社会保障を賄う自主財源を住民税というかたちで住民から徴収しているという点で共通している。このため、地方が行う社会保障の財源を地方が徴収していることから、国民(住民)にとっては、「受益と負担の関係」がきわめてわかりやすい制度だといえよう。住民はサービスの価格に不満があれは税率引き下げを求めることができるし、逆に、サービスの質に不満があれば、税率の引き上げを前提にサービス改善を要求できるからだ。
こうした方式は、日本と大きく異なる点であり、日本では国から地方へ交付金・補助金というかたちで財政補填がなされているため、税の使われ方に納得感が乏しいだけでなく、無駄なものに使われているという国民意識が強い。
このところ格差が拡大している日本では、公平な所得再配分を求める声が強まっているが、北欧諸国の高福祉・高負担型の税・財政システムは、高い所得再配分機能を有しており、公平な所得分配を実現している。この状況を所得格差を表すジニ係数でみると、デンマークとスウェーデンが0・23と世界一所得格差が小さく、ノルウェーが0・28となっており、わが国(0・32)やOECD平均(0・31)を大きく下回っている。
なお、税や社会保障給付による再分配前のジニ係数は、日本が0・44に対し、スウェーデン、ノルウェーが0・43、デンマーク0・42、フィンランド0・39など、わが国とさほど差がない。これらの国々の所得再配分政策がいかに有効に機能しているかを示すものといえよう。
こうしたシステムは、デンマーク、フィンランド、ノルウェーなど他の北欧諸国でもほぽ同様で、程度の差こそあれ、ほぽ共通のシステムになっている。
スウェーデンの地方自治体は、わが国の都道府県にあたる21のランスティングと市町村にあたる290のコミューンに分かれているが、これらの自治体は、地方所得税(住民税)という独自財源を持つと同時に、社会保障の執行権限を持っている。すなわち、ランスティングは、医療サービスの提供に責任を持つ一方、コミューンは、保育、教育、介護(高齢者ケア)、福祉に責任を持つ主体と位置づけられており、前者は歳入全体の79%、後者は68%が地方所得税によって財源調達している。
地方所得税率は、ランスティング税、コミューン税のそれぞれがあるが、両者合わせて、28・89%~34・9%(平均31%)と自治体によって異なっている。このことは、こうした社会保障サービスの水準自体も自治体によって異なっているということを意味している。全国画一的な社会保障サービスが必須と位置づけている日本とは考え方が大きく異なるといえよう。
先に指摘した通り、こうした仕組みは、国民(住民)にとって受益と負担の関係が見えやすいというメリットを持つ。住民はサービス水準に不満があれば、税率引き上げを了解しなければならず、税率が高いという不満があれば、サービスカットを容認しなければならないためである。
さらに、非常に驚かされるのは、地方所得税の課税ベースがきわめて広いことだ。課税対象は、サラリーマンの給与所得や自営業の所得のみならず、年金給付や失業保険、育児休業保険などにも課税され、しかも所得控除が基本的に基礎控除のみであることから、実に国民の96%が課税されている。
スウェーデンでは自立意識の強い国民性と社会的連帯という、一見矛盾する価値観が同時に重んじられている。自分のことは自分で、地域のことは地域で考え実行していくことが当然であり、親も高齢になって介護が必要になっても子どもには頼らない。このことは、子どもとの老後の同居率がわずか4%にすぎないことからも明らかである。しかも、社会保障の財源は、生活保護者を除くほとんどの地域住民が連帯して負担する。これもスウェーデン流の考え方である。
社会保障の財源としての消費税率引き上げに歴代政権が四苦八苦してきた日本では、重要政策を国政レベルで決定する力はすでに失われているのかもしれない。スウェーデンのように本気で地方分権を進めなければ、改革の先送りという忌まわしい歴史を繰り返すだけである。
北欧諸国の所得課税のもうひとつの特徴は、社会保障の財源の大部分が地方所得税(日本の住民税に相当)で賄われていることである。逆に、国税の所得税の最高税率を見ると、フィンランドの30%が最も高く、次いでスウェーデン25%、ノルウェー24・55%、デンマーク18・67%と全般的にかなり低い水準にある。
他方で、住民税のほうは、個別自治体により税率が異なるのが大きな特徴だ。とりわけスウェーデン、デンマークでは、税率水準が20%~30%台と、所得税と比べて高いことが指摘できる。
その理由は何か。これらの国々では、地方分権が進んでおり、国によって多少の差異はあるものの、年金を除く医療・介護・福祉など社会保障の実施主体は地方自治体で、国と地方の役割分担が明確である。また、地方が社会保障を賄う自主財源を住民税というかたちで住民から徴収しているという点で共通している。このため、地方が行う社会保障の財源を地方が徴収していることから、国民(住民)にとっては、「受益と負担の関係」がきわめてわかりやすい制度だといえよう。住民はサービスの価格に不満があれは税率引き下げを求めることができるし、逆に、サービスの質に不満があれば、税率の引き上げを前提にサービス改善を要求できるからだ。
こうした方式は、日本と大きく異なる点であり、日本では国から地方へ交付金・補助金というかたちで財政補填がなされているため、税の使われ方に納得感が乏しいだけでなく、無駄なものに使われているという国民意識が強い。
このところ格差が拡大している日本では、公平な所得再配分を求める声が強まっているが、北欧諸国の高福祉・高負担型の税・財政システムは、高い所得再配分機能を有しており、公平な所得分配を実現している。この状況を所得格差を表すジニ係数でみると、デンマークとスウェーデンが0・23と世界一所得格差が小さく、ノルウェーが0・28となっており、わが国(0・32)やOECD平均(0・31)を大きく下回っている。
なお、税や社会保障給付による再分配前のジニ係数は、日本が0・44に対し、スウェーデン、ノルウェーが0・43、デンマーク0・42、フィンランド0・39など、わが国とさほど差がない。これらの国々の所得再配分政策がいかに有効に機能しているかを示すものといえよう。
こうしたシステムは、デンマーク、フィンランド、ノルウェーなど他の北欧諸国でもほぽ同様で、程度の差こそあれ、ほぽ共通のシステムになっている。
スウェーデンの地方自治体は、わが国の都道府県にあたる21のランスティングと市町村にあたる290のコミューンに分かれているが、これらの自治体は、地方所得税(住民税)という独自財源を持つと同時に、社会保障の執行権限を持っている。すなわち、ランスティングは、医療サービスの提供に責任を持つ一方、コミューンは、保育、教育、介護(高齢者ケア)、福祉に責任を持つ主体と位置づけられており、前者は歳入全体の79%、後者は68%が地方所得税によって財源調達している。
地方所得税率は、ランスティング税、コミューン税のそれぞれがあるが、両者合わせて、28・89%~34・9%(平均31%)と自治体によって異なっている。このことは、こうした社会保障サービスの水準自体も自治体によって異なっているということを意味している。全国画一的な社会保障サービスが必須と位置づけている日本とは考え方が大きく異なるといえよう。
先に指摘した通り、こうした仕組みは、国民(住民)にとって受益と負担の関係が見えやすいというメリットを持つ。住民はサービス水準に不満があれば、税率引き上げを了解しなければならず、税率が高いという不満があれば、サービスカットを容認しなければならないためである。
さらに、非常に驚かされるのは、地方所得税の課税ベースがきわめて広いことだ。課税対象は、サラリーマンの給与所得や自営業の所得のみならず、年金給付や失業保険、育児休業保険などにも課税され、しかも所得控除が基本的に基礎控除のみであることから、実に国民の96%が課税されている。
スウェーデンでは自立意識の強い国民性と社会的連帯という、一見矛盾する価値観が同時に重んじられている。自分のことは自分で、地域のことは地域で考え実行していくことが当然であり、親も高齢になって介護が必要になっても子どもには頼らない。このことは、子どもとの老後の同居率がわずか4%にすぎないことからも明らかである。しかも、社会保障の財源は、生活保護者を除くほとんどの地域住民が連帯して負担する。これもスウェーデン流の考え方である。
社会保障の財源としての消費税率引き上げに歴代政権が四苦八苦してきた日本では、重要政策を国政レベルで決定する力はすでに失われているのかもしれない。スウェーデンのように本気で地方分権を進めなければ、改革の先送りという忌まわしい歴史を繰り返すだけである。
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