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膨大な資料という〝カオス〟状態を楽しむ

『職業、ブックライター。』より 目次を作る

五〇~六〇の要素をしっかり出せるようにしておくためにも、「素材」の準備は重要になります。

ブックライターとして他の著者の本を作るときには、素材は取材ですべて揃っているようにしなければなりません。そのためにも、前章で書いた「取材コンテ」が重要になります。取材コンテは、素材がすべて揃っているか、もれなくするためのツールでもあるのです。

では、そこからどのようにして五〇の構成要素をピックアップしていくか。まずは、素材をしっかりと整理し、どんな構成要素がありうるか、チェックしておく。これが、きわめて重要な作業になります。このプロセスは絶対に手抜きしてはいけません。ここで手抜きをしてしまうと、書くところで困ってしまうことになるのです。

これは、普通の出版社ならほとんどどこでもやってくれると思いますが、取材の内容は、すべて専門のテープ起こし業者さんによって、テキスト化してもらっています。取材時の質問と答えが、会話口調の文章として出力されてくるのです。

本のベースになる素材はこれだけではありません。著者の雑誌やネットのインタビュー、さらには書籍があれば、それも重要な資料です。ただ、私の場合は、素材として書籍の内容はできるだけ使わないようにします。取材の前に読み込む資料としては重宝しますが、実際の書籍の制作では、過去の本をあまり参考にしてしまうと、その本と似てしまいかねないからです。

ただ、いずれにしても、膨大な資料を目の前にすることになりますので、その覚悟は必要です。〝カオス〟の状態に負けない精神力と、むしろーカオス〃を楽しんでやろうという意気込みが必要だと私は思っています。

もともと〝カオス〟状態から何かを整理していくことは、個人的にはまったく嫌いではなかったことに後になって気づきました。

学生時代は飲食店でアルバイトをしていましたが、パニックになるほど忙しくなると、燃えてくるのです。

どうすれば最も効率よく注文がさばけるか。オーダー品を出していけるか。瞬時に考えて判断していく。大量の洗い物も、どれからどんなふうに洗えば、最も効率よくすばやく洗えるか考える。そういうことが、とても好きでした。

社会人になって広告を作っていた時代も、分厚いパンフレットや大量の社長インタビューから、四〇〇文字で三つのブロックの広告コピーに仕上げていく、といった仕事は大好きでした。

一万文字、二万文字くらいの情報の中から、必要な情報だけをチョイスして、四〇〇字で三ブロック、つまりコー○○字ほどの文章にまとめていく。そんな仕事を好んでいたのです。できあがったときには、なんともいえない心地よさがありました。

本作りを始めたとき、大量のテープ起こしと資料を目の前にして、「あ、そういえば、あのときに似ているな」と広告制作者時代を思い出したのでした。つまりは、あのときの仕事の拡大版なのかもしれないな、と。

もちろん、最初は私も膨大な資料にひるんでいましたし、今もひるむことがあります。読み込むだけでも大変です。

しかし、その膨大な資料を整理して、章立てを考え、構成要素を章に振り分けて目次を作ることができたときには、大きな達成感を味わえます。資料が膨大であればあるほど、この達成感も大きくなる。その意味では、〝カオス〟を整理していくことが嫌いでない人、〝カオス〟好きには、この仕事は向いていると思います。
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