政務調査費の使途に関する桑名市職員措置請求書(住民監査請求書) 2006.6.14 【請求の趣旨】 第1 状況や背景の説明 桑名市議会の会派「緑風・無所属クラブ」は、2006年1月16日に会派所属議員9名の氏名を記載した講演会のチラシ48,550枚を新聞折込にて市内に配布した。同日、チラシで予告したとおりに入場整理券を、市役所、各地区市民センター、長島・多度総合庁舎、大山田コミュニティプラザの11箇所で、希望する市民に配布した。「緑風・無所属クラブ」は、2月1日桑名市民会館にて「あの世の妻へのラブレター」と題して永六輔講演会を開催した。入場無料の講演会には983名の市民が参加し、その経費1,743,204円を政務調査費から支出した。 第2 支出の事実 出演料・交通費118万6千円、印刷・広告費42万円、会場使用料6万円人件費(入場整理券配布・駐車場警備)3万7千円など総額1,743,204円を政務調査費から支出した。 第3 支出の違法性 1. 事実の評価 (1) ①「あの世の妻へのラブレター」と題した永六輔講演会の講演内容は、良い医者を選ぶための助言などであり、市政に関する調査研究に資する研修会にはあたらない。 ②講演会チラシに所属議員全員の氏名を記載して、2006年1月16日に朝日、中日、毎日、読売の新聞に折り込み桑名市全域に48,550枚配布した。かつ、講演会の冒頭で所属議員9名が壇上に上がって挨拶をした点は、有権者に対するアピールであり、政治活動である。 ③その上、市長が同席して激励したとなると、市長が応援していることを会場にいる有権者に印象付ける効果を期待したと考えるのが社会通念である。 ④電子投票のPRを事務用品会社等の寄付行為に因って実施したが、これは単に自らの個別の政策のPRをしたに過ぎない。 以上の4点からこの講演会等の開催趣旨は、自らの会派に所属する自ら及び同僚議員を特別に宣伝もしくは応援するためであることは明白である。政治家が有権者に対して自己を表象することは、公職選挙法第201条の6第1項「ビラの頒布」「政策の普及宣伝」、「政談演説会」第201条11第1項「政策の普及宣伝」、「候補者の選挙運動のための演説」に規定する政治活動である。 (2)3月29日付けで、その事務用品会社からB4用紙(500枚)を100冊印刷用インク6本を購入し、合計金額53,235円が代金として支払われている。このことを知る市民は殆どいない。 2. 違法であること ①「桑名市議会政務調査費の交付に関する条例」(以下、「本件条例」という)第1条には、「議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、議会の会派に対し政務調査費を交付する」、第5条には「市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならない」と規定している。 この講演会は「市政に関する調査研究に資する」ものにあたらず、単に政治活動である。政務調査費は政治活動には使用できないから本件条例に適合しない違法な支出である。 ②講演会を無償で市民に提供したことは、参加者1人につき1,700円の寄附をしたことに相当する。公職選挙法199条2「公職の候補者又は公職の候補者になろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙区(選挙区がない時は選挙の行われる区域。)内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならない」に違反する寄附行為である。 ③講演会のチラシにデュプロ販売(株)提供と掲載し、一連の行事として電子投票模擬体験を実施している。ところが、機材の借り上げ料や係員の人件費など、デュプロ販売(株)への支払いは無く、無償提供されたものと推測できる。この行為は、デュプロ販売から、当事者への寄附行為にあたり、それぞれの政治団体の政治資金収支報告書に記載されるべきものであるが、記載されていないと思われる。 第4 損害 この講演会開催に関しての支出は、本件条例の定める使途基準に違反する。よって、本件支出は法令の根拠を欠く不必要な支出であって、桑名市には負担する義務がないのにこれを負担したこと、は市の損害である。その損害額は1,743,204円である。 第5 請求人が監査委員に求める措置 1. 政務調査費から支出された金1,743,204円を当該の議員らが市に返還するよう勧告すること 2. そうでないなら、当該の講演会に出席した市長及び当該の支出の決済に権限を持って関与した職員が金1,743,204円を市に弁済するよう勧告すること 以上、法第242条第1項により、事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。 2006年6月14日 三重県桑名市監査委員 各位